2015年8月26日水曜日

夜間視力の低下


ゲスト/札幌エルプラザ 阿部眼科 阿部 法夫 院長

夜間視力の低下について教えてください。
 視力は一般に明るいところで(明順応下)測定します。しかし、明るいところではよく見えるのに、暗いところではものが見えにくくなると訴える患者さんがいらっしゃいます。このような夜間視力の低下の原因は、夜盲症、明暗順応の低下(回復時間の遅延)、何らかの眼疾患に伴う(続発性)ものなどが考えられます。
 網膜の視細胞には、日中に働く“赤”から“緑”に感度が高い細胞と、夜間に働く“青”から“紫”に感度が高い細胞の2種類があります。何らかの原因で後者の視細胞が異常を起こしたものが夜盲症です。夜盲症の原因疾患で代表的なのが網膜色素変性症。いわゆる「鳥目」と呼ばれる病気です。網膜に異常が起きて、20歳ぐらいから視野が狭まり夜盲を自覚するようになります。
 夜盲症には先天性と後天性のものがあり、さらに先天性のものは、加齢とともに悪化する進行性と、幼児期から夜盲の症状があっても進行せず、明るいところでの視力や視野は正常である非進行性に分けられます。先天性のものは、はっきりした原因は不明ですが、遺伝が関係すると考えられています。
 栄養状態がよくなかった昔は、栄養失調に伴うビタミンAの欠乏による夜盲もよくみられました。近年は、肺がんと夜盲症の関連を示唆する報告も出ています。

明暗順応の低下と、他の病気の結果として起こる「続発性」の場合について教えてください。
 明るいところから暗いところに行くとものが見えづらくなりますが、しばらくすると暗さに網膜が順応し、少しずつ見えるようになってきます。またドライバーの方であれば、夜間に対向車のライトを直接目に受けた際、視力を一瞬失ってしまった経験があるでしょう。特に高齢者は、急に暗くなったり明るくなったりした時に、目が慣れる度合い、つまり明暗順応力が低下しているので注意が必要です。
 眼疾患に伴う続発性のものとして、白内障や緑内障では青色光の感度の低下が報告されています。昼間は十分な視力を確保できていても、夕暮れや夜間の視力は自分が思っている以上に低下している場合もあります。
 いずれにしてもどのタイプの夜間視力の低下であるのかを判定するため、専門医を受診し、暗順応検査や視野検査、眼底検査などを受けていただくことをお勧めします。

2015年8月19日水曜日

赤ちゃんの口腔ケア


ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

赤ちゃんの口腔(こうくう)ケアについて教えてください。
 乳歯は生後6〜8カ月頃に下の前歯から生えてくることが多いようです。個人差はありますが、3歳までに乳歯20本が生えそろいます。赤ちゃんの口腔ケアは、歯を磨くという行為に慣れてもらうことが一番の目的なので、スキンシップの一環として、乳歯が生える前から始めましょう。
 歯が生えていないうちは、清潔な指で赤ちゃんの歯茎を触ってあげることで、口の中に触れられることに慣らしていきます。できるだけ目を見つめて赤ちゃんを安心させてあげましょう。
 下の前歯のケアは、唾液の自浄作用で汚れが付きにくいので、水で湿らせたガーゼなどで拭いてあげる程度で十分です。慣れてきたらブラシ部分の小さい乳児専用のものでやさしく磨きましょう。上の前歯の間や歯茎との境、スプーンのようにくぼんだ歯の裏側は、虫歯になりやすい部位なので注意して磨いてください。唇と歯茎をつなぐ筋(上唇小帯)に歯ブラシがあたると、赤ちゃんは嫌がることが多いので、筋を指でよけて歯ブラシを歯と歯の間にあてるようにしましょう。複雑で細かい溝がある奥歯も、汚れのたまりやすい部位です。溝にそって手前にかき出すようにして、汚れをしっかり取り除いてください。

赤ちゃんの歯磨きのコツを教えてください。
 赤ちゃんの歯を磨くのに強い力はいりません。また、歯磨き剤を使う必要もありません。歯ブラシの毛先で軽く、細かく磨くようにしてください。微振動でプルプルと磨くイメージが大切です。歯と歯がくっついている場合にはフロスを使った方が虫歯予防により効果的です。赤ちゃんにフロスを使うときは、片手で使えるホルダー付きのものが便利です。
 歯を磨いてくれるお母さんやお父さんの表情など、赤ちゃんはとても敏感です。一日のうち機嫌のよいときに始め、赤ちゃんのお気に入りの音楽をかけるなど、歯磨きが楽しい時間であると演出することも大切です。また、歯磨きの後はたくさん褒めてあげることも忘れないでください。
 赤ちゃんの歯が生えてきたら、かかりつけの歯科医院を持ち、虫歯ができやすい部位や効率的な歯磨き方法を教えてもらいましょう。フッ素塗布など虫歯になりにくくするための予防処置をしてもらうこともお勧めします。

