2014年7月23日水曜日

「脳梗塞(こうそく)」について


ゲスト/コスモ脳神経外科 小林 康雄 院長

脳梗塞について教えてください。
 脳梗塞は虚血性の脳卒中で、脳の血管が血栓などによって詰まったり、動脈硬化によって血管が狭くなるなどして起こる疾患です。その背景となるのは基本的には、メタボリック症候群です。内臓脂肪が過剰になると、糖尿病や高血圧症、高脂血症といった生活習慣病を併発しやすく、動脈硬化が急速に進行します。
 脳梗塞の症状としては、半身不随、半身麻痺、しびれ、感覚の低下、手足の運動障害、意識障害、言語障害、昏睡などが挙げられます。突然起こる場合が多いのですが、場合によっては予兆となる症状があります。半身のしびれ、口のもつれなどで、このような症状が表れた場合は、迅速にかかりつけ医の指示をあおぐか、脳神経外科へ直行することをお薦めします。発症後3時間以内であれば、血栓や塞栓(そくせん)を溶かす薬を使って治療します。効果があれば、比較的後遺症が軽くすみます。投薬治療ができない場合は手術となりますが、この場合も治療までに要する時間が短いほど、後遺症を軽くすることができます。いかに迅速に治療を始めるかが、予後に大いに関係してきます。
 
脳梗塞を予防するにはどうすればいいですか。
 30代、40代で動脈硬化が始まりますから、会社などの健康診断でメタボリックシンドロームの兆候があれば、普段の生活習慣を見直しましょう。食事は塩分を控え日本食中心にし、適度な運動、禁煙、節酒を心掛ける。ストレスや寝不足などで疲労が蓄積しないように規則正しい生活を目指しましょう。
 また、健康診断で不安要素があったり、動脈硬化症の近親者がいる場合は、一度「脳ドック」を受けることをお薦めします。レントゲン検査で頭と首の健康状態を調べ、MRI(磁気共鳴画像装置)で脳の断層写真を撮り、MRA(磁気共鳴血管造影)で血管の狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)部分・脳動脈瘤(りゅう)の発見、動脈硬化の程度などを調べます。健康保険の適用外になりますが、1~2時間程度で受けられます。脳梗塞は一度発症すると命にかかわり、後遺症の影響も大きい疾患です。自分の健康・生活を守るためにも、予防を心掛けましょう。

2014年7月16日水曜日

更年期障害


ゲスト/札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 院長

更年期障害について教えてください。
 更年期とは、閉経の前後約5年間の時期を指します。多くの女性は50歳前後で閉経を迎えることから、おおむね45〜55歳を更年期と呼んでいます。年齢を重ねるにつれて卵巣の働きが低下し、女性ホルモン(エストロゲン)が欠乏することでやがて訪れるのが更年期です。45歳を過ぎて、月経不順や不正出血がみられたり、出血量が違うと感じられたら要注意です。
 女性ホルモンの欠乏は、女性の生活の質を脅かします。女性ホルモンを失いつつある体は、イライラや不安、不眠、突然の発汗、ほてり、動悸(どうき)、頭痛などさまざまな症状に悩まされます。化粧ののりの悪さ、肌にハリがないといったことが気になる女性も多いでしょう。女性ホルモンを補充することは、これらの症状を改善するだけでなく、女性の若さと美しさを取り戻すアンチエイジングとしても期待されています。
 また、更年期に入った女性は骨粗しょう症にかかりやすいとされています。高齢者の寝たきりの原因は、脳血管障害に次いで、骨粗しょう症による骨折が第2位です。骨の老化は、薬や食事・運動療法である程度予防できますから、そのフォローはとても大切です。さらに、閉経後のコレステロールの上昇により血管の老化が進み、動脈硬化や認知症などのリスクも高くなります。その他、人には言いにくい性生活の悩みや、失禁、頻尿、残尿感などの問題が出てくるケースも少なくありません。

更年期を過ぎると安心なのですか。
 江戸時代(19世紀)の日本女性の平均寿命は、なんと36歳前後でした。大正時代でも43.2歳と今のほとんど半分ぐらいです。現在、日本女性の平均寿命は80歳を超えて長生きするようになり、更年期以降の人生も長くなっています。
 この長くなった人生の時間を「老年期」と呼ぶことがありますが、更年期の症状がその後の老年期の病気につながってしまうなど、更年期を過ぎても安心とはいえないのが女性の一生です。しかし、この老年期をセカンドライフと考え、前向きに心豊かに、健康的に過ごしてもらいたいと思います。女性のライフステージそれぞれの場面で問題に行き当たったとき、婦人科医は女性の心と体をよく知る専門家です。ぜひ、かかりつけ医を見つけてご相談ください。

