2008年5月28日水曜日

「白内障治療における多焦点眼内レンズ」について

ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 医師

白内障の眼内レンズについて教えてください。

白内障は瞳の後ろにある水晶体が濁るために起きる視力障害で、最も多いのが加齢に伴う老人性白内障です。治療には点眼薬が投与されますが、最終的には手術が必要になります。現在、日本で最も行われている手術法は、水晶体を包んでいる袋の中の濁りを取り除き、その袋の中に人工レンズを挿入します。
白内障手術で現在使われている眼内レンズは、ほとんどが「単焦点眼内レンズ」です。遠く、あるいは近くの一カ所に焦点を合わせたレンズで、濁りがなくなるため、見やすく視界が明るくはなりますが、裸眼でどこでもよく見えるというわけではありません。焦点が遠くにある場合は、読書や縫い物など手元の作業には視界がぼやけ、老眼鏡が必要になります。逆に近くに焦点を合わせた場合は、外を歩いたり、運転する時に信号や看板が見づらく、眼鏡が必要になります。

多焦点眼内レンズについて教えてください。 

多焦点眼内レンズは近くと遠くの両方に焦点を合わせることができる、遠近両用レンズです。日本では認可されたばかりでまだ症例数は少ないですが、欧米では増加傾向にあります。
これまでの単焦点眼内レンズに比べ、遠くも近くも焦点が合いやすいのですが、自由にピントを変えることができる若い頃の見え方とは異なります。多焦点眼内レンズの見え方に脳が慣れるまではある程度の時間がかかります。眼鏡が必要になることもあります。ただ、いくつもの眼鏡を使ったり、頻繁にかけ外しする煩わしさからは解放されます。
単焦点レンズよりは見え方が劣ったり、暗いところで光が散乱して見えるハローや、光の周辺に輪がかかって見えるグレアを感じる場合もあります。夜間に車の運転が多い場合などは向いていません。
単焦点眼内レンズにするか、多焦点眼内レンズにするかは、医師の説明を聞き、自分のライフスタイルにどちらが合うか考慮して選択することをお勧めします。現在のところ、多焦点眼内レンズは保険適用外となりますので、費用は施設によって異なりますが、40万円~60万円掛かります。詳しくは、医師に尋ねると良いでしょう。

2008年5月21日水曜日

「麻疹(はしか)」について

ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師

麻疹(はしか)について教えてください。

麻疹ウイルスによって引き起こされる急性の感染症で、発熱や咳(せき)、鼻水といった風邪のような症状と発疹(ほっしん)が現れ、肺炎、中耳炎、脳炎などの合併症を発症することもあります。感染経路は、空気感染、飛沫(ひまつ)感染、接触感染で、免疫を持たない人が感染すると90%以上が発症します。特別な治療法はなく、症状に合わせた対症療法が行われます。
従来は幼児期の感染症と思われていましたが、最近は10~20代での感染も見られ、学校が休校になるなど、社会的な問題になっています。唯一有効な予防方法は、ワクチン接種により、あらかじめ免疫を獲得しておくことです。

ワクチン接種について教えてください。

以前は一度麻疹ワクチンを接種すれば、免疫は終生続くとされていましたが、実際には、接種後の流行時にたびたび麻疹ウイルスに接し、結果として免疫が持続していたことが分かりました。近年の若年者の発症は、ウイルスに接する機会に乏しく、免疫が維持できなくなったことが原因と考えられます。ワクチンによる免疫の持続期間は10年くらいと推定されます。このような状況を背景に、政令の改正により、平成20年度から24年度までの5年間、中学1年生と高校3年生に相当する年齢の人たちも、ワクチン接種の対象として追加されました。免疫をより高めるためには2回接種が有効とされているので、幼児期に受けていても、もう一度接種すると良いでしょう。札幌市の場合、実施医療機関が決まっているので事前に確認してください。そのほかの方は、任意接種(実費)として行えます。麻疹のワクチンは、MR(麻疹風疹(ふうしん)混合)ワクチンが一般的で、過去に麻疹や風疹にかかったことがあっても、接種して問題はありません。副反応は、発熱(約20%)や発疹(約10%)などですが、数日で治まります。ごくまれにじんましん、けいれん、脳炎などが報告されています。妊娠中の人はこのワクチンを接種できません。麻疹に対して免疫があるかどうかの検査は一般の医療機関でできますが、保険適用外のため料金は医療機関によって異なります。抗体検査をせずに、初めからワクチン接種を行うことも一つの方法です。

