2004年7月14日水曜日

「正常眼圧緑内障」について

ゲスト/札幌エルプラザ阿部眼科 阿部 法夫 医師

正常眼圧緑内障についておしえてください。

 最近は、人間ドックや各種健診で眼底写真を撮る病院や検査機関が増えてきました。検診の結果、「緑内障疑い」とあって、驚かれる方も多いのではないかと思います。昔から、緑内障は「眼圧が高く失明する」眼病として恐れられていますから、無理もありません。しかし、最近は病気に対する概念の変化から、眼圧が高い低いに関係なく「視神経の束が眼球に向かう所(視神経乳頭部)の病気」を緑内障としてとらえるようになりました。したがって緑内障の診断は、眼圧、視神経乳頭、隅角(角膜や水晶体を透明に保つ房水の排出口)、視野検査の結果から、総合して診断することになります。眼圧が正常範囲でも視神経乳頭の陥凹(かんおう)が進み視野欠損(部分的に見えない場所がある状態)を生じたものを正常眼圧緑内障と呼んでいます。
 日本緑内障学会によると、40歳以上の全緑内障患者の有病率は5.78%で、そのうち正常眼圧緑内障は3.60%で半数以上を占めることが判明しました(多治見市疫学調査の報告)。最近道内の3地区で、検診時の眼底写真を見る機会がありましたが、地区・年齢によって多少異なりますが、400名中約3~6%に緑内障疑いの症状がみられ、明らかに眼圧の高い人は数名でした。その他は正常範囲以内で、日本緑内障学会の報告と同様の結果でした。日本人の緑内障の約6割が正常眼圧緑内障であることは、多治見市の調査によっても明らかにされています。

原因や治療について教えてください。

 原因は視神経乳頭部の循環障害や構造の弱さなどが考えられています。早期の視野欠損は、患者本人には無自覚なことが多く、いったんできた視野欠損は容易には回復しません。したがって、早期発見、早期治療が重要となります。さまざまな眼圧下降薬や、乳頭部の循環改善薬がありますから、早期発見すれば大事には至りません。最近は緑内障に精通した眼科専門医も多いので、検診時だけではなく、老眼鏡やコンタクトレンズ作成時などを機会に、検査を受けて、早期発見、早期治療のきっかけとすることをお勧めします。

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