2008年6月4日水曜日

「ウイルス性慢性肝炎」について

ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 医師

慢性肝炎について教えてください。

日本での慢性肝炎のほとんどは、B型、C型肝炎ウイルスの感染によるもので、ウイルスによって肝臓の炎症が持続する限り病状が進行し、肝がんを発生する可能性が高くなります。ウイルスによると思われる肝がんの死亡者は年間3万人を超え、C型肝炎ウイルスによる薬害肝炎問題もあり、社会的にも注目されています。
現在、日本のB型肝炎ウイルスのキャリアーは約150万人と推定され、多くは非活動性の無症候性で、肝硬変や肝がんに至るのは1割前後です。C型肝炎ウイルスキャリアーは約200万人で、半数は安定した慢性肝炎ですが、活動性の慢性肝炎の場合は20~30年で肝硬変、肝がんに進行しやすいとされています。
B型肝炎は出生時、幼少期の母子感染がキャリアー化の主な原因と考えられ、日本では1986年以降、陽性の母親から生まれる新生児にワクチン接種が行われ、新たに発生するキャリアーを阻止しています。C型肝炎は血液を介して感染し、そのうち約3割は急性の肝炎で治癒しますが、約7割がキャリアーとなり慢性肝炎に移行します。汚染された血液や血液製剤が感染源とされており、現在は発生率が著しく低下しています。

ウイルス性慢性肝炎の治療法について教えてください。

B型慢性肝炎の治療は、近年飛躍的に進歩し、従来のインターフェロン療法に加え、3種類の経口核酸アナログ製剤の登場によりウイルス量の減少、肝機能の正常化、肝臓組織の改善が得られるなど、慢性肝炎の治療を改善しつつあります。C型慢性肝炎の治療は、一回の投与で長時間作用が持続するペグインターフェロンと経口抗ウイルス製剤の併用療法が現在の主流です。いずれの治療も、年齢、肝機能や血小板値、ウイルス量・遺伝子型、副作用などを考慮し個々の患者さんに合った治療法が選択されます。
2004年4月から始まった40歳以上の国民を対象とする肝炎ウイルスの検診により、新たな感染者が発見されていますが、厚生労働省の調査では現在3割程度の人しか受診していません。まだ受診していない人は、ぜひ一度肝炎検診を受けることをお勧めします。

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