2008年5月14日水曜日

「リウマチの治療薬」について

ゲスト/青空たけうち内科クリニック 竹内 薫 医師

関節リウマチについて教えてください。 

関節リウマチは、関節に起こる炎症がもたらす痛みやはれ、変形を特徴とする病気です。微熱やだるさ、貧血、食欲不振など全身症状を伴うこともあります。目覚めたときの関節のこわばった感触、ぎこちなさを自覚するなどが、リウマチに特徴的な症状です。放っておくと、関節の骨や軟骨が破壊され、関節が変形してしまいます。
現在、関節リウマチに悩む患者数は人口の約0.8%、全国では100万人ともいわれ、その数は人口の高齢化に伴い増加する傾向にあります。男女の割合は1対4で女性に多く、発症年齢は30~50歳代、特に40歳代が最も多いことが分かっています。関節リウマチの原因は、今のところはっきりしていませんが、ウイルスや細菌を排除する免疫システムの異常と考えられています。関節リウマチは自己免疫疾患の一つです。

治療について教えてください。

以前はリウマチには良い治療薬がなく、痛みが続き関節が変形していくのを止めることはなかなかできませんでした。しかし、近年、生物学的製剤の登場により、関節リウマチの治療は飛躍的に進歩し、治療の選択肢も広がり、かつては「寝たきり」というイメージがあったリウマチに「治る病気」というゴールも見えてきました。生物学的製剤は最新のバイオテクノロジー技術を用いて開発された新薬で、関節リウマチの炎症や、骨、軟骨などの関節破壊を引き起こす原因となる「TNF」というサイトカイン物質を抑えることにより、その効果を発揮します。生物学的製剤のインフリキシマブ、エタネルセプトは保険が適用になります。
以前は、10年以上かけて骨が徐々に壊れると考えられていましたが、最近の研究で、初めの2年間で骨の破壊が著しく進行することが分かりました。結果として10~20年後の関節破壊があり、QOL(生活の質)を決めることにもなります。リウマチは発症早期がとても重要で、早期診断、早期治療に大きな意味があります。
リウマチの早期診断は、糖尿病や高血圧のように検査数値では診断がつかないことが多いので、関節痛やこわばりなどで困っている人は、一度リウマチ専門医に相談することをお勧めします。

2008年5月7日水曜日

「アレルギー性結膜炎」について

ゲスト/さかた眼科ファミリークリニック 坂田 信義 医師

アレルギー性結膜炎について教えてください。 

結膜とは上下のまぶたの裏側と、白目の表面を覆っている半透明の膜です。外からの異物が結膜に付着し、体が過剰に反応して免疫反応が起こるのがアレルギー性結膜炎です。症状としては、目やまぶたのかゆみ、目がゴロゴロする、目ヤニが出るなどです。結膜が充血しむくみが見られ、まぶたが腫れることもあります。重症の場合は角膜にまで炎症が及び、鼻炎、気管支ぜんそくなどを伴う場合もあります。
札幌では、4月の中旬から花粉の飛散が始まり、季節性のアレルゲン(原因物質)となります。本州に多いスギ花粉はわずかで、ハンノキ、イチイ、シラカバなどの木本花粉によるものが多く、夏にはイネ科花粉、秋にはヨモギなどの雑草系花粉が飛散しますが、春から夏にかけて一番多く発症します。
ほかに通年性のハウスダスト、真菌、ダニ、ペットのふけなどがあります。夜間に目がかゆい、目をこするなどの場合は寝具のダニによることが考えられます。原因物質を特定するのであれば、皮膚テストや特異IgE抗体測定の血液検査が必要となります。

予防法、治療法を教えてください。

花粉症の場合は、花粉情報を活用し、飛散が多い日には花粉防止用メガネ(ゴーグル型)を着用すると有効です。普段コンタクトレンズを装着している人は、一時的にメガネに切り替えるだけでも効果があります。目の表面に付着した花粉を洗い流すには、涙に似た成分でつくられた人工涙液による洗眼が有用です。市販のカップ式の洗浄器具は目周囲の汚れや花粉を目表面に接触させる可能性があります。症状を抑えるなら、まぶたの上からぬれタオルで冷やすのも効果的です。
治療法としては、抗アレルギー薬(点眼、内服)による薬物療法が中心となります。重症の場合はステロイド薬(点眼、内服、軟こう)が使われます。
毎年、花粉症が心配な方は、飛散が始まる2週間ほど前から、抗アレルギー薬を予防的に使用することで症状を軽減できるので、ぜひ専門医を受診して相談してみてください。