2019年5月22日水曜日

E型肝炎

ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 院長

E型肝炎について教えてください。
 E型肝炎ウイルスに感染し、肝臓に炎症が生じた状態です。急性肝炎を起こすことがあり、劇症肝炎という重篤な肝炎を発症することもあります。また、血液疾患の患者さんなど免疫機能が低下している方が感染すると、慢性化することが明らかになっています。2017年の急性ウイルス性肝炎の届け出件数では、ウイルス性肝炎の中で最も多く、近年注目されている疾患の一つです。
 E型肝炎は、ふん便に存在するE型肝炎ウイルスに感染することで発症します。水や氷、野菜、甲殻類などに混入しており、これらを不衛生な状態で摂取することで感染します。そのため、衛生状況がE型肝炎の流行に深く関連し、衛生環境の整備されていない途上国を中心に確認される傾向があります。従来、日本における発症例は、輸入感染症と考えられていましたが、渡航歴のない方でも感染することがあり、以前推定されていたより日本にも広く分布していると考えらます。日本での主な感染原因は、ブタ・イノシシ・シカの肉や二枚貝を生あるいは加熱不十分な状態で食べることによるものです。そのほか、E型肝炎ウイルスが混入した血液製剤、母子感染などの感染経路も知られています。
 E型肝炎の潜伏期間は約6週間であり、似たような臨床経過を示すA型肝炎よりもやや長い傾向にあります。初期症状としては食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛、肝臓の腫大に伴う腹痛などです。その後、黄疸の症状が急激に出現し、2週間程度の経過で治ります。劇症肝炎にかかると黄疸や倦怠感に加えて、意識障害や腹水・胸水、全身のむくみなど、肝不全に伴う症状が出るようになります。
 E型肝炎ウイルスによる劇症肝炎は、妊婦さんに発症リスクが高く、妊娠後期に感染すると死亡率は約20%にものぼるとの報告もあります。

治療について教えてください。
 治療は、A型肝炎と同様に、急性期には入院、安静加療が必要です。劇症肝炎に対して血漿(けっしょう)交換、場合によっては肝移植による治療が考慮されます。E型肝炎ウイルスに特化した治療がないため、①動物の肉や内臓を食べる際の十分な加熱処理、②調理時や喫食時の交差感染(直接または器物を介して間接的に伝播すること)の防止、を徹底することが重要です。