2020年4月22日水曜日

苦痛の少ない内視鏡検査

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 院長

胃内視鏡検査、大腸内視鏡検査について教えてください。
 これまで、胃内視鏡検査は口から入れる経口内視鏡を用いるのが一般的でした。しかし、最近は「経鼻内視鏡検査」という鼻から挿入する方法で検査が行われることも増えてきました。経鼻内視鏡は以前からありましたが、近年は著しく性能が良くなり、導入する医療機関が急増しています。
 経鼻内視鏡は弾力性のあるしなやかなチューブで、直径は5mm台と一般的な経口内視鏡に比べて細く、スムーズに挿入することができます。画像もクリアな高画質で、視野が広く、ごく小さな病変も発見することが可能です。
 経口内視鏡は挿入時、舌の付け根の舌根という部分に内視鏡が触れることで、検査の最中に「オエッ」という吐き気をもよおすことがあるなど、患者さん の負担が大きかったのですが、経鼻内視鏡では鼻から挿入した内視鏡は鼻腔(びくう)を通って食道に入るため、嘔吐(おうと)感や痛みがほとんどありません。また、検査中に医師と会話できることも、患者さんと医師双方にとって大きなメリットになっています。
 大腸内視鏡というと、どうしても辛く苦しい検査を想像してしまう方が多いと思いますが、こちらも器具や技術の進歩により、従来に比べて検査は楽になってきています。多少の圧迫感はあっても、痛みを抑えて検査を終えることができます。また、鎮痛剤を用いることで、眠っている間に治療が終わるケースもあるようです。

内視鏡検査を受けるべき年齢や頻度について教えてください。
 大腸がんのリスクが高くなる40代以上は、胃がんのリスクが高くなる年代でもあります。「検査が怖い」「以前すごくきつかった」など、大腸や胃の内視鏡検査を苦手とするために、がんなど重篤な病気の発見が遅れてしまう例も少なくありません。がんや潰瘍など、食道や胃、十二指腸、大腸、小腸などの疾患は、早期発見・早期治療が完治への近道です。そのためには、定期的な検査が重要です。
 それぞれの内視鏡検査を受けるのに適切な時期や間隔は、病歴・経過や家族や近親者の病歴などにより個人差はありますが、基本的には40歳になったら「まずは一度」、50歳代以降では1年〜数年ごとに検査されることをお勧めします。

2020年4月15日水曜日

豆乳アレルギーとシラカバ花粉症

ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長

豆乳アレルギーについて教えてください。
 健康志向の高まりから、豆乳の人気が高まっていますが、豆乳を飲んだ後で、口の中が痒くなったり、胃腸の調子が悪くなったりする方がいらっしゃると思います。これは「大豆アレルギー」によるものです。食物アレルギーとは、食物を摂取した時に、身体が食物に含まれるタンパクを異物として認識し、自分の身体を防御するために過剰な反応を起こすことです。アレルギーを引き起こす環境因子(ダニ、花粉、食品など)をアレルゲンといいますが、大豆に含まれるアレルゲンタンパクの一種で「Glym4」という物質が、大豆アレルギーの原因アレルゲンであることが分かっています。
 豆乳などの大豆製品を飲食した後で具合が悪くなるのに、通常の大豆のアレルギー検査をしても異常がないと診断された方もいらっしゃると思います。このケースでは、Glym4を測定すると異常が出ることがあります。最近、Glym4の測定が、保険適用で検査できるようになりました。
 Glym4はカバノキ花粉(シラカバやハンノキ)の主要なアレルゲンである「PR-10」という物質の仲間であるため、シラカバ花粉症の患者さんの一部も大豆アレルギーとなります。ただ、このアレルゲンは加熱や発酵処理で抗原性を失うため、味噌やしょう油、煮豆などではアレルギー反応は起こりません。豆乳が、最も起こりやすく、もやしや枝豆、豆腐でも起こるケースがあります。

大豆アレルギーと果物アレルギーは関係がありますか?
 PR-10という物質は、大豆以外にもリンゴ、モモ、サクランボ、ナシ、ビワなどのバラ科の果物にも含まれています。そのため、大豆アレルギーやシラカバ花粉症の患者さんでは、これらの果物を食べた時、口やのどが痒くなったり、ひどい場合は呼吸困難を起こしたりします。逆に、リンゴなどの果物を食べると、口やのどが痒くなるようなアレルギー症状を持つ人は、大豆アレルギーも合併していることが多いです。
 シラカバ花粉症の患者さんは、シラカバ花粉もシーズンにはひどいせき込みが2〜3カ月続いたり、ぜん息を併発したりするので、大豆アレルギーやバラ科の果物アレルギーをお持ちの方が長引くせきに悩まされている場合は、呼吸器内科での詳しい検査をお勧めします。

