2011年9月28日水曜日

生理痛の原因と子宮内膜症

札幌駅前アップルレディースクリニック 工藤 正史 院長

生理痛の原因について教えてください。

 生理痛の症状を訴える女性のうち、約5パーセントが日常生活を制限されるほどの生理痛を経験し、治療を必要とするといわれています。生理痛は、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症や、クラミジアや淋菌(りんきん)感染などの後遺症による骨盤腹膜の癒着性病変など器質的疾患が認められる(病気が隠れている)場合と、原因となる病気のない機能的月経困難症とに分類されます。
 
最近、若い女性に増えている子宮内膜症とはどのような病気ですか。

 子宮内膜症は、子宮という名は付いていますが、子宮以外の部位に起こる病気です。卵巣、卵管、膀胱(ぼうこう)、腹膜、膣(ちつ)壁、直腸のほか、まれに肺に発症することもあります。
 子宮内膜とは、子宮の内側を覆っている粘膜です。妊娠が成立しないときは増殖した子宮内膜は不要となってはがれ落ち、血液などと一緒に体外へ排出されます。これが月経です。子宮内膜症は、本来であれば子宮の内側だけに存在するはずの子宮内膜組織が、子宮の内側以外のところで発生して増殖する病気です。子宮以外の場所には、不要となった子宮内膜が排出されるところがないため、出血した血液はその部分にたまってしまい、痛みを主に血尿などさまざまな症状を引き起こします。周囲の臓器と癒着して不妊症や子宮外妊娠の原因となるのも特徴です。
 治療は、対症療法と内分泌療法、外科療法になります。生理痛の痛みが強い女性は、子宮内膜からプロスタグランジンという物質が多く産生されており、これが痛みの原因となっています。プロスタグランジンの産生を阻害する薬を飲むことが対症療法で、出血が始まったらすぐに服用するのがコツです。鎮痛剤が効きにくい場合、低用量のピルを用いた内分泌療法を行います。ピルは経口避妊薬ですが、生理痛だけでなく、生理前の症状(イライラ・気分の落ち込みなど)や月経不順などの症状も改善します。また、鎮痛剤と異なり、子宮内膜症に対して治療的に働くなどのメリットもあります。薬やピルでは治療困難の場合には、外科療法が効果的で、現在は体にかかる負担の少ない腹腔(ふくくう)鏡で行う手術が主流です。
 痛みを我慢して過ごす時間は人生の大きな損失です。いたずらに怖がることなく、まずは専門医を受診することをお薦めします。

2011年9月26日月曜日

大腸がん

みどり内科クリニック 中里 友彦 院長

大腸がんについて教えてください。

 日本では今、大腸がんが増えてきています。その原因の一つとして、食生活の欧米化が挙げられます。また、大腸がんの一部は遺伝により発生するといわれています。身内に大腸がんの方がいる場合には、検査をお勧めします。
 年齢別にみた大腸がんの罹患(りかん)率は、40歳代から増加し始め、高齢になるほど高くなります。2005年の国立がん研究センターの統計では、日本人の男性で8〜9%、女性で6〜7%の方が大腸がんを発症しています。
 がんの治療では、早期発見・早期治療が何よりも重要です。特に大腸がんは初期に発見し、手術を受けることで完治も可能ながんといわれています。また、内視鏡治療のみで治癒することも多い病気です。
 早期の大腸がんでは、自覚症状がないのが大部分です。このため、がんの表面から微量の血液が便に混ざることから、これを検出することでがんを発見しようとするのが便潜血検査です。簡易な検査ですが、大腸がんでも検査異常が出てこないケースもあります。大腸がんの早期発見に比較的精度が高い検査は、現在のところ大腸内視鏡検査といえるでしょう。

大腸内視鏡検査について教えてください。

 大腸内視鏡検査は肛門から内視鏡を挿入し、大腸内部を直接観察する検査です。検査前に約2リットルの下剤を服用し、大腸内の便をなくすための処置が必要です。検査時間は10分程度ですが、大腸が長い方、過去の手術で腸に癒着のある方、大腸憩室症(大腸の壁が弱く、大腸に小さなへこみができた状態)で大腸が硬くなっている方などは、30分〜1時間かかるケースもあります。
 大腸内視鏡というと、どうしてもつらく苦しい検査を想像してしまう方が多いと思いますが、技術の進歩により、従来に比べて検査は楽になっています。また、施設によっては鎮痛・鎮静剤を用いた、より苦痛の少ない検査を実施しているところもあります。
 これまで“つらそう”“痛そう”とためらっていた皆さんも、ぜひ大腸内視鏡検査で自分の腸の状態をしっかり調べてみてください。検査の間隔はポリープの有無などによって異なりますが、基本的には40歳代では「まずは一度」、50歳代以降では1年〜数年ごとに検査されることをお勧めします。