2014年7月9日水曜日

妊娠中の口腔ケア


ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

妊娠すると、口の中ではどんな症状が多く出るのですか。
 「一子を生むと、一歯を失う」ということわざがあります。これは「妊娠、出産がきっかけで歯が悪くなってしまう」ということを意味するものです。妊娠するとつわりで歯磨きができなくなったり、食生活の規則性が失われ、間食や偏食が多くなりがちです。ホルモンの変調などで唾液の分泌量が減って、口腔内の自浄作用が低下し、また、唾液のPH値も低下するため、虫歯になりやすい酸性の環境になります。治療が胎児に影響しないか不安を感じて、歯科受診をためらう女性も多いようです。こうした要因で、妊娠中は口の中が不衛生になりやすく注意が必要です。

妊娠中の口腔ケアで注意すべきポイントを教えてください。
 まずは食生活に気を使い、睡眠を十分に取るなど規則正しい生活を心掛けることです。口腔清掃はゆっくりでいいので、今までより時間をかけて行うといいでしょう。口の中に異常があれば、歯科治療に不安を抱かずにかかりつけの歯科医に、現在妊娠何週目かなどの状態を告げてよく相談することが大切です。虫歯や歯周病があるのに、出産後まで治療を待つ患者さんも多いのですが、放置するとますます悪化します。
 治療の時期としては妊娠中期が最も適切ですが、初期や後期でも治療することは可能です。歯科用の局所麻酔や、エックス線防護用エプロンを装着してのレントゲン撮影は、胎児への影響はほとんどないと考えられています。抗菌剤などの薬は安全性の高いものを必要最小限で使います。痛みを抑える消炎鎮痛剤の服用は、妊娠中はできる限り控えるのが賢明ですが、痛みを我慢することがかえってストレスとなり、母体や胎児に悪影響を及ぼしてしまうことがあるので、比較的危険性の低い消炎鎮痛剤を慎重に処方するケースもあります。消炎鎮痛剤を使わなくていいように、早めに受診して悪化させないことが重要です。
 産後、授乳中の歯科治療も心配し過ぎる必要はありません。ただし、薬剤服用の乳児への影響など考慮すべき点もありますので、必ず歯科医に授乳中であることを告げてください。
 両親の口腔環境は、驚くほどその子どもに反映されます。これは遺伝というより、両親の生活習慣が大きく関係していると考えられています。生まれてくる赤ちゃんのためにも、妊娠中から口腔ケアをしっかり行いましょう。

2014年7月2日水曜日

ストレス社会を生き抜くために


ゲスト/医療法人社団五稜会病院 千丈 雅徳 院長

精神科の治療とはどのようなものなのですか。
 うつ病(気分障害)、パニック障害、アルコール依存症、社会的ひきこもり、統合失調症など、心の病気で医療機関を訪れる人は年々増加しています。精神科の診察では、まず患者さんのお話をじっくり聞くことから始まります。本人が抱えている問題を、精神科医などの専門的な目を通しながら時間をかけて整理します。表面的に見えない患者さんの心の深い部分の思いにも耳を傾けていきます。
 他の医療分野同様、精神科医療も近年著しく進歩している中で、さまざまな治療法や新薬が開発されていますが、治療の原点となるのは、患者さんの心に寄り添って、患者さんの社会復帰を目指し、より素晴らしい人生を送れるようにサポートすることです。

治療における患者さんとの関係づくりついて教えてください。
 医師や看護師などスタッフが、患者さんの心に手を伸ばし、心を支えていくためには、安心できる関係づくりと、効果的に自己回復ができるように、次のような段階を踏むことが大切です。①アタッチメント(愛着の時期)…患者さんが安心して病院と関わっていけるように受容的・支持的・共感的に対応します。②デタッチメント(分離の時期)…患者さんが病院に依存し過ぎないように、あえて距離を置いて対応します。③コミットメント(対等な関係になる時期)…病院が患者さんにとって「心の安全地帯」となることを目標とし、患者さん自身が社会で自立できるように、半歩後ろからさりげなく援助します。
 初期の段階では、まず安心して治療が受けられるような対応を心掛けます。医師やスタッフとの関係づくりが土台となって治療への動機付けが高まります。アタッチメントによって安心感が得られると、これまでに直面できなかった問題に向かうなど、内面を深める気付きが出てくるようになります。しかし、アタッチメントばかりでは、医師やスタッフに対しての甘えや依存が出てくるので、状況を見ながらデタッチメントを意識して、少しずつ程よい距離を置くようにします。そして、社会へのコミットメントを最終目標に、相手に依存し過ぎず、対等で信頼し合える人間関係を築いていけるように関わっていきます。
 ただし、アタッチメント・デタッチメント・コミットメントは、順番に行うのではなく、常にこの三つを心掛けて対応していくことが大切です。その時その時の患者さんの様子を知って、どれを強調すればいいのかという微妙なバランス感覚が求められます。また、アタッチメント・デタッチメント・コミットメントのどれに重点を置くべきか、スタッフ一人の判断で決めないことも重要です。治療に関わるスタッフ全員で話し合い、時には患者さんにも意見をいただきながら見定めていく必要があります。医療はチームプレーなのです。