2005年7月6日水曜日

「前回帝王切開後の経膣分娩(ぶんべん)」について

ゲスト/医療法人社団 産科婦人科 はしもとクリニック 桑原 道弥 医師 

前回の分娩は帝王切開で、今回は経膣分娩というのは可能ですか

 帝王切開をしたときの原因が今はなく、今回の妊娠に関して経膣分娩をすることに関して問題点がなければ、一般的には60~80%で経膣分娩ができるといわれています。帝王切開を受けた方が次回以降の分娩で、経膣分娩をする際に、最も問題となるのは子宮破裂です。子宮破裂はおよそ1%の確率で起こるといわれており、その発生は突発的です。ひとたび起これば、赤ちゃんが死亡する可能性はかなり高く、たとえ助かったとしても高率で脳性まひや精神発育遅滞が起こります。帝王切開後の経膣分娩における分娩前後の赤ちゃんの死亡率は、予定帝王切開をした場合の10倍以上になるといわれています。また、子宮破裂は母体死亡の原因となることもあるので、慎重に考えなくてはなりません。
 今から十数年前、アメリカでは帝王切開の率がかなり高くなり、医療費を抑えることを目的に帝王切開後の経膣分娩が推奨されるようになりました。日本でも追随して経膣分娩が推奨されるようになりましたが、その後、アメリカで追跡調査をしたところ、子宮破裂に関連する有害事象のために総医療費が逆に高くなったため、現在では帝王切開後の経膣分娩を逆に制限する方向になってきています。

帝王切開には危険はないのでしょうか。

 まったく危険がないわけではありません。特に最近は、帝王切開後に血栓症による重篤な合併症が多いといわれており、その予防に努める必要があります。また、麻酔に関連するトラブルもあります。しかし、赤ちゃんに関しては帝王切開の方が、経膣分娩よりも安全です。それでも、帝王切開後に経膣分娩をしたいということであれば、かかりつけの病院、担当の医師とよく相談してください。
 アメリカでは、産科医師、麻酔科医師、小児科医師など十分なスタッフと設備があり、24時間緊急帝王切開が迅速に行える施設でということになっています。子宮破裂の発生から17分以内に帝王切開で赤ちゃんを娩出した例では、赤ちゃんに後遺症はなかったという報告がありますので、そのような対応ができる施設かどうかが重要です。