インプラント治療

ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

インプラント治療とはどういうものですか。

 虫歯や歯周病で歯を失ってしまった場合、ブリッジや入れ歯のどちらかの方法で義歯を装着するのが一般的ですが、失った歯の両隣の歯を削ったり、残った歯にバネを架けたりするなど、健康な歯に負担を掛けることもある治療といえます。また、審美性に問題が出る場合もあります。
 インプラント治療は、失ってしまった歯の根が本来あった場所にチタン製の土台を埋め込み、その上に人工的な歯を固定させる方法です。天然の歯に近い審美性と、自分の歯のように噛(か)めるという機能性が回復します。
 インプラントの治療は顎の骨に穴を開け、人口歯根を埋め込むため、顎の骨の量がとても重要です。骨の量が少ないとインプラントを固定できません。近年は、骨造成(骨を増加させる手術)などの治療を併せて行うことで、あごの骨の量が少ない人でもインプラント治療が行えるようになってきました。
 専門医の正確な診断のもと、きちんとした治療とメンテナンスを行えば、インプラントは20年以上良好に機能するといわれています。

インプラント治療を受けるに当たっての注意点を教えてください。

 インプラント治療は保険が適用されない自由診療のため、費用が高額になる場合もあります。また、インプラントを埋め込んだ後は、なかなかやり直しが利かない治療法ですので、治療を希望される人は、事前に専門医の詳細な説明を受けて、インプラントについて正しく理解し、十分に納得した上で治療に臨むことが何よりも大切です。
 インプラント治療を行う前には、必ず術前検査を行います。まず血液検査でインプラント治療が可能な健康状態であるかを調べます。糖尿病や心臓疾患の既往症がある場合、内科医との連携が必要になるケースもあります。続いて、口腔(こうくう)内検査、レントゲン検査、CT検査などで、顎の骨や歯茎の状態を確認します。すべての検査の結果を踏まえて、インプラントが良好に長く機能する治療計画を立てていきます。
 インプラントを長期にわたって快適に使うためには、メンテナンスが欠かせません。メンテナンスを怠ってしまうと、歯周病に似た「インプラント周囲炎」になってしまうことがあります。丁寧な自宅でのケアに加えて、専門医での定期的な検診の受診が必要となります。

アルコール依存症

ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 長岡 徹 医師

アルコール依存症とはどのような病気ですか。

 アルコール依存症は、アルコールの持つ依存性によって発病する病気で、薬物依存の一つです。簡単に言えば、飲酒によっていろいろな悪い結果が起こっているにもかかわらず、なお飲み続けている状態です。近年、うつ病による自殺の増加が社会問題になっていますが、その背景にアルコール依存が隠れていることも多く、うつ病、アルコール依存症の両方向からの治療が必要となる場合もあります。また定年後の生きがい喪失から、飲酒量が増えてアルコール依存症と診断される高齢者も増加しています。
 自らの意志で飲酒をコントロールできなくなり、飲酒をしていない時に手の震え、頻脈、発汗、不眠、幻覚などの離脱症状が出ることもあります。毎日の生活がアルコールに支配され、家庭や職場において有害な結果が起きているにもかかわらず、飲酒欲求を抑えることができません。
 アルコールを長期間、多量に摂取すると身体にいろいろな悪影響が出てきます。脳の神経細胞が破壊され、認知機能が低下し物覚えが悪くなったり、アルコール性肝障害として脂肪肝、アルコール性肝炎、肝硬変と段階的に肝障害を起こすことがあります。また、うつ病や不安障害などの心の病気を合併しやすいという問題もあります。アルコール自体に抗不安効果があるため、心の病気の人が不安や不眠を理由にアルコールにのめりこんでしまうことも多いです。しかし、アルコール依存症になるほどの多量な飲酒は、不安や不眠を助長し気がつくと心の病気が重症化、慢性化してしまっていることがあります。またうつ病の方がアルコールを多量に摂取することで、衝動的に自殺に及ぶこともあり、アルコール依存症が自殺に関係しています。

アルコール依存症の治療について教えてください。

 アルコール依存症の治療で最も大切なのは、患者自身が「自分はアルコール依存症である」と認めることであり、それが治療の第一歩となります。それと同時にアルコール依存症がどういった病気であるのかという教育が欠かせません。
 治療の目標は「断酒」です。飲酒量のコントロールができない状態ですから、一滴でも口に入れてしまえば抑制がきかなくなりますので、「節酒」は目標にはなりえません。飲酒量を減らすのではなく、アルコールを完全に断ち切らなくてはなりません。飲みさえしなければよいのだと簡単に考えがちですが、一人でこれを実行し続けるのは困難を極めます。専門医での通院・入院治療等を受けるのはもちろん、断酒のモチベーションを維持する上で励ましとなる、家族や友人などの周囲からのサポートも大切です。また同じ目標に向かっている仲間の存在を知り、知識を共有するためにも「AA(アルコホーリクス・アノニマス)」などの自助グループへ参加することが望ましいです。

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