2012年7月13日金曜日

女性の痔(じ)と直腸ポケット


ゲスト/札幌いしやま病院 川村 麻衣子 医師


女性の痔について教えてください。
 痔は男性に多い病気と思われがちですが、実は女性こそ痔を招く原因を抱えています。例えば、便秘症。便が硬くなり、無理に排便しようと肛門を傷付けることがあります。妊娠や出産も痔の原因の一つ。妊娠すると便秘を起こしやすく、また肛門周辺がうっ血しやすくなります。出産時の息みも、肛門に大きな負担をかけます。このように女性の場合、痔の原因は女性特有の身体機能が関連していることが多いのです。痔は「痔核(いぼ痔)」「裂肛(切れ痔)」「痔ろう(あな痔)」の3種類に分けられますが、女性に最も多くみられるのは裂肛です。排便時の痛みや出血、排便後にじんとした痛みが続くなどの症状があります。
 痔は女性にとっては医師にも相談しにくい病気です。しかし「恥ずかしい」と思って受診をためらっていると、症状は進行してつらくなるばかりです。また、お尻からの出血は大腸がんなどの病気が隠れている場合もあります。お尻に出血や痛みなどの症状があらわれたら、自己判断せずに専門医を受診することをお勧めします。

直腸ポケットとはどのような病気ですか。
 直腸に起因する女性特有の排便障害で、直腸膣壁弛緩(しかん)症とも呼ばれます。排便時に息むと、直腸と膣の間の壁(膣壁)が、膣方向へポケット状に膨らみ、便が引っ掛かって通りが悪くなります。症状は、肛門の直前で便が止まってしまう、肛門の周りを指で圧迫しないと便がでない、残便感があるなどで、ひどい便秘の人は直腸ポケットの疑いがあります。生まれつき膣壁が薄い、出産による膣壁の広がりや加齢による筋肉の衰えなど、先天的、後天的、両方の原因が考えられます。治療は、まず食生活や生活習慣の改善によって便秘を解消することです。便が柔らかくなれば排便がしやすくなります。それでも改善しなければ、下剤を服用する方法もあります。
 ポケットが大きいと、通常の便秘治療では排便障害が改善されません。その場合は、手術によってポケットを縫い縮める方法も有効です。ポケットそのものは良性疾患ですが、習慣的に下剤に頼っていると、大腸がんなどの病気を見落とす危険もあります。便秘で悩んでいる人は、原因を知るためにも、一度専門医に相談することをお勧めします。

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