2021年4月14日水曜日

整形外科手術に果たす麻酔科の役割

 ゲスト/医療法人知仁会 八木整形外科病院 松井 晃紀 医師


整形外科手術の麻酔について教えてください。

 麻酔の話を聞く機会はとても少なく、ご自身やご家族が「全身麻酔を伴う手術が必要」と診断された時などは、相当な不安を持たれることと思います。

 上肢、下肢、体幹部、頸部、頭部など、整形外科ではさまざまな部位のけがや病気で麻酔手術が必要になる場合があります。麻酔の方法は、意識がなく完全に眠った状態にする全身麻酔(点滴から眠くなる薬を入れるやり方が主流です)と、意識を保ったままの局所麻酔(硬膜外麻酔、腰椎麻酔、神経ブロックなど)に分けられ、患者さんの全身状態や手術の内容に基づいて、使い分けたり組み合わせたりします。

 麻酔科医の仕事は、手術中に患者さんを無痛の状態にしたり、眠らせたりするだけではありません。手術の前には患者さんのカルテや検査データを読み込むだけではなく、実際に患者さんとお会いし、麻酔を受けた経験、持病やアレルギーの有無、使っている薬などを聞き取りながら、麻酔や手術について正しい知識を持ってもらえるよう、不安感や心理的影響を少しでも軽くできるよう、患者さんが納得いくまで説明、話し合いを行います。その上で、一人ひとりの患者さんに最適な麻酔法を考え、予定されている手術のプランに無理がないかチェックします。

 術中も、麻酔科医は患者さんが手術室を退室するまでそばを離れません。呼吸、循環、体液、代謝、体温などの生体情報をモニターし、それらの情報をもとに患者さんの状況を判断し、薬剤投与や人工呼吸、輸液・輸血などの医療行為を行います。適切な麻酔管理によって、患者さんを安定した全身状態にコントロールすることを目指します。また、多くの患者さんが心配されるのは術後の痛みです。各種麻酔法を組み合わせ、術後の痛みを可能な限り和らげ、回復過程を少しでも快適に過ごすことができるようお手伝いすることも麻酔科医の重要な責務です。

 「副作用、合併症が怖い。本当に大丈夫なのか」という質問はよく聞かれます。麻酔技術の進歩、新しい麻酔薬や麻酔機器の開発などにより、麻酔が原因の副作用や合併症が起こるリスクは非常に低くなっています。しかし、予期せぬことが起こる可能性はゼロではありません。術前のリスク判定や麻酔計画を重視して副作用や合併症を予防し、万が一合併症が発生した場合でも、迅速に最善の対応をとれるようにすることが重要です。