2006年6月28日水曜日

「舌側矯正」について

ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 歯科医師

目立たない矯正治療について教えてください。

 歯の矯正を考えた場合、もっとも気になる点は「矯正器具が見える」ことだと思います。歯列矯正が当たり前のアメリカでは、気にする人は少ないのですが、国民性の違いからか、日本では器具が矯正治療を躊躇(ちゅうちょ)する大きな要因の一つになっています。特に、大人になってから矯正をはじめようとしている人や、思春期を迎えた子どもたちにとっては、矯正器具を受け入れられるかどうかが大きな問題となり、せっかくの歯並びを正しく美しくする機会を失うことにもなりかねません。
 また、球技や格闘技などのスポーツをしている人は、衝撃で矯正器具によって口の中を傷つけてしまうことがあります。さらに、管楽器を演奏する人にとっては、矯正器具が邪魔になりうまく演奏できないという問題があります。
 このような場合は、歯の裏側から矯正する舌側矯正をお勧めします。舌側矯正は、正面から見た限りでは、矯正器具が目に付かず、人に知られずに矯正することが可能です。どんなスポーツも問題なくでき、慣れれば管楽器の演奏も支障なくできます。


舌側矯正の詳細について教えてください。

 舌側矯正は、日本人によって開発されたもので、見た目を気にする日本では期待された治療法でした。しかし、歯の裏側に装置があるため、人によっては、しゃべりづらい、思い通りに発音できない、ブラッシングが難しいと感じる人もいます。また、治療期間が、通常の矯正に比べて長くなることがあるというのも問題でした。
 しかし、最近になって開発された、超小型のブラケットという矯正装置を使用することによって、これらの問題は解決しました。器具を装着したときの違和感が少なく、矯正期間も通常の場合と変わりません。ブラッシングも簡単です。
 矯正器具が気になって、治療に踏み切れない人は、ぜひ矯正専門医に相談してください。矯正治療は長期にわたるので、理想の治療を受けられるよう、納得いくまで話し合える専門医を見つけることが肝心です。

2006年6月21日水曜日

「動脈硬化とリンゴ型肥満」について

ゲスト/青木内科クリニック 青木伸 医師

動脈硬化症について教えてください。

 現在日本人の死因で多いのは脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞などの動脈硬化症です。動脈硬化症になるハイリスク因子として、肥満が挙げられます。日本人は欧米人と違って極端な肥満の人は少ないですが、いわゆる小太り程度の人が多いようです。肥満には2種類あって、一つは女性に多く見られる皮下脂肪が増える下半身肥満で、洋なし型肥満と呼ばれます。このタイプの肥満は、病気とあまり関係ありません。もう一つが男性に多くみられる、内臓に脂肪が増えるリンゴ型肥満です。リンゴ型肥満は病気の発症と深い関係があります。このタイプの肥満かどうかは、おへその高さでウエスト周囲を測れば分かります。男性は85cm以上、女性は90cm以上あれば、リンゴ型肥満の疑いがあります。
 リンゴ型肥満の人が、同時に高血糖、高血圧、高脂血症を重複して伴っていると、健康な人に比べて動脈硬化性疾患の発症リスクが約30倍になるという報告もあります。この病状は代謝症候群(メタボリック症候群)として、医学界でも注目されています。

動脈硬化症の予防方法を教えてください。

 まず心掛けるのが、肥満の解消です。特にリンゴ型肥満の方はやせることが重要です。幸いリンゴ型肥満は、洋なし型肥満に比べ、食事と運動によって、やせる効果が出やすいです。食事は野菜、魚を中心に、薄味にします。ひと駅分歩くなど、日常的に体を動かすように努めることも大切です。毎日体重を量り、体重の動きをグラフで表記して貼り出し、やせる指標とすると、目標ができて効果的です。合併しやすい高血糖、高血圧、高脂血症も、やせることによって改善する症状なので、努力のしがいがあります。これらの病気には薬物治療が必要なこともありますので、まずは専門医に相談しましょう。コントロールがうまくいっているかどうかは、基準値があるので参考にするとよいでしょう。
 過去1~2カ月間の平均血糖値を表すHbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)の正常値は5.8%以下ですが、糖尿病がある場合は、HbA1cが6.5%以下、血圧は130/80mmHg以下、総コレステロールは200mg/dl以下、中性脂肪は150mg/dl以下にしておくと動脈硬化の予防になります。

