2005年6月22日水曜日

「パニック障害」について

ゲスト/メンタルケアさっぽろ西口クリニック 鈴木将覚 医師 

パニック障害について教えてください。

 パニック障害は、20年ほど前から分類されるようになった比較的新しい疾病です。それ以前には不安障害の一つとして認識されていました。症状としては、突然、動悸が激しくなり、息苦しくなったり、めまいや冷や汗、手足の震えに襲われます。初発時や症状の強い人は、このまま心臓発作や呼吸困難を起こして死んでしまうのではないかという恐怖を感じます。救急車を呼ぶこともまれではありません。患者さんは、まず自分の心臓などに原因があるのだろうと、内科を受診しますが、内科的には何も問題がありません。この時点でパニック障害であると判断され、心療内科や神経科の受診を勧められれば、早くに治療を開始できます。

原因や治療方法、対処方法を教えてください。

 パニック障害は、人口の2%程度の割合で発症し、男女ともなりますが、20~30代の女性に比較的多くみられます。原因は特定されていませんが、自律神経の一時的な乱れによる交感神経の誤作動によって症状が引き起こされると考えられます。そのきっかけとなるのは、疲労やストレスなど、ささいなことである場合が多いのです。一度経験すると、「いつなるんだろう」「次は死んでしまうかも」「最初になった場所や経験によって、再度発作に襲われるのでは」と不安を感じるようになり、この予期不安によって、また発作を誘発することになります。
 治療法としては、安定剤、抗うつ薬などの服用によって発作を抑えつつ、心理面で不安が起きにくいようにケアをします。不安は打ち消そうとするとかえって意識してしまいます。即効性のある薬をお守り代わりに携帯し、「パニック発作が起きなければラッキー」くらいの気持ちで対処し、もし発作に見舞われても10分ほどで治まるのだから、大丈夫だと理解しておくといいでしょう。ある程度の期間、治療を受ければほとんど治る病気です。ただし、治療を受けず不安感を我慢し、外出を控えた結果、気分がふさいでうつ状態に陥ってしまうと治るのに時間がかかります。早めの治療で、早期に回復することができます。

2005年6月15日水曜日

「歯ぎしりと昼間の噛(か)みしめ」について

ゲスト/石丸歯科 石丸俊春 歯科医師

歯ぎしりと噛みしめについて教えてください。

 歯ぎしりというと、睡眠中にキリキリと不快な音をたてるというイメージがありますが、食事以外で上下の歯の異常な接触「噛みしめ」を含めて、ブラキシズムと呼ばれています。ブラキシズム習癖は決して珍しいものではなく、90%以上の人に見られ、ほとんどの場合は問題なく生活しています。しかし最近ブラキシズムによって、さまざまな病状を訴える患者さんが増えています。原因の一つはストレスと考えられています。

就寝時の歯ぎしりについて教えてください。

 就寝時の歯ぎしりは、一緒に寝ている人が週に5回以上の歯ぎしり音を確認した場合が診断基準となります。歯の痛みや摩耗(まもう)など、悪影響がある場合はナイトガード(歯ぎしり防止装置)の装着など治療方法も確立しています。また、子どもの歯ぎしりは、乳歯と永久歯の混合時によくあることなのでほとんど心配する必要はありません。

昼間の噛みしめとはどんな状態でしょうか。

 音がしないので自覚がないまま、歯の痛み、摩耗、破折、歯肉炎、歯周炎、顎(がく)関節症などの原因となっていることがあります。さらに、顔面痛、頭痛、耳鳴り、めまい、肩こり、腕のしびれ、腰痛、舌痛症、むちうち症状、けん怠感など、一般には歯と無関係と思われがちな症状を呈することもあります。他科を受診しても原因が分からず不定愁訴と診断されている人は、一度噛みしめを疑ってみるといいでしょう。
 長時間のパソコン操作やピアノ演奏、読書や書き物、裁縫、料理などに熱中し、前かがみの姿勢を続けることによって、噛みしめのほか、舌が低位置(舌で下の前歯を裏側から押している状態)にあったり、舌や咀嚼(そしゃく)筋などの口腔(こうくう)周囲筋や、顔面筋の緊張が持続、舌や頬粘膜に圧痕が見られるなどの現象が口腔内で起こっています。これらが、さまざまな症状を誘発しているのです。
 対策としては、日中に噛みしめていないかを自分でチェックする、作業や食事中の姿勢を正しく保つ、舌の位置の改善(正しい位置は上前歯の内側)、開口(かいこう)訓練、就寝前のリラックス、正しい咀嚼の訓練、喜怒哀楽を表し表情筋を使うなどがあります。噛みしめが気になる人は、一度専門医を受診することをお勧めします。

