2020年3月18日水曜日

薬による胃腸障害

ゲスト/福住内科クリニック 佐藤 康裕 院長

薬による胃痛について教えてください。
 「痛み止めで、胃が荒れる」という副作用はよく知られていると思います。原因になる薬は、かぜ薬に含まれることもあり、頭痛や腰痛にも一般に使われる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)というタイプの薬です。成分名はイブプロフェン、ロキソプロフェンなどです。脳梗塞や心筋梗塞を起こした人が、血栓予防のために処方されるアスピリンもNSAIDsの一つです。
 これらの薬は胃の粘液を減らしたり、粘膜の血流や防御力を低下させる作用があるため、粘膜障害を起こしたり、悪化すると胃潰瘍を生じたりするリスクがあります。わが国では胃潰瘍の最も多い原因はピロリ菌ですが、その次に多いのがNSAIDsです。NSAIDsによる潰瘍は痛みがあまりない場合もあり、突然の出血によって発症することもあります。患者さん側のリスクになる因子は、高齢者、潰瘍の既往、抗血栓薬併用、ピロリ菌感染者などです。
 一方、アセトアミノフェンという薬はNSAIDsと同じくらいよく使われる、異なるタイプの痛み止めですが、副作用として胃腸障害がほとんどないので、リスクのある患者さんにはこちらをお勧めするケースが多いです。慢性の痛みに対しては、痛み止めの種類を検討したり胃薬を併用したりする必要があるので、自己判断で市販薬を継続せずに医師に相談しましょう。

薬による下痢について教えてください。
 NSAIDsは胃だけではなく、小腸や大腸の粘膜障害を引き起こすリスクがあることも分かっています。長期服用で下痢だけではなく、下血や貧血などをきたすこともあります。
 下痢の副作用が最も多いのは抗生物質です。抗生物質により正常な腸内細菌のバランスがくずれて下痢を起こすことがあります。服用中止でおさまる軽い下痢であれば問題ありませんが、下痢の症状が長引き、発熱や腹痛などを伴い重症化する場合もあります。抗生物質に起因する腸炎の代表が「偽膜性腸炎」です。腸内細菌のバランスが崩れて、Clostridium difficile(クロストリジウム・ディフィシル)という細菌が異常増殖し、この菌の毒素によって腸炎を起こします。大腸の粘膜に偽膜と呼ばれる小さい円形の膜を多数形成することを特徴とします。これが疑われる場合には、毒素を検出するために便検査が行われ、治療にはこの細菌を除菌するための内服薬が処方されます。
 抗生物質には他にも副作用がありますし、耐性菌の問題もあるため適正使用が求められています。