2020年4月8日水曜日

高齢者の精神疾患と身体疾患の合併

ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院 神廣 憲記 医師

精神科病院で総合診療を展開されている立場から、精神疾患を抱える患者さんの身体疾患の診療について教えてください。
 精神科病院に入院される方の内訳については、従来は比較的若年の統合失調症の方が多くを占めていましたが、高齢化社会の進展に伴い、精神疾患を抱えながらお年を重ねられた方の入院治療をすることが多くなってきました。また、認知症になって自宅での療養が難しくなったお年寄りが精神科病院で入院治療をするケースも増えています。
 高齢者の多くは元々持病を持っています。持病が複数あり、薬もたくさん服用されていることも珍しくありません。このような高齢化と身体疾患の合併という傾向は、外来で受診される患者さんも同様に見られます。
 そういった高齢者の方々に元気に過ごしていただくためには、精神面だけでなく身体的にも健康問題をコントロールしていく必要があります。

特に遭遇することの多い健康問題のケア・治療について教えてください。
 今回は、糖尿病と誤嚥性肺炎を取り上げます。キーワードは多職種連携です。
 糖尿病は放置すると、動脈硬化が進んだり、眼・腎臓・神経に障害が出たり、さまざまな身体合併症を引き起こすおそれがあります。治療は食事・運動療法、適切な服薬管理が大切ですが、精神疾患を抱える高齢者の場合はセルフケアが難しい患者さんも多いため、入院中も退院後も、複数の医療介護職が関わって支えていくことが重要です。患者さんの要望や生活背景に合わせながら、医師、病棟・外来スタッフ、訪問看護師、精神保健福祉士、デイケアスタッフ、ケアマネージャー、管理栄養士らが連携して関わっていきます。
 誤嚥性肺炎は、嚥下機能障害のため、唾液や食べ物などと一緒に細菌を気道に誤って吸引することにより発症します。嚥下機能低下の要因は、加齢や認知症に伴うものが多いですが、精神疾患を抱える高齢者では、特定の薬剤の副作用により嚥下機能が一時的に低下する方もいます。誤嚥性肺炎の治療は、酸素吸入と抗生物質の点滴を行い、早期に誤嚥を予防しつつ、経口摂取を再開することが重要です。医師、歯科医、歯科衛生士、薬剤師、看護師、リハビリスタッフ、管理栄養士らが連携して、嚥下機能低下の医学的な原因、歯や歯ぐきの状態、舌やのどの動き、食事時の姿勢といった複数の視点の評価を行います。そして、それらの評価に基づいた医学的な治療や口腔ケア、食事形態の選定、食事介助、リハビリテーションを行います。

2020年4月1日水曜日

手足のしびれ

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長

手足のしびれについて教えてください。
 脳神経外科の外来で頻度の多い症状に手足のしびれがあります。医療機関や専門医を受診するべきかどうかですが、しびれが長く続く場合や、しびれが段々と強くなるようであれば受診した方がよいでしょう。また、急にしびれが起こって、それが持続する場合は、脳や脊髄の病気が考えられるので、早急に受診する必要があります。
 脳の病気によるしびれには、脳梗塞などの脳血管疾患があります。急にしびれが起こって、その後しびれが持続するのが特徴です。片側の手と口周囲のしびれが同時に起こる場合があります。これは「手口症候群」と呼ばれ、脳の中の視床という部位の病気で起こります。脳梗塞の好発部位でもあるので、手口症候群がみられたら、手足のまひやろれつが回らないなどの症状がなくても、すぐに脳神経外科を受診してください。

手足のしびれは、ほかにどんな原因が考えられますか。
 頚椎症や椎間板ヘルニアなどによる、頸髄性のしびれが考えられます。この場合には、しびれの部位が脊髄神経の分布に重なることが多いため、診察により障害部位を推定することができます。しびれだけにとどまらず、筋力の低下などがみられるようになると、手術による治療が必要なケースもあります。
 頚椎病変に対しては、従来のレントゲン撮影に加えてCTやMRIなどによる画像検査で、椎間板の変形や神経の圧迫などが、より正確に診断できるようになってきました。
 下肢のしびれの原因としては、腰椎疾患や下肢の閉塞性動脈硬化症なども考えられます。閉塞性動脈硬化症では、歩行時にしびれや痛みが起こり、しばらく休むと軽快します。これを「間欠性破行(はこう)」といいます。血管の動脈硬化による病気なので、症状が進行、悪化すると血管外科での治療が必要になります。腰部脊柱管狭窄症も間欠性破行を症状とする病気ですが、立っている姿勢が辛く、前かがみになったりしゃがんだりすると症状が楽になるという特徴があります。
 頚椎、腰椎などが原因で起こる慢性的なしびれや疼痛に対しては、安静、薬物療法、ブロック注射、マッサージなどの保存的治療を行うのが一般的ですが、症状が悪化してくるようであれば手術治療が必要なケースもあります。治療に関しては、かかりつけの病院、先生と相談されることをお勧めします。