2020年9月23日水曜日

統合失調症

ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院 太田 健介 院長


統合失調症とはどのような病気ですか。

 統合失調症は、10代後半から30歳代までの時期に発病しやすい精神疾患です。発症頻度は100人に1人程で、決して珍しい病気ではありません。発病の原因は、まだ特定されていません。遺伝的、環境的要因の上に、強いストレスが掛かって発病すると考えられています。

 統合失調症は、病気によって症状が変化する傾向があります。大きく「陽性症状」と「陰性症状」に分けられます。陽性症状には、実際にないものが見えたり聞こえたりする幻覚・幻聴や、悪口を言われている、見張られているなどと感じる妄想のほか、滅裂な会話や行動などがあります。一方、陰性症状は、意欲が湧かないなど、うつ状態のように見える症状、不登校・出社拒否などの引きこもり傾向、集中力・判断力の低下といった認知機能の障害などがあります。

 本人が病気を自覚できずに発見が遅れがちであり、また、病識がなく、受診や治療を拒むことも少なくありません。ご家族など周囲の方が病気の兆候に気付いたら相談し受診につなげることが大事です。

治療について教えてください。

 現在では治療薬の有効性が増し、病気の研究が進み、適切な治療とリハビリを行うことによって多くの患者さんが自立した社会生活に復帰しています。

 治療は薬物療法を中心に、症状の程度や回復に応じて心理教育や支持的精神療法、認知行動療法、リハビリテーション(作業療法、デイケア、生活技能訓練など)など多様な療法を組み合わせて行います。病状が安定するまでにはある程度の時間を必要としますが、治療を続けることが大切です。

 多くの病気と同様に、統合失調症も発病から治療を開始するまでの期間が短いほど治療効果が高くなり、社会復帰後の状態も良好であることが分かっています。早期発見、早期治療が大切です。

 

2020年9月16日水曜日

COPD(慢性閉塞性肺疾患)

ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 北田 順也 副院長

COPDとはどのような病気ですか。

 COPDは、日本語で「慢性閉塞性肺疾患」と訳されます。

 タバコの煙を主とする有害物質を長期に吸入することによって生じる肺疾患のことです。徐々に呼吸機能が低下していき、病状が悪化すると身体を動かした時に息切れを起こすなど、日常生活に支障を来します。肺炎や心不全などの合併症を引き起こすことも多く、重症化すると命にかかわるケースもある怖い病気です。

 COPDの症状は多彩です。40歳以上で喫煙歴のある方(ご家族がたばこを吸っている場合も可能性があります)、せきやたんが出たり、ゼーゼーしたりすることがある方、階段や坂道をのぼる時や湯船に浸かった時、雪かきの作業時などに息切れを起こす方、かぜ症状を繰り返したり、治るまでに時間がかかる方などは、COPDの発症が疑われます。

診断と治療について教えてください。

 呼吸器内科では、胸部レントゲン写真・CT写真などを用いてCOPDを正確に診断することができます。また、気道の通りやすさなどを客観的に調べる呼吸機能検査では、自分の呼吸の機能が同性・同年代と比べて優れているのか劣っているのかを「肺年齢」という指標で示すことができます。

 COPDの治療の目標はせき、たん、息切れなどの症状やそれらによって損なわれた生活の質を改善と、徐々に低下する運動能力の維持、向上です。そのほか、COPDを増悪させる因子の予防(禁煙、ワクチン接種、手洗い、口腔ケアなどを行うこと)が重要になります。

 治療薬は、狭くなった気管支を拡げて呼吸を楽にする「気管支拡張薬」が用いられます。気管支や肺に直接薬が届くよう吸入薬を主に使います。 近年、新薬が続々と登場し治療は数年前のものとは大きく様変わりしています。薬物療法と運動療法(筋肉トレーニングやストレッチなど)、栄養療法などを組み合わせることで、病気の進行抑制や生命予後の改善が期待できます。また、糖尿病や高血圧、脂質異常症、心血管系疾患、骨粗しょう症などを併発しているケースも多いので、これらに対する治療も重要です。

 COPDは軽症例から重症例までは薬物治療が可能ですが、超重症例になると薬中心の治療では改善が難しく、人工呼吸器を使用した治療などを要することもあります。そのため、少しでも早い段階で医療機関を受診し、適切な治療を開始することが何よりも重要です。

 

2020年9月9日水曜日

ランナーの股関節周辺の痛み(グロインペイン症候群とぬけぬけ病)

