2017年4月26日水曜日

矯正治療と部活動との両立


ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長

子どもの矯正治療は、いつ頃から始めるのがいいのですか。
 子どもは成長過程にあるため、矯正治療を始める適切な時期があります。成長する力を利用することで、正しくかめるように骨格を誘導し、スムーズに歯並びやかみ合わせを改善できるからです。早く治療した方がいいケース、最適な時期を待った方がいいケースなど、“最適な時期”は人それぞれ違うので、永久歯が生える小学校入学時、大人の顔つきに変わる中学校入学時など、節目ごとに矯正専門医の診察を受け、歯並びやかみ合わせの点検をしてもらいたいと思います。適切な時期の治療は、使用できる矯正装置の選択肢が豊富で、一人一人に合った治療法を選べるというメリットもあります。

矯正治療と学校の部活動を両立させることは可能ですか。
 球技でボールが顔に当たったりするなどして、矯正装置がずれたり、壊れたり、矯正装置が口の中を傷つけたりしないか、スポーツでの衝撃を心配されているケースが多いです。端的にいって、ほとんどの部活動において不都合はありません。野球、サッカーなど多くのプロスポーツ選手が矯正装置を付けながらプレーしていることからも問題はないといえるでしょう。ただ、極端にボディーコンタクトの激しいスポーツ、例えば柔道やボクシングなどの格闘技では、マウスピースを装着するなど注意が必要です。
 前歯がいわゆる出っ歯の状態だと、スポーツ時の外傷リスクは高くなりますが、矯正装置を付けていたために、スポーツ中の外傷から歯を守れたというケースもあります。矯正装置があったばかりにケガがひどくなるというのはまれです。正しい歯並びでしっかりかめるようになることで、集中力や持続力、筋力や動体視力の向上につながることが、さまざまな研究で明らかになっている現在、スポーツをする上では、矯正治療を進めた方が良い場合が多いです。
 気を付けなければならないのは、実は運動系ではなく、吹奏楽部の場合です。矯正装置を付けていることで、まったく吹けなくなるということはないのですが、音に影響が出るからと矯正治療をあまりすすめない学校もあるので、事前に確認が必要です。矯正治療との両立を選択するなら、例えば、取り外しのできる矯正装置を使うなど、少しでも演奏に負担がかからないような治療方針を検討することも可能なのでご相談ください。

2017年4月19日水曜日

最新の糖尿病治療


ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長

最新の糖尿病治療薬について教えてください。
 糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけ、すい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は、理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬で、糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1c値を1.0%前後下げます。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬はHbA1c値を1.6%前後下げます。1日1回の注射が必要ですが、現在は1週間に1回で済む注射薬も出ました。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。従来まで体重を減少させる糖尿病薬がありませんでしたが、「SGLT-2阻害薬」が登場し、この薬剤は血糖を下げると同時に体重を減らします。最近の研究データによる結果では、この種の薬剤は、心血管系の心不全の出現を抑える働きと糖尿病性腎臓病を良くする働きを持ち合わせていることが判明してきています。
 一方、インスリン注射に目を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は従来まで濁った製剤でしたが、透明な製剤が登場し、10回以上振って混合しなくても済むようになりました。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療状況が良好といえる目安は、HbA1cが7.0%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が、高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は125/75mmHg以下です。自宅で測定できる血圧針を治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。以上のようなさまざまな基準値を長期間保てば、眼底出血(失明)、腎臓の悪化(透析)、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など、糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞、心筋梗塞などの予防にもつながります。

