2005年7月27日水曜日

「慢性咳嗽(がいそう)」について

ゲスト/大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 医師 

しつこく長引くせきについて教えてください。

 せきが8週間以上続く場合を専門的には慢性咳嗽といいます。その原因を大きく分けると、
(1)肺がん
(2)微生物による感染症(結核、マイコプラズマ肺炎など)
(3)アレルギーによるもの 
(4)間質性肺炎 
(5)肺気腫などがあります。
原因を調べるために、胸のレントゲン撮影、たんの検査、肺機能検査をします。マイコプラズマ肺炎、結核、間質性肺炎などはレントゲン写真で異常な影があることから分かります。小さな影はコンピューター断層写真(CT)を撮ることで診断します。結核は過去の病気と思われがちですが、抵抗力の落ちた高齢の方がかかりやすく、集団感染をも引き起こします。良い薬がありますので、きちんと服用すれば6カ月で治ります。

最近では、どのような原因が多いですか。

 最近多いのが、アレルギーによるせきです。熱がなく、レントゲンも正常なのに、せきが続く場合は、アレルギーによるせきが考えられます。日中よりも夜間に多く、せきで眠れないこともあります。これには、
(1)せきとぜんそく、
(2)アトピー咳嗽の2種類があります。
以前は、ぜんそくというとゼーゼーするのが特徴でしたが、最近はゼーゼーのない、せきだけの「せきぜんそく」が増えています。ゼーゼーするぜんそくは、肺機能検査をすると分かります。ゆっくり吸ったり吐いたりする肺活量は正常ですが、大きく吸って、一気に吐く量(1秒量)が低下します。しかし、せきぜんそくでは1秒量も正常のため、喘息かどうか決めるのが難しいです。せきぜんそくの場合、気管支拡張剤が効きます。一方、アトピー咳嗽は、ハウスダストや花粉などアレルゲンによってアレルギー性のせきが続くのですが、気管支拡張剤が効かず、抗アレルギー剤が効きます。この両者を区別するのは、せきせんそくでは3割がゼーゼーするぜんそくに移行するので、ぜんそくの治療を長く続ける必要があるからです。アトピー咳嗽では、アレルゲンを突き止め、発生する季節のみ、せき止めと抗アレルギー剤を服用するだけで良いです。少ないながら、最近増えてきた原因として、逆流性食道炎に伴うせきがあります。逆流性食道炎の薬がよく効きます。せきが続くと体力を消耗させます。原因を特定し、それに合った治療を受けましょう。

2005年7月20日水曜日

「矯正治療の開始適正時期」について

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 歯科医師 

矯正治療は開始の時期が重要だと聞きますが。

 まず、知っていただきたいのは、矯正治療の技術は日進月歩で進歩しており、歯や歯周組織が健康であれば、年齢にかかわりなく、ほとんどの症例に対して治療可能であるということです。成人であっても、矯正治療によって美しい歯並びにすることができます。また、上顎(あご)、下顎のずれ、骨格的偏位が前後左右に大きい場合には、外科手術を伴う矯正や、インプラント矯正を併用して、きれいな咬(か)み合わせにすることができます。すでに成人しており、矯正治療は無理だと考えている人も、一度専門医を訪ねて相談してみるといいでしょう。歯並びや咬み合わせが正しいと、顎関節症などの疾患になりづらいだけではなく、自分に自信を持つことができます。

では、適正時期とは何でしょうか。

 例えば、上顎前突の場合、一般的に上顎が出ているように思われがちですが、下顎が小さいことが原因であることが多いのです。その状態のまま放置して成人になり、顎の成長が望めなくなった場合、抜歯や外科矯正になる可能性が高くなります。しかし、最適正時期である9~11歳であれば、バイオネーターなどの機能的顎矯正装置と呼ばれるものを寝るときだけ使用するだけで、下顎骨の前方成長を促し、バランスの取れた横顔にすることができます。横にも拡大することができるので、抜歯する確率も下げることになります。
 すなわち、適正な時期に矯正治療を開始することで、骨格のコントロールを行い、上下顎をバランスの良い状態にし、抜歯率や外科矯正率を下げることができるのです。決して歯を抜く治療がいけない訳ではなく、適正な時期に始めることによって選択肢が広がると考えてください。
 また下顎前突の場合は、下顎がより前方に成長するのを抑制したり、小さめの上顎が前方に成長するのを促進したりします。この場合の最適正時期は6~9歳です。お子さんの歯並びが気になる場合は、前歯だけでは判断が難しいので、小学校入学前後に、一度左右のずれも含めて専門医に相談することをお勧めします。

