2007年5月23日水曜日

「直腸膣壁弛緩(ちつへきしかん)症と便秘」について

ゲスト/札幌いしやまクリニック  樽見 研 医師

直腸膣壁弛緩症とはどのような症状ですか?

 直腸に起因する、女性特有の排便障害です。排便時に息むと、直腸と膣の間の壁(膣壁)が、膣方向へポケット状に膨らみ、便が引っ掛かって通りが悪くなります。このポケットを直腸瘤(りゅう)といい、息めば息むほど膨らんでしまいます。症状は肛門の直前で便が止まってしまう、肛門の周りを指で圧迫(補助排便)しないと便がでない、残便感がある、習慣的に下剤を使用しているなどで、ひどい便秘の人は直腸膣壁弛緩症の疑いがあります。原因としては、生まれつき膣壁が薄い、出産による膣壁の広がりや加齢による筋肉の衰えなど、先天的、後天的、両方の原因が考えられます。排便時に息む習慣がある人も注意が必要です。症状を訴える人の多くは中高年ですが、まれに若い女性にも起こりえます。

検査法、治療法にはどのようなものがありますか。

 まずは触診で、ポケットの有無は確認できます。ポケットの大きさを測定し、排便機能の異常を客観的に診断するには、バリウムを注入し、排便動作をレントゲンで撮影する排便造影検査を行います。治療法としては、まず食事や生活習慣の改善により、便秘を解消することです。便が柔らかくなれば排便がしやすくなります。食物繊維を多く含んだ食事を規則正しく摂取し、とくに朝食後は、数分~数十分で便意が訪れることが多いので、決まった時間にトイレに入る習慣を身に付けましょう。便意を感じた時に排便をしないと、やがて便が直腸にきても便意を感じなくなる習慣性便秘につながります。毎日歩くなど日ごろから運動することも心掛けましょう。それでも改善しなければ、下剤を使用する方法もあります。
  しかし、ポケットが大きいと、通常の便秘治療では排便障害は改善されません。症状が改善されなければ、約10日間の入院で、手術によってポケットを縫い縮める方法も有効です。ポケットそのものは良性疾患ですが、習慣的に下剤に頼っていると、大腸がんなどの病気を見落とす危険もあります。便秘で悩んでいる人は、原因を知るためにも、一度専門医に相談することをお勧めします。

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