2018年5月23日水曜日

呼気一酸化窒素濃度の測定

ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 院長

呼気中の一酸化窒素濃度からどのようなことが分かりますか。
 1990年代以降の研究により、ぜんそくなどの患者さんは呼気中の一酸化窒素(NO)濃度が高くなることが明らかになりました。一般に呼気NOは喀痰(かくたん)中の好酸球数と相関することから、好酸球性の気道炎症の程度を測定できるバイオマーカーとなっています。実際の測定方法は、機械に一定のスピードで息を吹き込むとNO値が表示されます。値が高いほどアレルギー性の炎症が強いことを表します。
 長引く咳(せき)での受診時、単にかぜに伴う咳なのか、咳ぜんそくの可能性が高いかどうかの診断に役立ちます。咳ぜんそくはぜんそくの前段階の状態であり、アレルギー性の気道炎症が起きています。咳ぜんそくが疑われれば、吸入ステロイド薬による治療が開始されます。肺気腫や慢性気管支炎といった慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)ではNO値は上昇しない傾向があるので、咳ぜんそくやぜんそくとの鑑別にも役立ちます。また、ぜんそくで治療中の患者さんにおいては、現在の治療薬でコントロールできているかどうかの目安になります。

呼気一酸化窒素濃度の測定検査について教えてください。
 測定は一度だけではなく、時々行って値の経過を見ていくことが大切です。例えば、吸入ステロイド薬を続けて、ぜんそくのコントロールがついてくると、NO値は下がってきます。一般的には、正常値は25ppb(1ppbは10億分の1)以下となっています。
 咳ぜんそくでは25~50ppbのことが多く、50 ppb以上ではぜんそくが強く疑われます。しかし、この検査も万能ではなく、咳ぜんそくやぜんそくでも高値にならないことがあります。反対に、ぜんそくでなくても高値になることもあります。例えば、アレルギー性鼻炎やアトピーを合併していると高値になります。また、レタスやホウレンソウなどアルギニンを多く含む食事を取ると高くなります。一方で、習慣的な喫煙や運動後では低めになります。カフェイン、アルコールの摂取により低下することもあります。このように測定時には影響を及ぼす因子を考慮する必要がありますが、息を吹き込むだけの苦痛のない検査で、咳ぜんそくなどのアレルギー性の炎症の程度を簡単に把握できるので、非常に有用な検査といえます。