2009年10月28日水曜日

「肛門癌(がん)」について

ゲスト/札幌いしやま病院 樽見 研 医師

肛門癌について教えてください。
 肛門癌は、癌の中でも比較的まれな癌です。肛門の皮膚と消化管のつなぎ目の部分に発生しますので、癌の組織の型が多種多様なのが特徴です。発症率に男女の大きな差はなく、40歳代から増え始め、60歳以上に多く発生します。
 排便時の出血やお尻の腫れ、痛みなどが主な症状で、痔(じ)の症状とほぼ同様です。そのため、「痔になった」と自己診断して市販薬を塗ったり、内科で治療薬を出してもらうなどして、専門医を受診するのが遅くなり、発見が遅れることが多くあります。痔の薬を塗り続けていても、症状が改善されない場合は、肛門癌である疑いがあります。
 専門医にとっては、肉眼で確認しやすい位置にある癌なので、比較的容易に発見することができます。早期発見であれば、肛門癌は完治する可能性が高いので、「痔かもしれない」と思った時点で専門医を受診してほしいと思います。

肛門癌の診断と治療について教えてください。
 肛門癌の診断は、まず肛門周囲の皮膚を視診します。次に触診で肛門と直腸下部を調べます。異常があれば組織サンプルを採取して検査し、癌細胞であるか判断します。
 肛門癌であった場合、早期であれば局所切除、放射線治療、化学療法のいずれか、あるいは組み合わせで治癒が見込めます。進行してしまった場合は、手術によって人工肛門となる場合もあります。特に直腸癌に多い腺癌であれば手術が必要になる確率が高いです。皮膚に発生しやすい扁平(へんぺい)上皮癌であれば、放射線による治療で済む場合もあります。肛門癌は初期症状で痔と勘違いされ、治療が遅れる例が多く、進行してからの治療では再発を繰り返したり、肝臓や肺に転移することもあります。
 まれに痔ろうが慢性化して肛門癌になることがあります。炎症を繰り返して患部が癌化するもので、痔ろうも「たかが痔」と軽く考えないで、きちんと治療しましょう。見た目がいぼ痔や切れ痔のようで、実は肛門癌だったという例もあります。いずれにしても肛門部分の不調は自己診断せず、早めに受診することが、治療の上でも、不安を取り除く上でも一番良い選択です。

2009年10月21日水曜日

「動脈硬化症と糖尿病」について

ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 医師 

動脈硬化症について教えてください。
 本来の動脈は弾力性がありますが、動脈壁に脂肪などが沈着したり、動脈壁の筋肉に弾力の無い繊維が増えたりすると硬くなります。さらに、血管の内側に粥(じゅく)状のかたまりができ、血管が狭くなり本来の働きが悪くなります。また、かたまりを覆う繊維性皮膜が破れると、中の粥状のものが血管内に流れ出て、その後血栓となって血液の流れを止めてしまいます。心臓の血管が詰まると心筋梗塞(こうそく)、脳では脳梗塞、足では壊疽(えそ)になります。動脈硬化症は生命にかかわる重大な病気ですから、早期に診断、治療を行う必要があります。動脈硬化症による重篤な症状を避けるには、粥状の内容物を減らすことと、内容物を覆っている繊維性皮膜を丈夫にすることが大切ですが、最近では薬物療法が可能になりました。

原因と予防方法を教えてください。
 動脈硬化症は、主にメタボリック症候群の合併症として現れます。危険因子である糖尿病、高脂血症、高血圧症を治療し、管理していくことが大切です。日本には非常に多くの糖尿病患者と予備軍がいます。軽度のうちは自覚症状が無いため、「血糖値が高い」といわれても放置している人が多いのですが、糖尿病があると2~3倍も動脈硬化になりやすいといわれています。動脈硬化症から脳梗塞、心筋梗塞に至ることがあり、高血糖が原因で十数年後に腎不全、失明など重篤な症状に進行する場合もあります。
 治療は主に投薬と日常生活の中での数値管理です。過去1~2カ月間の平均血糖値を表すHbA1cの正常値は5.8%以下ですが、糖尿病患者の場合、この値を6.5%以下にしておくと血管の余病はほとんど出ません。また、糖尿病患者の約半数は高脂血症や高血圧症を合併しています。LDLコレステロール値や中性脂肪値などにも注意が必要です。適切な投薬と数値管理を行えば、日常生活に支障ありません。メタボリック症候群は遺伝的要素も強く、家族に糖尿病や高脂血症の人がいる場合は、若年層でも発症します。食事を野菜中心の和食にする、運動を心掛けるなど、日常生活の見直しも必要です。

