2002年8月28日水曜日

「幼児期からの虫歯予防」について

ゲスト/つちだ矯正歯科クリニック 土田康人 歯科医師

幼児期からの虫歯予 防は、どのような点に気をつければいいでしょうか。

 「8020運動」という言葉を聞いたことがあると思い ますが、自分の歯を80歳まで最低20本は残そうという運動です。そのためには、幼児 期からの歯を大切にする習慣が大切です。幼児期の歯を守るのは親の役目です。歯磨 きの徹底は虫歯予防の第一歩ですが、幼児の場合は自分で磨いても限界があります。 磨き残しが無いか必ず確認し、仕上げ磨きをしてください。毎食後に磨くのは習慣と して大切ですが、しっかり隅々まで磨くのは1日に1度でいいでしょう。寝る前に、 5分以上磨くようにしましょう。歯を磨くときのポイントは、歯と歯茎の間、奥歯の 凹凸がある部分など、虫歯になりやすい個所を集中的にあまり力を入れず、小刻みに ブラッシングすることです。歯磨き粉は、子どもが嫌がるのであれば使用しなくても かまいませんが、フッ素入りの歯磨き粉は使い続けることによって虫歯予防に効果が あるといわれています。

食生活など歯磨き以 外の注意点はありますか。

 おやつは時間を決めて与 えてください。ダラダラと食べさせるのが一番歯に良くありません。特に上に兄、姉 がいる場合、甘い菓子を食べるなど悪習慣がついてしまいがちです。おやつも、軟ら かいものより、繊維質のものや噛(か)み応えのあるものが、歯の健康には良いで す。飲み物はお茶や水を基本に。ジュースや炭酸水はかなりの糖分が入っています。 スポーツ飲料も同様です。最近、キシリトール入りのガムやタブレットなどの菓子が 出ていますが、キシリトールは天然素材の甘味料で虫歯菌によって発酵せず、虫歯の もとになる酸が発生しません。上手に利用すると、虫歯予防に役立ちます。また、3 カ月から半年に1度は歯科医で定期検診を受けると安心です。その際、フッ素塗布 や、虫歯になりやすい溝を埋めるシーラント(予防填塞=てんそく)、歯列矯正など 気になることは積極的に相談しましょう。気軽に通える専門医を見つけ、上手に付き 合うことも歯の健康を守る上での大切な要素です。

2002年8月21日水曜日

「更年期障害と骨粗しょう症」について

ゲスト/草薙レディースクリニック 草薙鉄也 院長

更年期障害と骨粗しょう症はなぜ女性に多いのですか。

 まず更年期障害についてですが、初潮を迎えたとき、卵巣には40万個の卵子があります。しかしその後の排卵で50歳までに卵子は無くなり、それまで卵巣から分泌されていた女性ホルモン(エストロゲン)は突然失われます。そうすると脳の視床下部にあるエストロゲン分泌の指令塔(性中枢)からエストロゲンをもっと分泌するように、過剰な刺激を卵巣に与え性中枢が乱れます。実は自律神経中枢は性中枢の隣りにあるため、性中枢の乱れは自律神経の乱れを同時に起こします。更年期障害はホットフラッシュ、発汗、肩こり、腰痛、関節痛、疲れやすいなどのエストロゲン不足症状と、動悸、めまい、イライラ、不眠、うつ状態などの自律神経失調症状の2つの症状が混じり合ったかたちで現れます。女性は男性と違って女性ホルモンが突然失われるため更年期障害が出やすいのです。次に骨粗しょう症ですが、女性は閉経後、ホルモンが不足することによりカルシウムの吸収率が半減し、骨がもろくなる骨粗しょう症になりやすくなります。現在患者数は約780万人、その75%は女性です。閉経後20年間で脊椎(せきつい)骨や大腿骨頚部(股関節)の骨量が20%減少し、特に閉経直後の10年間にその7割が失われます。また骨折後5年以内に50%の方が死亡しています。

更年期障害と骨粗しょう症は、どのように対応したらよいですか。

 更年期障害、特に自律神経失調症状に対しては、漢方や自律神経安定剤が有効ですが、もともとの原因である性中枢の乱れに対しては、ホルモン補充療法が有効です。また、女性ホルモンで骨量減少を予防できますから、更年期以降の女性にとって骨粗しょう症予防にこの療法は有用といえます。最近ホルモン補充療法の副作用について取り上げられていますが、このような報告は以前からあり、もともと血栓症や乳ガンが多い人種、肥満や喫煙習慣などがある女性にはホルモン補充療法は適さないという報告です。適応基準を守れば問題無いので、専門医に相談し、自分に合う治療法を見つけてください。