2017年4月12日水曜日

認知機能低下と運転免許更新


ゲスト/札幌宮の沢脳神経外科病院  松村 茂樹 院長

今年3月、高齢ドライバーの認知機能のチェックを厳しくする改正道路交通法が施行されましたが、改正のポイントについて教えてください。
 2017(平成29)年3月12日から新たな改正道路交通法が施行され、加齢による認知機能の低下に着目した「臨時認知機能検査制度」や「臨時高齢者講習制度」の新設が行われました。
 改正前は3年に1度の免許証更新の時だけ受けることとされていた認知機能検査でしたが、今度からは75歳以上の運転者に一定の違反行為があれば、3年を待たずに臨時認知機能検査を受けなければなりません。一定の違反行為には信号無視、通行禁止違反、合図不履行など18の基準行為が決められています。
 また、75歳以上の方が免許証の更新時の認知機能検査で“認知症のおそれがある”と判定された場合には、これまでとは異なり、違反の有無にかかわらず、医療機関で認知症かどうかの診断を受け、診断書を提出する必要があります。もしも認知症と判断された場合には、運転免許取り消しなどの対象になります。警察庁の試算では、改正法施行後は15年の10倍以上の年間約5万人が医師の診断を受け、約1万5千人(15年は1472人)が免許取り消しや停止になる見通しです。

今後の課題について教えてください。
 各地で高齢者の重大事故が相次ぎ、危険防止の対策が急スピードで進められています。今回の道交法改正で認知機能のチェックを厳格化したように、個人の運転能力を知ることは、個人の安全のみならず社会全体の交通安全の確保のためにも重要なことです。同時に、運転免許の自主返納を促す取り組みも進んでいます。
 ただ、道内の札幌圏以外など公共交通網に乏しい地域では、マイカーが「生活の足」という現実があり、地域での高齢者の生活に自動車が欠かせない場合もあります。高齢化が進む中、代替手段の確保が大きな課題といえるでしょう。また、孫の送り迎えなど運転を生きがいや楽しみ、自立の象徴と考えている高齢者も多く、免許がなくなることが辛い決断になることを周囲が理解し、精神的にケアすることも大切です。軽度の認知機能低下の場合は運転能力に問題がない方もいますので、認知症であればすぐに免許取り消しということに関しても問題点を指摘する意見があります。
 将来的には運転能力を評価する運転シミュレーターや、路上運転の客観的な評価方法の開発なども必要と思われます。

2017年4月5日水曜日

適応障害


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 本谷 方克 医師

適応障害とはどのような病気ですか。
 適応障害は、仕事や人間関係がうまくいかないなどのストレスによって、
落ち込んだり、不安感やイライラが続いたりするなど、うつ病とまではいきませんがそれに似たような症状を起こします。頭が痛い、眠れない、全身の倦怠感などの身体症状が出たりする場合もあります。適応障害は、あらゆる精神疾患の初期症状のような側面があり、誰もがかかりうる身近な心の不調です。近年、適応障害が急増している背景には、超ストレス社会の到来に加え、うつ病など精神疾患に対する社会の認知が進み、精神科・心療内科の敷居が低くなったことも挙げられます。
 この適応障害、言葉の印象からは、生活や環境の変化にうまく適応できないこと、もしくは適応力が低いことを想像しがちですが、あくまで特定の環境や状況などがその人にとって耐え難いストレスに感じられているということです。その結果、気分や行動に症状が現れるのです。つまり、適応障害はストレスによる心の正常な反応の延長線上にあると言えます。
 診断のポイントは、症状を引き起こしているストレスがはっきりとしていることで、本人も自覚している場合が多いです。適応障害の特徴として、ストレスの原因となっているものから離れると、症状が改善するケースが多くみられます。ただ、適応障害による抑うつ状態であっても、放置しているとうつ病などに発展する可能性もあり、適応障害とうつ病の関係は複雑です。

治療について教えてください。
 うつ病では薬物療法、精神療法などの治療が中心となりますが、適応障害では、原因となっているストレスから離れること、ストレスを減らすことが何よりも優先されます。治療法は千差万別で一人一人違いますが、基本的にはストレスとなっている環境を変えること。つまり、ストレスとなる空間、場所、人間関係から離れる方法を考えていきます。ストレスが一過性のものであれば自然に軽快します。新しい状況には、必ず新しいストレスがあります。社会生活を送っていく上でも、自分のストレスの感じ方に気づき、考え方を変えるなどストレスとうまく付き合っていく方法を身に付けることが大切です。補助療法として、抗不安薬や睡眠薬など少量の薬物療法を併用するケースもあります。