2009年10月14日水曜日

「40歳からの眼病予防」について

ゲスト/阿部眼科 阿部法夫 医師 

40歳以降注意すべき目の病気について教えてください。 
 40歳は人生の折り返し点です。健康に恵まれ、体力に自信のある方も、遅かれ早かれ、ふと体力の衰えを感ずることはあるものです。目にも中高年になったら気を付けなければならない病気があります。まず、40歳を過ぎると20人に1人は何らかの緑内障の病態にあるといわれています。緑内障は進行すると視神経の機能を回復する治療が確立されていないため、視野欠損が軽いうちに眼圧下降のための治療が必要です。また糖尿病、高血圧症、メタボリックシンドロームなども放置すると眼底出血の原因となります。
 軽いものは点状、糸状、墨状のものが見える、飛蚊(ひぶん)症の症状が突然現れます。さらに 2〜3個以上の飛蚊症は、網膜剥離(はくり)裂孔の前兆の場合もあり、早期レーザー治療が功を奏します。50歳前後になると加齢黄班変性があります。以前は不治の疾患とされ、経過を見るしかなかったのですが、蛍光・ ICG眼底撮影やOCTなどの新しい検査法ができたこと、光線力学療法、新しい薬物療法などがあり、この分野のスペシャリストによって治療が可能になりました。いずれも最近は増加傾向にあり、予後については楽観はできません。60歳近くなると、水晶体が濁る白内障があります。手術の進歩により予後は良好です。
 そのほか遠視・老視、涙の減少によるドライアイ、逆に増える流涙症、眼瞼(がんけん)下垂なども眼性疲労の原因となります。 

早期発見、早期治療にはどのような注意が必要ですか。
 眼科学の進歩により早期発見・早期治療で進行を遅らせ、失明を防ぐことができます。職場の健康診断で眼底検査、眼圧検査を受けていればいずれも早期発見が可能な疾患です。たとえ眼検診の機会に恵まれない方でも、何らかの目の不調があるとき、眼鏡・コンタクトレンズ作成時などに眼科の検査も同時に受けると早期発見の可能性があります。
 また、不安のある方は、積極的に健診を受けましょう。物がゆがんで見える、夜、車のライトがまぶしい、夕方、以前より暗く感じる、日差しがまぶしい、目が疲れやすい、飛蚊症、閃光(せんこう)が走ることが増えたなどの症状があるときは、年齢のせいと考えず、早めの眼科受診をお薦めします。

2009年10月7日水曜日

「鼻から入れる内視鏡」について

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内雅夫 医師

鼻から入れる内視鏡について教えてください
 今まで、胃内視鏡検査をする場合、口から入れる経口内視鏡を用いるのが一般的でしたが、最近は、鼻を経由する経鼻内視鏡の使用が増えてきました。経鼻内視鏡はかなり以前からあったのですが、近年性能が格段に良くなったため、導入する医療機関が急増しています。
 弾力性のあるしなやかなチューブで、直径は5㎜台と、一般的な経口内視鏡の9㎜に比べても極めて細く、スムーズに挿入することができます。画像もクリアな高画質で、視野が広く、ごく小さな病変も発見することが可能です。
 経口内視鏡は挿入時、舌の付け根部分に触れるため、吐き気がしたり、苦しかったりで、患者側の負担が大きかったのですが、鼻から入れると吐き気をもよおすこともなく、痛みもほとんど感じません。診察中に医師と会話ができることも、医師と患者双方にとって大きなメリットになっています。
 また、鎮静剤の使用は不必要ですので、検査後ただちに車の運転なども可能です。

実際にはどのように行いますか。
 上腹部症状のある場合はもちろん、たとえ無症状でも中年期以降の方には定期的な胃カメラによる検査が望まれます。
 まず、鼻づまりがあるか、鼻血が出やすいかなど鼻の状態を確かめます。鼻の状態によっては、経鼻内視鏡ができないこともあります。前処置として、鼻腔(びくう)に局所血管収縮剤をスプレーし、鼻の通りを良くして出血をしにくくします。鼻腔に麻酔薬を注入してから、麻酔薬を塗った内視鏡と同じ太さの柔らかなチューブを挿入し、鼻腔の局所麻酔を行います。これによって、内視鏡が通過するときの痛みが抑えられます。局所麻酔なので、眠くなったりすることはありません。この後、内視鏡が鼻から挿入され、鼻腔、のど、食道、胃、十二指腸と順次観察がなされ、通常数分以内に終了します。
 がんや潰瘍(かいよう)など、食道や胃、十二指腸などの疾患は、早期発見、早期治療が完治への近道です。経口内視鏡を嫌うあまり受診が遅れて症状が進行していることもあります。鼻からの内視鏡は患者側の負担が少ないので、内視鏡検査が苦手でちゅうちょしている人は、一日も早く医師に相談してほしいと思います。