2020年10月28日水曜日

マスクによる肌トラブル(ニキビ)の原因と対策

 ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長

マスクによる肌トラブルを訴える患者が急増していると聞きますが。

 マスクを長時間着用する機会が増える中、「マスクのところにニキビができて困っている」という相談が特に増えています。

 マスクの長時間着用は少なからず肌に負担をかけます。不織布は意外と硬いので、肌に摩擦を起こしやすく、その刺激は肌のバリア機能を低下させ、肌の乾燥やニキビ、湿疹の原因になります。また、マスクの内側は呼気によって湿度が高くなります。マスクの中が蒸れると、雑菌が繁殖しやすく、口まわりのニキビの発症・悪化の原因になります。さらに、口元が蒸れた状態でマスクを外すと、急激に肌の水分が蒸発し、一気に肌の乾燥が進みます。乾燥してカサカサした肌は、目に見えない細かな傷がたくさん付いた肌ともいえます。これらの傷からいろいろな刺激物が入り込んでかゆみを起こし、ニキビをはじめさまざまな肌トラブルの原因となります。

 今後も外出時には常にマスク着用が求められる状況が続くと予想されます。加えて、大気が乾燥するこれからの季節は肌の乾燥も進みがちです。適切にケアをしながら、しっかり感染対策を行っていきましょう。

ニキビの治療と対策について教えてください。

 ニキビには「こうすれば必ず良くなる」という治療法はなく、その人に合った方法を見つけ、それを継続することが大切です。外用剤の選択、抗生物質やビタミン剤の内服など、原因や症状によって治療に違いが出ます。またニキビが出やすい体質を改善する目的で、漢方薬が効果的なことが多くあります。

 また、普段のスキンケアと正しい洗顔方法がニキビの予防と改善に重要です。マスクで口元に汗をかいた時はこまめに拭き取る習慣を付け、洗顔やクレンジング時にはできるだけ刺激を避けるなど、いつも以上にやさしいスキンケアを心掛けてください。洗顔のコツは「洗いすぎない」と「擦らない」。頻繁に洗うとバリアーを担う皮脂が取れ、それを補おうと皮脂が過剰に分泌されます。こすり洗いは、細胞と細胞の間にある潤い成分を流失させてしまいます。洗顔後は化粧水で水分を補い、乳液やクリームでしっかりと保湿ケアを行って、肌のバリア機能を守ってください。マスクを付ける前に保湿剤を使うのも有効です。

 コロナ禍のさまざま不安や長い自粛生活の疲れが肌に出てしまう人も多いです。バランスの取れた食事や十分な睡眠でストレスを減らすことも大事です。

2020年10月21日水曜日

アスリートの股関節周辺の痛み(グロインペイン症候群)

 ゲスト/医療法人社団 二樹会 足立外科・整形外科クリニック 加谷 光規 副院長


アスリートによくみられる股関節周辺の痛みについて教えてください。

 肘や膝、踵など、スポーツにより痛めやすい部位はいくつかありますが、股関節周辺もその一つです。

 股関節周辺の痛みは、グロインペイン症候群とも呼ばれ、特にサッカー界でよく知られる症例です。ボールを蹴るときに脚の付け根の前側が痛くなる、ピッチで走っていると太ももの内側や肛門のまわりがギューッと痛くなるのが典型的な症状です。股関節の前面の大腿直筋あるいは内転筋という筋肉の股関節側の付着部の損傷が、痛みの主な原因だと考えられています。

 病態がさまざまで、診断が難しいケースも多く、なかなか治らない痛みに悩まされる方も少なくありません。これは、痛みの原因が、痛い箇所そのものにあるのではなく、筋肉や関節の柔軟性の低下や不自然な体の動かし方、使い方などによって、身体全体のバランスが崩れて、痛みと機能障害の悪循環が生じ、症状が慢性化してしまっていると考えられます。


股関節周辺の痛みに対する治療について教えてください。

 痛みがある箇所だけを治療するのではなく、全身を診て、正しい姿勢を身に付けたり、股関節付近への負担を減らしたりするなど、痛みの原因となっている根本の部分を治していく必要があります。

 注射療法とリハビリを組み合わせることで、完全に痛みが取れるケースも少なくありません。リハビリでは、筋のマッサージや筋力訓練、上肢から体幹、下肢を効果的に連動させる運動などを行います。患者さんの体の特性・弱点を見極め、それぞれに合った個別の運動メニューを提示し、パフォーマンスをレベルアップしていくためのケアやけがの予防法もアドバイスします。

 病状によっては手術を行う場合もあります。新しい術式として注目されているのが「関節外クリーニング手術」です。1センチ程度の創を2〜3カ所作り、そこから内視鏡を挿入して筋肉と筋肉の癒着や炎症などを取り除き、股関節の痛みを改善する治療法です。入院期間は3日程度で済み、おおむね10日〜2週間で社会復帰が可能です。

 早期に発見・治療できれば、それだけ早く、簡単な治療で症状を治すことができます。また、スポーツを続けながらの治療も、早期であればあるほど可能なケースが多くなります。

