2019年8月7日水曜日

COPDとオーバーラップ症候群

ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長


COPD、オーバーラップ症候群とはそれぞれどのような病気ですか。
 COPD(慢性閉塞性肺疾患)は「肺の生活習慣病」とも呼ばれます。喫煙が主な原因とされ、肺への空気の通りが慢性的に悪くなり、ゆっくりと進行していきます。せき、たん、息切れなどが主な症状ですが、かぜなどの感染症をきっかけに症状が重症化(急性増悪)することもあり注意が必要です。急激に肺機能が低下し、呼吸困難を引き起こすケースもみられます。
 一方、オーバーラップ症候群とは、COPDと気管支ぜんそくが同時に同じ患者さんで起こっている状態を指します。気管支ぜんそくを合併しないCOPDの患者さんと比較して、症状が重症化しやすく、生活の質(QOL)も低い(予後が悪い)といわれています。また、肺機能の急速な低下や高い死亡率が認められています。
 COPDは日本での推定患者数が500万人以上とされています。ぜんそくの患者さんでは、年齢とともにCOPDの合併率が上がり、中高年の方の約半数が合併しているという報告があります。また、COPDの患者さんからみると、約3割が気管支ぜんそくの要素を持っているなど、診断を受けていなくても実際はかなり多くの方がオーバーラップ症候群なのではないかと疑われています。

治療について教えてください。
 現時点でCOPDを根本的に治し、肺を元の状態に戻す治療法はありません。呼吸機能を改善し、せき、たんなどの症状を緩和し、生活の質を高めることが治療の目的となります。症状の軽重にかかわらず、治療の基本は禁煙です。喫煙を続ける限り、病気の進行を止めることはできません。そして、薬物療法により症状を改善しながら、呼吸機能の維持・増進を図っていきます。COPDでは長時間作用型β2刺激薬(LABA)、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)などの気管支拡張薬が用いられます。
 一方、気管支ぜんそくとCOPDが合併しているオーバーラップ症候群では、ぜんそくに用いる吸入ステロイド薬(ICS)とCOPDに使うLABA、LAMAの3剤によるトリプル治療が基本となります。従来、ICSとLABAの配合薬とLAMAの1日2回の吸入が必要でしたが、近年、3剤の配合薬が登場し、1日1回の吸入で済むようになり、多くの患者さんにとって治療の継続と症状のコントロールがしやすくなりました。

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