2005年7月13日水曜日

「陥入爪(かんにゅうそう)」について

ゲスト/緑の森皮フ科クリニック 森 尚隆 医師

陥入爪とはどのような症状でしょうか。

 つめの端が丸く巻いて生え、皮膚の中にめり込んでいく状態のことです。多くは足の親指にでき、一般に「巻きづめ」と呼ばれます。原因は、合わない靴を履いている、歩き方に癖がある、スポーツをしている、立ち仕事が多いなどの外的刺激の場合もありますが、深づめによるものが特に多いです。歩いたときに床からの力で皮膚がつめの縁から持ち上がり、つめを押して巻きづめになります。症状は、赤み、腫れ、痛みの出現する炎症期から始まり、皮膚につめが陥入し膿(うみ)が貯留する化膿(かのう)期へと進みます。さらに、つめの刺激に反応し、赤い肉が盛り上がってくる肉芽期となります。多くの患者さんは、痛みの原因であるつめを深く切って、痛みを和らげようとします。この行為が症状を悪化させることになります。深づめすること自体が、皮膚を傷つけます。つめの形状は、側縁で固定されることにより保たれているため、そこが切られて遊離した状態が続くと、つめの変形が進行します。また、つめを切った外側に、つめの一部がトゲ状に埋没されている場合が多く、それが刺激の原因になります。陥入爪はつめの根元の段階で既に巻いています。先端だけを切り取ってもまた下から巻いたつめが次々と生えてくるので、つめの形状をすっかり治してしまわない限り、炎症や化膿を繰り返してしまいます。

治療法と予防を教えてください。

 治療法は、つめを一部切除する、つめの根本を切除する、超弾性ワイヤーや形状記憶合金プレートなどの新素材を用いて、つめを徐々に良い形へと矯正する方法などがあります。また化膿した場合は、抗生物質などで炎症を抑えます。盛り上がった肉芽は硝酸銀などで切除し、圧迫固定して治療します。重症のものは炭酸ガスレーザーで切除します。
 予防としては、つめは深づめせずに両端の角を四角くします。端を丸く切るとつめが食い込みやすくなります。つめを内側に押しつける幅の狭い靴は避け、足先の横方向に余裕のあるデザイン、サイズを選ぶようにしてください。

2005年7月6日水曜日

「前回帝王切開後の経膣分娩(ぶんべん)」について

ゲスト/医療法人社団 産科婦人科 はしもとクリニック 桑原 道弥 医師 

前回の分娩は帝王切開で、今回は経膣分娩というのは可能ですか

 帝王切開をしたときの原因が今はなく、今回の妊娠に関して経膣分娩をすることに関して問題点がなければ、一般的には60~80%で経膣分娩ができるといわれています。帝王切開を受けた方が次回以降の分娩で、経膣分娩をする際に、最も問題となるのは子宮破裂です。子宮破裂はおよそ1%の確率で起こるといわれており、その発生は突発的です。ひとたび起これば、赤ちゃんが死亡する可能性はかなり高く、たとえ助かったとしても高率で脳性まひや精神発育遅滞が起こります。帝王切開後の経膣分娩における分娩前後の赤ちゃんの死亡率は、予定帝王切開をした場合の10倍以上になるといわれています。また、子宮破裂は母体死亡の原因となることもあるので、慎重に考えなくてはなりません。
 今から十数年前、アメリカでは帝王切開の率がかなり高くなり、医療費を抑えることを目的に帝王切開後の経膣分娩が推奨されるようになりました。日本でも追随して経膣分娩が推奨されるようになりましたが、その後、アメリカで追跡調査をしたところ、子宮破裂に関連する有害事象のために総医療費が逆に高くなったため、現在では帝王切開後の経膣分娩を逆に制限する方向になってきています。

帝王切開には危険はないのでしょうか。

 まったく危険がないわけではありません。特に最近は、帝王切開後に血栓症による重篤な合併症が多いといわれており、その予防に努める必要があります。また、麻酔に関連するトラブルもあります。しかし、赤ちゃんに関しては帝王切開の方が、経膣分娩よりも安全です。それでも、帝王切開後に経膣分娩をしたいということであれば、かかりつけの病院、担当の医師とよく相談してください。
 アメリカでは、産科医師、麻酔科医師、小児科医師など十分なスタッフと設備があり、24時間緊急帝王切開が迅速に行える施設でということになっています。子宮破裂の発生から17分以内に帝王切開で赤ちゃんを娩出した例では、赤ちゃんに後遺症はなかったという報告がありますので、そのような対応ができる施設かどうかが重要です。

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