2002年8月14日水曜日

「結核」について

ゲスト/大道内科・呼吸器科クリニック 大道光秀 医師

結核について教えて いただきたいのですが。

 まず認識していただきたいのは、結核は決して過去 の病気ではなく、今でも世界中で毎年800万人の患者と300万人の死者を出しており、 特に開発途上国では成人における感染症死亡の第1位であり続け、また免疫力を低下 させるエイズの蔓(まん)延とともに、今後も増加が予想される病気です。また先進 国、特に日本でも近年罹患(りかん)率が増えている疾病であります。日本では昭和 26年当時、患者数60万人の国民病であり、死亡者数10万人近くを数える「死の病」と して恐れられていました。しかし、医学が進歩し生活環境も改善され、次第にその数 は減り、昭和40年代に開発された特効薬によって患者数は激減し、一般の人のみなら ず、医療関係者まで「結核は過去の病」と思い込むまでになりました。ところが、平 成9年から新規患者数が増え始め、以降毎年上昇しています。現在、毎年4万人余り の新規患者が発生し、3千人近くの人が結核によって亡くなっています。患者数がこ こにきて増えた理由の1つには高齢者の発症が多いことです。結核が蔓延していた時 代に結核菌に感染しながら、発病せずに免疫を持っていた人が、年を取り免疫力や体 力が衰え発症するためです。発症した人が、結核と気づくのが遅れたため、周囲の人 に感染させるということも多いのです。また、ホームレスなど劣悪な環境に身を置「ている人が多い地域では極端に罹患率が高くなっています。これは診察を受けなか チたり、治療を途中でやめてしまう人が多いためです。さらに不摂生な生活や偏った 食生活で栄養状態が悪くなっている若者にも患者が増えています。活動的な年代であ るため、接客などを通して多数の人に感染させている場合があります。一方、結核菌 に全く免疫力を持たない若年者が、診断の遅れのため結核菌を排菌している人から感 染する集団発症も最近増えています。

結核にかかったら、 どうすれば良いのですか。

 結核の初期症状は風邪と 似ています。せきやたんが出る、体がだるい、微熱が続くなどです。せきが1カ月以 上続く場合は、医療機関を受診してください。医療従事者でも結核の認識が薄いとい うのが実情なので、できれば呼吸器の専門医を訪ねてください。結核は、早くに発見 し、治療さえきちんと受ければ必ず治る病気です。長患いという印象がありますが、 現在では3,4種類の薬を6~9カ月服用することで短期間に治すことができます。排菌 が無ければ通院で治すこともできます。しかし治療を途中で中断すると、耐性菌が出 現し治療が困難になりますし、死亡することもあります。また、治療に時間を要する ことから、非常に進行した状態では薬の効果が出る前に死亡することもあります。や はり早期診断、早期治療が大事です。

2002年8月7日水曜日

「助産院」について

ゲスト/あいの里助産院 嶋本幸子 助産師

助産院での出産につ いて教えてください

 助産院というのは、嘱託(しょくたく)医と連携し ながら助産師が運営している施設です。病院ではどんな分娩(ぶんべん)でも扱いま すが、助産院では正常の分娩のみを扱っています。ですから、正常な妊娠経過をたど って正常な分娩ができるように、保健指導にとても力を入れています。そして、異常 の状態を予測して万全の体制を整えながら、産婦さんが自分の「産み出す力」を最大 限に発揮できるように自然分娩のお手伝いをします。嘱託の産婦人科の先生には、妊 娠期間中に2~3回の診察と血液検査など必要な検査をそのときに依頼している助産院 が多いと思います。また妊娠中、分娩中に何か正常分娩できないような問題が起こっ たとき、助産師は救命のための緊急処置をして、速やかに嘱託医の病院施設に搬送し ます。助産院には、入院設備を持って入院分娩を取り扱うところと、自宅分娩を出張 で行っているところがあります。どちらも妊娠初期からの検診や保健指導を行ってい ますし、お産の後の母乳、育児、避妊のことなどの相談も受けられます。家族立ち会 い、夫の臍帯(さいたい)切断、個室の入院室や家族同伴入院できるところなど各助 産院で違いがあります。札幌には5軒の助産院があり、そのうち3軒で入院できます。

助産院で出産する魅 力とはなんでしょう。

 妊娠の初期から、妊婦と 助産師の関係を築き、お互いによく知り合った上で出産に臨むことができるという安 心感が大きいと思います。ゆっくりお話しする時間を十分にとれるのも助産院の特徴 の1つです。助産院はこぢんまりとしていて、家庭的な雰囲気なので「実家に帰って 産んだみたい」という方もいます。いろいろな事情に合わせて、ある程度融通が利く のも助産院ならではでしょう。「上の子の預け先が無い」「実家の事情で世話になれ ない」「ずっと家族と一緒にいたい」など困っていること、ご希望のある方は各助産 院に相談してみてください。

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