2006年6月14日水曜日

「もの忘れと認知症」について

ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 医師

「もの忘れ」について教えてください。

 物や人の名前、場所を忘れることを「もの忘れ」といいます。何をしようとしていたか、どこへ行こうとしていたか、物や人の名前などが、どうしても思い出せない。人間誰しも、こういった場面は経験したことがあるのではないでしょうか。もの忘れはどの人でも、ある程度はするものです。
 しかし、頻発したり、あまりに重要なことを忘れてしまうと、自分自身でもヒヤリとすることがあります。このような症状があれば、いくつかの診断が考えられます。
(1)加齢
(2)脳梗塞(こうそく)・脳出血・くも膜下出血後
(3)慢性硬膜下血腫
(4)水頭症
(5)転移を含めた脳腫瘍
(6)うつ病
(7)甲状腺機能低下症やアルコール中毒
(8)認知症(痴呆症)です。
 このうち、年齢に伴って記憶力が低下している場合は、一時的に物事を思い出せなくても、後になって思い出す場合がほとんどです。忘れてしまったという自覚もあります。日常生活に支障が出るほどのものではありません。脳の自然な老化現象であり、「ど忘れ」とも言います。

認知症とは異なるのですね。

 認知症によるもの忘れは、最近の出来事をすっかり忘れているにもかかわらず、本人にはその自覚がありません。認知症は、年寄りの病気と思われがちですが、高齢者以外にも起こります。今、映画や書籍などで話題になっている若年認知症は、18歳から64歳までの幅広い年齢層に発症します。日本では全国に約3万人の若年認知症患者がいるといわれています。働き盛りでの発症は、本人にとっても、家族にとっても、精神的、身体的、経済的負担になります。
 人の名前や物の置き場所、家や道順を忘れるなど、 もの忘れが突然ひどくなったり、進行するようなら、早めに受診してください。うつ病と混同されたり、加齢や多忙、環境のせいなどと放置していると症状が進行します。「おかしいな」と感じたら、本人はもちろん、周囲の人も受診を勧めてください。治療が早ければ、完治は無理でも、進行を遅らせることはできます。初期であるほど有効です。

2006年6月7日水曜日

「血尿」について

ゲスト/元町泌尿器科 西村 昌宏 医師

血尿について教えてください。

 血尿が出ても、痛みや発熱が伴わない場合、そのままにしている人も多いのではないでしょうか。血尿の原因として、膀胱(ぼうこう)炎や尿路結石などが考えられますが、これらは排尿時の痛みや、背中、脇腹に激痛を伴うので、容易に発見されます。急性膀胱炎は大腸菌などの細菌による炎症によって発症します。抗生物質などで治療すれば1週間ほどで治癒します。尿路結石は、尿中のカルシウム、マグネシウム、尿酸などが腎臓で結石となり、尿管や膀胱などに詰まって激しい痛みを起こす病気です。尿が濁ったり、血尿になったりします。利尿剤などで結石を排出させますが、結石が大きいなどで自然排出が困難な場合は、手術が必要になります。体の外から衝撃波を当てて砕石する「ESWL(体外衝撃波結石砕石術)」や、細い内視鏡を尿道、膀胱を通して尿管内に入れ、結石を直接見てレーザー照射で砕く「TUL(経尿道的尿管結石砕石術)」が一般的です。
しかし、膀胱炎や尿管結石のような自覚症状なしに、突然、肉眼でも明らかな真っ赤な尿が出た場合は、膀胱がんの疑いがあります。これは無症候性血尿と呼ばれるもので、膀胱がん、腎がん、前立腺がんなどの泌尿器系がんによって起こる場合もあります。「疲れているから」などと自分で判断せず、翌日血尿が治まったとしても、必ず泌尿器科を受診してください。

血尿が出た場合、どのような検査をするのですか。

 血尿が出た場合、特に中高年は泌尿器科全般にわたる精密検査が必要です。主な検査としては、尿の細胞検査、採血、超音波検査、排せつ性尿路X線撮影、CTスキャン、膀胱鏡検査などがあります。いずれも外来で行うことができます。膀胱がんは、早期発見の場合は内視鏡による切除手術で取り除くことができます。しかし腫瘍(しゅよう)の度合いによっては、膀胱を摘出して、小腸で人工的な膀胱を作らなければならない場合もあります。普段から、自分の尿の色をチェックすることはもちろん、血尿という体からのサインを見逃さず、健康診断などで尿に潜血反応があった場合、必ず専門医の診断を受けてください。