ゲスト/医療法人社団 二樹会 足立外科・整形外科クリニック 加谷 光規 副院長

ランナーによくみられる股関節周辺の痛みについて教えてください。

 ランニングブームが続いています。ランナー人口が増えている一方で、ランニングによるスポーツ障害が原因で走ることをやめる人も少なくありません。ひざやかかとの痛みもそうですが、股関節周辺の痛み・違和感に悩まされるランナーは多いです。一定の距離を走ると、脚の付け根や腹筋が痛くなってくる場合は「グロインペイン症候群」が疑われます。

 サッカー界でよく知られる症例ですが、ランナーにも多発します。股関節周囲の筋肉に負担のかかる走り方をしているため、それらの筋肉に疲労がたまって攣縮(れんしゅく)するのが主な原因かも知れません。

 もう一つ、走っているとおしりや太ももの裏側が痛くなったり、足に力が入らず真っ直ぐ走れなくなったりする症状がみられると、「ぬけぬけ病」の可能性があります。箱根駅伝で途中で走れなくなった選手がぬけぬけ病と指摘されるなど、病気の認知も進んできましたが、まだはっきりとした原因は明らかになっていません。これもグロインペイン症候群の一種で、梨状筋というおしりの筋肉が攣縮して神経の働きが障害されて起こるのではないかと考える向きもあります。

股関節周辺の痛みに対する治療について教えてください。

 病態がさまざまで、診断が難しいケースが多いですが、痛みがある箇所だけを治療するのではなく、全身を診て、正しい姿勢を身に付けたり、股関節付近への負担を減らしたりするなど、痛みの原因となっている根本の部分を治していく必要があります。

 注射療法とリハビリを組み合わせることで、完全に痛みが取れるケースも少なくありません。リハビリでは、筋のマッサージや筋力訓練、上肢から体幹、下肢を効果的に連動させる運動などを行います。

 早期に発見・治療できれば、それだけ早く、簡単な治療で症状を治すことができます。また、スポーツを続けながらの治療も、早期であればあるほど可能なケースが多くなります。画像診断をしても原因のはっきりしない股関節の痛みや、何らかの治療を受けているのに慢性的な痛みが取れず、悩んでいる方は一度診療することをおすすめ致します。

 

2020年9月2日水曜日

大腸がん検診

 ゲスト/福住内科クリニック 佐藤 康裕 院長

便潜血検査による大腸がん検診について教えてください。

 大腸がんの死亡者数は年間約5万人にも及びますが、大腸がん検診の受診率は伸び悩んでいます。連日報道される新型コロナウイルスによる、この半年間の死亡者数は約千人です(2020年7月現在)。感染症の予防対策と同様に、1人でも多くの人に大腸がん検診の大切さを理解していただきたいです。

 大腸がんは早期発見できれば「治るがん」ですが、早期がんはほぼ無症状で、「便が細くなる」「血便が出る」などの症状はある程度進行しないと出てきません。「毎日の排便に問題はないから大丈夫」とおっしゃる患者さんも多いのですが、無症状であっても検診は必要です。

 便潜血検査は、大腸がんによる目に見えない微量な出血を検出する検査で、札幌市では40歳以上を対象に年1回、指定医療機関において、市からの補助により400円で受けることができます。便潜血検査は、大腸がんの予防に有効な科学的根拠のある検診法です。陽性といわれたら、怖がらずに大腸内視鏡検査を受けてください。

大腸内視鏡検査について教えてください。

 便潜血検査だけでは、大腸がんを確実に拾い上げられません。早期がんでは50%以上、進行がんでも10%ほどは見落とされる可能性があります。大腸内視鏡検査は大腸がんに対して最も精度が高く、また病変が見つかった場合は同時に治療も可能な検査です。できれば40歳を過ぎたら「まずは一度」、それ以降は主治医と相談し、数年ごとに受けるのが望ましいです。大腸がんの既往があったり、血縁者に大腸がんが多かったり、喫煙習慣のある人、肥満気味の人などは大腸がんのリスクが高いので、定期的な検査で自分の大腸の具合をしっかりと調べておくことをお勧めします。大腸内視鏡検査は痛い、辛いというイメージがあると思いますが、医療機器や技術の進歩、鎮静剤を使用する検査方法の普及などにより、以前に比べ苦痛が大幅に軽減されていますので、安心して検査してもらいたいです。

 もしポリープが見つかれば、その表面の構造からがん化の危険度などが予測でき、切除しなくていいポリープ(非腫瘍性)か、切除が必要なポリープ(腺腫など)かを判断します。検査中、その場で切除することも可能ですが、ポリープが大きい場合などは、日をあらためて切除したり、入院が必要な場合もあります。