2020年10月14日水曜日

睡眠について

 ゲスト/さっぽろ香雪病院 小澤 剛久 診療部長

睡眠の基礎知識について教えてください。

 睡眠には心身の疲労を回復する働きがあるため、睡眠が量的に不足したり質的に悪化したりすると健康上の問題が発生します。十分な深い睡眠が獲得でき、中途覚醒の回数が少ない睡眠が「質の良い睡眠」です。一方、「質の悪い睡眠」は心疾患や脳血管疾患、うつ病などの精神疾患の原因にもなります。また、重大なヒューマンエラー(人為的な失敗、事故など)につながる可能性もあります。このため、適切な睡眠の量と質を確保することが非常に大切です。

 睡眠には、体が休む睡眠(レム睡眠)と脳が休む睡眠(ノンレム睡眠)の2種類があります。この2種類が1セットで、約90分周期で出現し、一晩で4〜5セット繰り返されます。

 レム睡眠は、前日の記憶を定着する、ストレス処理をするなどの役割があり、朝方になると持続時間が長くなります。ノンレム睡眠は、浅い睡眠のステージ1、2 と深い睡眠のステージ3があります。ステージ3の睡眠は、成長ホルモンの分泌や免疫機能のバランスに関与し、運動習慣がある人はこの睡眠時間が長くなる傾向がみられます。正常な睡眠では、入眠後にステージ3が出現し、睡眠の後半になるとステージ1、2の割合が増えます。したがって、就寝後まもなくしてステージ3の深いノンレム睡眠を得ることで、脳が休息し、前日の嫌な記憶が消され、心の疲れも取り除くことができます。また、3〜4時間の短時間睡眠では、朝方の長いレム睡眠を獲得できないので、記憶の定着が難しくなります。

 成長ホルモンは、成長期以降も体の代謝を調節し、これが低下すると老化が進むとされます。成長ホルモンが最も多く分泌されるのは深夜2時ごろで、この時間帯にノンレム睡眠に入っていれば、疲労が取れやすく、また体調の維持向上に効果が見込めます。

質の良い睡眠をとるにはどうすればいいですか。

 脳から分泌され、入眠覚醒を制御するホルモンである「メラトニン」は、目の網膜から入る光情報が消えることで合成が始まります。就寝前のスマートフォンからの光(特にブルーライト)は、メラトニンの分泌を抑制し、睡眠の質の低下を招くため避けた方がいいでしょう。

 質の良い睡眠を得るには、①激しすぎない適度な運動習慣 ②就寝前の飲酒、喫煙、カフェイン摂取を控えること(アルコールはレム睡眠時間やノンレム睡眠のステージ3の時間を減らす悪影響を及ぼします。また、たばこに含まれるニコチンは覚醒作用が約1時間、カフェインは覚醒作用が約3〜5時間続きます) ③適切な睡眠環境づくり ④お昼過ぎ(午後)の短い仮眠(30分以内) ⑤寝床で長く過ごさない習慣、などを心掛けてください。

2020年10月7日水曜日

脳神経外科で診るめまい

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長

めまいについて教えてください。

 脳神経外科の外来では、めまいを訴えて受診される患者さんが多くいらっしゃいます。初めて経験するめまいは、患者さんにとっては大変恐ろしく感じられるものです。「天井がぐるぐる回った」「後ろに倒れそうになった」「立ち上がったら目の前が暗くなった」「地震かと思った」といった症状がみられますが、多様な病気の原因が考えられます。

 頻度が高いものは、内耳障害によるめまいですが、脳の障害によって起こる“怖いめまい”との鑑別が重要です。症状の強さだけで判断することは禁物で、めまいとともに言葉のもつれや手足の脱力・しびれが出ているようであれば、脳の障害が疑われます。脳の障害によるめまいは極力早く診断し、治療に入る必要がありますが、その際にはMRIによる画像診断が有用です。

高齢者のめまいについて教えてください。

 高齢者は、加齢に伴う平衡感覚の衰えや血圧を調整する能力の衰えなどがあり、めまいを起こしやすいです。糖尿病や高血圧などの持病を抱えている人は、飲んでいる薬が多いため、その副作用などでめまいを起こすこともあります。もともと耳鳴りがあったり、以前から難聴があったりするケースも少なくありません。このような状況の下にめまいが起こっても、必ずしも内耳に障害があるとはいえず、高齢者のめまいは原因を明らかにできない場合もあります。

 「起立性低血圧」とは、座った状態から立ち上がる時に血圧が急激に低下する病態をいいます。若い人の場合、顔が青ざめ冷や汗が出るなどし、失神してしまうケースもあります。高齢者では若い人のような激しい反応は起こりにくいとされていますが、一方で、加齢のため血圧を一定に保つ自律神経の働きが衰えているため、血圧が少し下がっただけでもめまいを起こしやすく、やはり立ち上がる際には注意が必要です。

 暑い時期は汗をかきやすいため、脱水からめまいを起こすこともあります。特に高齢者はのどの渇きを感じにくいので、脱水が生じやすいです。夜間にトイレに行く回数を減らそうと水分補給を控えてしまうと脱水を起こしやすいので、入浴前後や就寝前にはコップ1杯の水を飲むようにしましょう。

 漢方薬がめまいの症状に有効なことも多いです。めまいの症状でお悩みの方は、ぜひ医療機関にご相談ください。