2005年6月8日水曜日

「白内障」について

ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 医師

白内障の症状、治療について教えてください。

 眼球の中でピントを合わせる働きをするレンズ部分(水晶体)が濁るために起きる視力障害が、白内障です。40歳以上の方に多く、最も多いのが加齢に伴う老人性白内障です。眼(め)のかすみ、霧がかかったような視力低下、明るい場所で見えにくいなどの自覚症状があります。治療としては、点眼薬が主に投与されますが、老化現象の1つなので、最終的には手術が必要になります。

白内障の手術はどのようなものですか。 

 日本で行われている白内障の手術は年間80万件、眼科手術の約8割に及ぶといわれています。現在最も行われている手術は水晶体を包んでいる袋を残し、袋の中の濁りを超音波を利用して細かくして取り除き、その袋の中に人工レンズを挿入するものです。まだ日本では承認されていませんが、最近では袋の中で動いてピント合わせのできるレンズなど、より高性能なレンズの研究開発も盛んです。手術自体は安全性の高いものですが、患者さんによって眼の状態はさまざまなので、同じ白内障の手術でも難易度に差があります。手術のしにくい眼とは、小さい眼や奥眼(おくめ)、角膜の濁りがある眼、袋を支えている糸が弱い眼などです。最も合併症が起きやすいのが、進行して真っ白になった白内障です。進行した白内障の濁りは非常に固く、超音波で細かくすることができにくかったり、袋を支える糸が弱いことが多く、袋が破れて、濁りが眼の中に落下するような合併症が起こる可能性が高くなります。
 最近よく見かけるのは、片方の視力が良いため、進行した白内障を放置されている方が多いことです。進行は左右バラバラなので、「片目が見えるから」と放っておかず、早めに検査を受けることをお勧めします。白内障手術の合併症で怖いのは、術後に眼内でばい菌が繁殖し、網膜自体が死んで失明に至ることがまれにあります。これは1万人に1人という珍しい状態です。白内障手術はあまり進行しないうちに手術を受けた方が、合併症が少なく予後が良好です。気になる人は、経験豊富な専門医で早めに受診することをお勧めします。

2005年6月1日水曜日

「肌と漢方」について

ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 医師

漢方治療について教えてください。

 西洋医学では、「発熱したら解熱剤」「細菌感染には抗生物質」といったように、対症療法が基本になります。東洋医学は、体全体の中でバランスの崩れから生じるゆがみを症状としてとらえ、これを補正することによって治療していこうという考え方です。東洋医学の中心の一つが漢方薬を用いた漢方治療です。漢方薬は主に薬草の茎や根、葉などから得られる生薬を組み合わせたものです。漢方治療では、症状に対してだけではなく、個々人の体格や体質などを総合的に見て、その人に合った薬を処方します。言い換えれば「一人一人に合わせたオーダーメードの医療」といえるでしょう。例えば、体力があり赤ら顔で精力的な人のニキビと、冷え性で疲れやすく虚弱な人のニキビでは、同じニキビでも発症にいたる経緯や原因が違います。そこで、それぞれの体格や体質などを考慮して、その人に合った漢方薬が処方されるのです。

肌のトラブルに漢方薬は有効ですか。

 漢方治療ですべての肌トラブルが解消されるというものではありません。西洋医学と東洋医学の良い所を両方取り入れて肌のトラブルに役立てるのが基本です。症状によっては効果が速やかに現れることも多くありますが、多少時間をかけてじっくりと症状を改善していくこともあります。また、経過を見ながら処方を変えていくこともあります。
 比較的漢方治療が適応しやすいのは、ニキビ、蕁麻疹(じんましん)、アトピー性皮膚炎などです。特に女性の場合は、肌のトラブルだけでなく、生理不順や冷え性、便秘など漢方薬が比較的効きやすい症状で悩まされている場合が多く、漢方治療が効果的なようです。漢方薬を処方する際は、詳しい問診や脈診、舌診、腹診など、一見無関係と思われることまで細かく診て、処方内容を決定します。
 漢方薬は副作用も少なく体への負担も軽いといわれています。またほとんどの漢方薬は健康保険が適用になっています。

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