2014年8月27日水曜日

足のしびれ


ゲスト/札幌宮の沢脳神経外科病院 村上 友宏 医師

足のしびれの原因にはどのようなものがありますか。
 足のしびれの症状は実にさまざまです。足と床の間に何か一枚あるような、あるいは靴を履いていても砂利の上を歩いているような感覚、また、ジンジンやピリピリとしたしびれ感、足の裏から足指先にかけての痛み、冷え、火照りを訴える人もいます。
 足にしびれや痛みなどの知覚障害が出る病気はいくつか考えられます。例えば、背骨には脊柱管と呼ばれる神経の通路があります。腰の脊柱管が何らかの原因で狭くなったものが腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症で、神経が圧迫されて足のしびれや冷えが起きます。足根(そくこん)管症候群は、内くるぶしとかかとの間にある足根管という狭いトンネルで、神経が圧迫されることで起きる病気です。かかとを除く足の裏全体のしびれや痛みが症状で、入浴したり布団に入ると痛みが増強するのが特徴です。また、眠りに入る時、主にふくらはぎの内側に虫がはうような不快感を覚え、足を動かさずにはいられないというむずむず脚症候群があります。不眠の原因になるためQOL(生活の質)を著しく低下させます。
 このほかには、糖尿病による末梢(まっしょう)神経障害、足の血管に動脈硬化が起こる閉塞性動脈硬化症の可能性も考えられます。 頸椎(けいつい)で神経の圧迫がある場合にも足のしびれや感覚が鈍くなるといった症状が出ることがあり注意が必要です。

足のしびれの検査、診断について教えてください。
 しびれは神経がどこかで圧迫されていたり、神経自体が傷ついたり、血液の流れが滞っていたりするときなどに起こります。脳や頸椎、腰椎の神経の検査には、エックス線やコンピューター断層撮影(CT)、磁気共鳴画像装置(MRI)が有用ですが、足根管症候群などでは画像検査で異常がないことも多く、神経の伝達速度を調べる神経伝導検査を行うこともあります。また、CAVIという血管の動脈硬化検査で血液の流れを確認することもありますし、糖尿病の診断には採血が必要です。
 足のしびれの原因を突き止め、治療を正しく進めるためには、これらの検査も大切ですが、医師による診察の神経所見が決め手となります。いつから、どの場所にどんな症状があるのかを医師にしっかり伝えて的確な診断をしてもらいましょう。

2014年8月13日水曜日

機能性ディスペプシア


ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長

機能性ディスペプシアとはどのような病気ですか。
 これまでは2006年に作成された国際的な診断基準が引用されていましたが、今年4月に日本消化器病学会が作成した診療ガイドラインが発表されました。日本の実情に合った診療ができるガイドラインとなっています。
 ディスペプシアとは心窩部(しんかぶ・みぞおち)痛や胃もたれなどの心窩部を中心とした腹部症状をいいます。機能性ディスペプシア(FD)は、症状の原因となる器質的、全身性、代謝性疾患がないのにもかかわらず、慢性的にディスペプシアを呈する疾患と定義されています。
 これまでFDの患者さんは慢性胃炎として診断、治療されてきましたが、FDは症状により定義される疾患で、両者は同一のものではありません。併存することもしないこともあります。新たなガイドラインではこれらは異なる疾患であることを銘記するべきであるとしています。
 日本人の有病率は、検診受診者の11〜17%、上腹部症状を訴え病院を受診した患者の45〜53%と推定されています。FDの罹患(りかん)はQOL(生活の質)を低下させ、症状が強いとその低下は顕著になります。

機能性ディスペプシアの診断、治療について教えてください。
 まず症状の詳細を把握することが基本となります。問診が大切ですが、症状の種類、程度などを客観的に評価する方法として自己記入式の質問票を用いることもあり、治療効果の判定にも有用です。体重減少や再発性の嘔吐(おうと)、出血、嚥下(えんげ)困難、腹部腫瘤(しゅりゅう)、発熱といった器質性疾患が疑われる兆候がある場合は早めに、そうでなくても診療のいずれかの段階で内視鏡検査を行うことも欠かせません。必要に応じて内視鏡検査以外の画像検査も行います。ピロリ菌検査の実施も推奨されています。
 NSAIDs(非ステロイド性抗炎症剤=鎮痛剤)や低用量アスピリンの服用で似たような症状が出現することもあるため、可能な範囲で内服を中止し、それにより症状が軽減、あるいは消退する場合はFDから除外します。
 治療の基本は、食事など生活習慣の改善指導です。就寝前の食事や暴飲暴食、早食い、喫煙、過度の飲酒など、胃に負担をかける生活習慣を改めます。また、ストレスの解消や適度な運動も効果があります。
 内服薬では酸分泌抑制薬や消化管運動機能改善薬が用いられるほか、漢方薬や抗うつ薬、抗不安薬が処方されることもあります。4週間の内服治療を行っても症状が改善しない場合には治療法の変更を考慮します。

2014年8月6日水曜日

産後の精神疾患


ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 松山 智子 医師

産後になりやすい心の病気について教えてください。
 出産後3〜5日ごろの産褥(さんじょく)期には「マタニティー・ブルー」とも呼ばれる、感情の起伏が激しくなったり、涙もろくなったりして、眠れない時期に悩むことがあります。しかし、これは1週間ほどで自然に症状が消えるケースがほとんどで、産後の精神疾患とは異なります。
 出産後、2週間から数ヵ月以内の時期に、気分がひどく沈む、疲れやすく気力が出ない、ささいなことでイライラしたり不安になる。また、子どもの健康や将来を過度に悲観したり、満足な育児ができていないと自責的になるなどの症状が現れ、2週間以上続くようなら産後精神病といった精神疾患が疑われます。出産後の急激なホルモンバランスの変化の他、母親になったという重圧感、育児による心身疲労、職場復帰への焦りなどが引き金となりやすく、育児への手助けがない、経済的な悩みがある、相談する人がいないといった状況も、発症リスクを高めるとされています。
 核家族化が進んだ現代、特に初めての赤ちゃんの場合は、孤独や不安にさいなまれる母親も多いようです。対処法は、一人で抱え込まず、身近な人に打ち明けること。周囲の理解や支援も大切です。重症の場合は、専門医による治療が必要ですので、症状が数週間も持続したり、日常生活や育児に支障を来すようであれば、早めに受診されるほうがいいでしょう。周囲の人が気付いた場合も、受診を勧めるようにしてください。

産後の精神疾患の治療について教えてください。
 産後の精神疾患の治療は、カウンセリングや投薬が中心となります。カウンセリングでは、ご本人の悩み、状況、症状など日々の生活の中の具体的な問題を話し合い、その人なりの解決法を選択する過程を援助していきます。
 抗うつ剤などの薬物治療は、母乳で育児を行っている母親には薬の影響が気になるところです。どうしても母乳での育児を断念したくない方は、事前に担当医師に相談して、薬を使わずに治療を進めていくことも可能ですが、症状によっては授乳を中止していただき、薬物治療による病状の改善を優先させるケースもあります。
 うつ病など他の精神疾患と同様に、早期発見・早期治療が重症化や再発を防ぐ最大のポイントです。