2015年8月12日水曜日

うつ病のリハビリテーション


ゲスト/医療法人社団五稜会病院 佐々木 竜二 診療部長

うつ病予防や復職支援など職場のメンタルヘルス対策について教えてください。
 職場のストレスや過労でうつ病などを発症する人が増える中、精神科医が中心となり企業や官公庁などのメンタルヘルスを支援する取り組みが注目されています。ここでは、うつ病のリハビリテーションのうち、産業医学でキーワードとなる①職場リハビリ ②EAP ③リワークについて説明します。
 「職場リハビリ」は、長期療養した職員が復帰する際、短時間勤務から始める“試し出勤”を制度化したもので、勤務時間や職務の負担の掛け方など、一人一人に応じたプログラムを作り、復帰を支えるものです。ただ、休職中の出勤であったり、企業内のリハビリ実施部門に専門家がいない場合、症状悪化の危険性もはらんでいることなどから、制度自体をアウトソーシング化する動きもみられます。
 「EAP」は従業員援助プログラムと呼ばれ、米国で生まれた職場のメンタルヘルスサービスです。企業など事業場を対象とし、職員のストレス診断やカウンセリング、休職中の職員向けの復職リハビリなど、メンタルヘルス対策をEAP会社が代行するものです。そのほか、医療機関の紹介や管理職研修などを通じ、働きやすい職場づくりへの助言も行います。
 「リワーク」は、個人を対象とする職場復帰に特化したリハビリや集団心理療法、精神科デイケアの一種です。病院や診療所などで会社での仕事やコミュニケーションの訓練などを通し、心と体を徐々に仕事に慣らしていきます。グループで行われるプログラムが多く、同じ体験をした同士が話し合うことで共感や連帯が生まれ、自分を見つめ直すきっかけにもなります。

メンタルヘルス対策の今後の課題について教えてください。
 働く人たちの心理的な負担の程度を確かめる「ストレスチェック制度」が、従業員50人以上の事業所を対象に、2015年12月から義務付けられます。これは、定期的な検査でストレスの高い人に面接指導を受けるように勧奨したり、事業者に全体のストレス結果を提供することを目的にしています。検査の方法や面接後の対応のあり方など、検討すべき課題もたくさんありますが、画期的な制度といえます。全てを社内の人員体制で行うのか、外部の人材や組織との連携で行うのか、可能な部分全てを外部の支援機関に委託して行うのかという判断など、導入準備や体制づくりを計画的・組織的に進めていく必要があるでしょう。ストレスチェック制度の導入を、ぜひ職場のメンタルヘルスを見直す機会として捉え、働きがいのある職場づくりに活用してもらいたいと思います。
 道内でもEAP会社の設立や、リワークへの取り組みが広がり、一定の成果を挙げていますが、まだ始まったばかりで本格的な普及はこれからです。働く人の休職、再休職を防ぐことや職場復帰を支援すること、心の健康を守ることは、企業活動にとって重要だということを、より多くの企業や人に意識してほしいです。

2015年8月5日水曜日

甲状腺の病気


ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 院長

甲状腺の病気について教えてください。
 甲状腺は、首の前面、喉仏の下にあるチョウのような形の臓器です。甲状腺の最も重要な働きは、海藻などの食べ物に含まれるヨードを原料に、甲状腺ホルモンをつくることです。甲状腺ホルモンは、人間の身体の基礎代謝の維持に必要なだけでなく、体の発育にも関係する大切なホルモンの一つで、子どもの成長促進にも欠かせません。
 甲状腺の病気は、大きくは3つのタイプに分けられます。一つは甲状腺の機能が異常に高くなり、ホルモンの分泌が過剰になる甲状腺機能亢進(こうしん)症で、よく知られたバセドー病が大半です。これとは逆に、炎症が起きて機能が低下する病気もあり、代表的なものが橋本病(慢性甲状腺炎)です。三つめは甲状腺の腫瘍で、良性と悪性(がん)のものがあります。
 甲状腺の病気の多くは自己免疫疾患で、本来はウイルスなどの異物を撃退するための免疫系に何らかの異常が生じ、自分の体の組織の一部を抗原として認識してしまうために起きます。基本的には誰にでも起こりえる病気ですが、女性に多く、また、遺伝的な要因が大きく関係するとされています。

甲状腺の病気の検査、治療について教えてください。
 甲状腺ホルモンの分泌が多ければバセドー病の疑いが強まり、逆に少なければ、橋本病による甲状腺機能低下の可能性が高まります。甲状腺ホルモンやある種の抗体などを調べる血液検査、超音波検査やエックス線検査などを組み合わせて、正確な診断が可能になります。一方、腫瘍の診断は、触診、超音波検査、細胞診が三本柱です。
 バセドー病の治療は、抗甲状腺薬の服用が中心となりますが、手術や放射性ヨードの投与による方法もあります。橋下病には、甲状腺ホルモンの補充療法を行います。甲状腺腫瘍は、悪性の場合は進行度に応じた手術を選択します。良性の場合、基本的には経過観察を行いますが、腫瘍が大きい、圧迫などの症状がある、がんが否定しきれないなどのケースでは手術を行うこともあります。
 自覚症状がないことも多く、また症状が出てもほかの病気と間違われやすい甲状腺の病気ですが、早期に診断を確定して適切な治療を受ければ、健康な人と変わらない生活が送れます。家族に甲状腺の病気の方がいる場合は、症状がなくても定期検診をお勧めします。