2020年12月16日水曜日

TCH(歯列接触癖)

 ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎 院長


歯医者さんでTCHの疑いがあると言われましたが、どういうことなのでしょうか。

 上の歯と下の歯は、しゃべったり食べたりしていない時は離れているのが普通ですが、中にはくっついたままの人もいます。それが「TCH=Tooth Contacting Habit(歯列接触癖)」と呼ばれるクセで、顎(がく)関節症や歯周病などさまざまな病気を招く恐れがあることが分かってきました。

 上下の歯は、食べ物をかんだり会話をしたりする時に瞬間的に触れ合うだけで、平均的な接触時間は1日20分程度です。あごの関節や筋肉にとっては、前歯で1〜2ミリ、奥歯で0.5〜1ミリの隙間がある状態が正常なのです。TCHがあると、気付かないうちに口の周囲の筋肉が緊張を続け、関節に力が加わり続けるため、歯や歯肉にも影響が出ます。具体的には、歯周病の悪化、歯が削れる、詰めものや差し歯が取れる・割れる、歯がしみる・痛むなどの症状を引き起こします。長期化すると、あごの痛みや違和感(顎関節症)、頭痛、肩こりなど、全身にさまざまな問題が起きるケースもみられます。

 緊張状態が続き、交感神経が長時間働き過ぎるとTCHになりやすいといわれています。特に仕事でパソコンを使う人の発症率が高く、精密作業する人やスマホを長く使う人もリスクが大きいとされます。

診断や治療について教えてください。

 歯科医院で歯や歯肉、頬、舌などの状態を診て、問診と合わせて総合的に診断します。自身でTCHを調べる方法としては、まず姿勢を正しくして前を向き、唇に力を入れずに軽く閉じます。次に、上下の歯が触れないように、唇を軽く離します。この時、口元にこわばりなどの違和感があるようであれば、TCHの疑いがあります。また5分以上、上下の歯が接触していない状態はむずかしいと思われる人もTCHの可能性が高いです。

 治療はかかりつけ医で指導をうけるのがベストですが、自分でできる改善法は、次のステップがあります。

①歯を軽く接触させて、数秒後に離します。頬の動きに注意して、歯をつけると筋肉が働き、離すと筋肉がゆるむことを確かめましょう。

②デスクまわりに、10枚以上の張り紙をします。「力をぬく」「リラックス」など脱力を思い出す言葉や絵を書き、目にはいるごとに1回脱力してください。繰り返すうちに、歯が触れると気づくようになります。

③歯が触れたと感じたら、脱力します。段々と、気づくまでの時間が短くなり、最終的に気づく前に、身体が勝手に反応するようになります。

このステップを3ヶ月行うとほとんど改善すると言われています。

2020年12月9日水曜日

矯正歯科治療のメリットとリスク

 ゲスト/E-line矯正歯科 上野 拓郎 院長


矯正歯科治療のメリットとリスクについて教えてください。

 矯正歯科治療の目的は、歯並び、かみ合わせの改善にあります。歯並びが悪いと、歯磨きが隅々までできず、虫歯や歯周病の原因になります。しっかりとかんで食べられないので、胃腸など消化気管にも大きな負担がかかります。また、審美面で劣等感を抱くことも考えられます。実際に正しい歯並び、かみ合わせになると、口元を隠さずに笑顔を見せるようになり、表情が驚くほど明るくなります。さらに、正しいかみ合わせでよくかむということは、脳の発達や認知症の予防にも良い影響を及ぼすという研究結果もあります。かみ合わせを直し、歯並びをきれいに整える矯正歯科治療が、機能面、健康面、審美面で、いかに重要であるかが、日本でも広く認知されてきたように思います。矯正歯科治療に恥ずかしさや後ろめたさを感じることなく、堂々と矯正器具を装着する人が増えているのはうれしい限りです。

 一方で、ほかの疾患の治療と同様に、矯正歯科治療にもリスクが生じる可能性もあります。より良い結果を導くための一時的なリスクです。例えば、矯正装置によって歯を動かす際の痛みや不快感です。これらは数日から1週間でなくなることがほとんどです。治療のどの段階で、どのような痛みや不快感があるのか、そして、どのように対処すればいいのかを事前に理解しておけば、過度に怖がる必要はありません。矯正装置があることで歯磨きがしにくくなるため、むし歯や歯周病になりやすいというのもリスクの一つですが、これも徹底したブラッシング指導などで患者さんのセルフケア意識を高めながら、プロによる定期的なチェックやクリーニングなどを組み合わせることで回避できるケースが多いです。

 歯科矯正治療は命にかかわる、緊急性の高い治療ではありませんが、時間もお金もそれなりにかかりますし、治療するご本人の強い意志、努力と根気が求められることも多いです。通院日を守る、歯みがきをきちんと行うなど、患者さんと主治医が二人三脚で進むことで、初めてゴールにたどり着けるのだということを、ぜひ覚えておいてほしいと思います。

 大変な治療を乗り切った後、その分得られる価値は大きく、歯並びやかみ合わせが良くなって人生観が変わり、元気になっていく方を私は何人も見ています。苦労や努力した時間が、残りの多くの人生の時間を輝かせるのが矯正歯科治療です。

2020年12月2日水曜日

COPD(慢性閉塞性肺疾患)

 ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 北田 順也 副院長


COPDとはどのような病気ですか。

 COPDは、日本語で「慢性閉塞性肺疾患」と訳されます。

 タバコの煙を主とする有害物質を長期に吸入することによって生じる肺疾患のことです。徐々に呼吸機能が低下していき、病状が悪化すると身体を動かした時に息切れを起こすなど、日常生活に支障を来します。肺炎や心不全などの合併症を引き起こすことも多く、重症化すると命にかかわるケースもある怖い病気です。

 COPDの症状は多彩です。40歳以上で喫煙歴のある方(ご家族がたばこを吸っている場合も可能性があります)、せきやたんが出たり、ゼーゼーしたりすることがある方、階段や坂道をのぼる時や湯船に浸かった時、雪かきの作業時などに息切れを起こす方、かぜ症状を繰り返したり、治るまでに時間がかかる方などは、COPDの発症が疑われます。

診断と治療について教えてください。

 呼吸器内科では、胸部レントゲン写真・CT写真などを用いてCOPDを正確に診断することができます。また、気道の通りやすさなどを客観的に調べる呼吸機能検査では、自分の呼吸の機能が同性・同年代と比べて優れているのか劣っているのかを「肺年齢」という指標で示すことができます。

 COPDの治療の目標はせき、たん、息切れなどの症状やそれらによって損なわれた生活の質を改善と、徐々に低下する運動能力の維持、向上です。そのほか、COPDを増悪させる因子の予防(禁煙、ワクチン接種、手洗い、口腔ケアなどを行うこと)が重要になります。

 治療薬は、狭くなった気管支を拡げて呼吸を楽にする「気管支拡張薬」が用いられます。気管支や肺に直接薬が届くよう吸入薬を主に使います。 近年、新薬が続々と登場し治療は数年前のものとは大きく様変わりしています。薬物療法と運動療法(筋肉トレーニングやストレッチなど)、栄養療法などを組み合わせることで、病気の進行抑制や生命予後の改善が期待できます。また、糖尿病や高血圧、脂質異常症、心血管系疾患、骨粗しょう症などを併発しているケースも多いので、これらに対する治療も重要です。

 COPDは軽症例から重症例までは薬物治療が可能ですが、超重症例になると薬中心の治療では改善が難しく、人工呼吸器を使用した治療などを要することもあります。そのため、少しでも早い段階で医療機関を受診し、適切な治療を開始することが何よりも重要です。