2020年6月24日水曜日

思春期のメンタルヘルス

ゲスト/さっぽろ香雪病院 江川 浩司 副院長

思春期のメンタルヘルスについて教えてください。
 思春期(おおむね10〜18歳の中高生)は、第二次性徴がみられ、心と体が子どもから大人へと変化・成長する時期です。一方で、心と身体のバランスが不安定になりやすく、さまざまな問題が生じやすい時期でもあります。
 情報過多の現代社会では、情報が複雑に操作され、何が正しく何が間違っているのか、大人でも判断が難しい状況です。情報の意味の伝わり方が必ずしも正確なものとはならない場合も多く、まだ心身ともに未熟な子どもにとっては誤解につながることも多いようです。迷いや不安、混乱や絶望など、そうした思いと常に向き合わざるを得ない子どもたちの精神的なストレスは相当なものです。爆発寸前までストレスを抱え込んでいるのに、うまく言葉にすることができなかったり、また、両親に心配を掛けてはいけないという思いから、なかなか自分の気持ちを伝えることが難しかったりします。

思春期の心の病気への対応について教えてください。
 思春期の問題行動としては、不登校が最も多く、引きこもりや自傷行為、自殺、性的非行などが挙げられます。一過性であることも多いのですが、その裏に精神疾患が隠れている場合もあります。近年、増加傾向にある不登校は、環境不適応などさまざまな要因で起こります。対人関係の困難、学習困難、いじめなどに起因したものや、発達障害を背景に持つものもみられます。解決、対応方法に一般論はありません。しかし、時間をかければ必ず改善、解決の糸口を見い出すことができます。
 心の病気は、脳の機能不全によって発生するものがほとんどです。つまり、誰にでも起こり得る、ごく普通の病気なのです。例えば、うつ病は風邪のようにありふれた病気であるという意味合いで、「心の風邪」という別名があるほどです。
 心の病気は治療が遅れるほどに、生活への障害が大きくなる傾向がある病気です。また思春期に始まった心の病気は、成人期まで続いたり、再発したりするケースが多いので、一層早期発見・早期治療が重要となります。
 子どもの日々の様子から、おかしな変化を感じられるようになったら、それは子どもが発している「SOS」の信号なのかもしれません。過剰に悲観的にならず、また自分たちだけで解決しようとせず、早めに専門医に相談することをお勧めします。

2020年6月17日水曜日

口呼吸と鼻呼吸

ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎 院長

口呼吸が健康に良くないと聞きましたが、どういうことなのでしょうか。
 近ごろ、お口をポカンと開けているお子さんや若者が増えています。そのほとんどは、口で呼吸をしている「口呼吸」の人です。
 ヒトは1日に約1万リットル分の空気を吸い、そのほとんどを吐き出しますが、本来、人間は構造上、鼻で呼吸をするようにできています。口呼吸は、スポーツをする時やカゼで鼻がつまったりした時、鼻呼吸を補う補助的な呼吸です。呼吸を鼻でするか、口でするか、同じようですが、その意味は大きく異なります。
 鼻呼吸では鼻の繊毛や粘液でウイルスや汚染物質の侵入を防ぎます。また、冷たく乾いた空気を吸い込んでも、鼻の中に張り巡らされた毛細血管によって、喉の奥では体温近くまで温度が上昇し、湿度も上がります。このため、乾燥に強く湿気に弱いウイルスの生存率が低下します。
 一方、口呼吸では、そうした鼻が持つ防御機能は発揮されません。口から息を吸うと、冷たい外気のまま肺に届き、肺の免疫力が低下し、肺にかかる負担が増えてウイルスに感染しやすくなります。また、口呼吸で口の中が乾燥すると口の中や喉の奥にいる細菌が増殖し、口臭や虫歯、歯周病に感染するリスクが高まります。最近の研究では、口呼吸を続けていると、歯や口元の変形、顔面や身体のゆがみ、ドライマウス・アイ、いびきなどさまざまな身体の不調の要因になりうるとされています。

診断や治療について教えてください。
 鼻呼吸がうまくできず、口呼吸に なっているかどうかは、お口を閉じた状態で、舌が低い位置にあり、上あごとの間に隙間があいていると口呼吸が疑われます。また鼻呼吸はゆっくりと深い呼吸ですが、口呼吸は、浅く早い呼吸となります。自分では気付かないうちに、口呼吸になっているケースも多いので、かかりつけ歯科医に一度相談してみるといいでしょう。症状に応じて、適切な検査、治療をおこなっていきます。
 ご家庭でも簡単にできるのが、口呼吸の改善につながる「あいうべー体操」です。「あー」「いー」「うー」「べー」と発声するつもりで口を大きく動かします。「うー」ではタコのように唇を突き出し、「ベー」では口から思い切り舌を出しましょう。1日30セットやれば、舌や口のまわりの筋肉を強化することができ、年齢を問わず、鼻呼吸となりカゼ の予防や免疫力の向上など、健康増進に繋がります。

2020年6月10日水曜日

新型コロナウイルス対策による肌トラブル

ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長

マスクの長時間着用による肌トラブルについて教えてください。
 新型コロナウイルスの感染拡大で、マスクを着用する機会が増える中、マスクが擦れて口元にかゆみや痛みを生じたり、マスクの内側が蒸れてニキビが悪化したりするなどの症状を訴える人が増えています。
 マスクの長時間着用は少なからず肌に負担をかけます。不織布は意外と硬いので、肌に摩擦を起こしやすく、その刺激は肌のバリア機能を低下させ、肌の乾燥や湿疹、皮膚炎の原因になります。また、マスクの内側は呼気によって湿度が高くなります。マスクの中が蒸れると、雑菌が繁殖しやすく、口まわりのニキビの発症・悪化の原因になります。
 対策としては、自宅など安心できる場所・場面では意識してマスクを外す時間を作りましょう。また、できるだけ摩擦を起こさないよう自分に合うサイズのマスク、肌あたりのやわらかいマスクを選ぶことが大切です。マスクの内側にガーゼなどのやわらかい布を挟むのも一手です。
 口まわりに汗をかいた時はこまめに拭き取る習慣を付け、洗顔やクレンジング時にはできるだけ刺激を避けるなど、いつも以上にやさしいスキンケアを心掛けましょう。清潔な肌を保ちながら、化粧水で水分を補い、乳液やクリームでしっかりと保湿ケアを行って、肌のバリア機能を守ってください。

―頻繁な手洗い、消毒液による肌トラブルについて教えてください。
 こまめな手洗いや消毒液の使用が励行される中、手のひらや手の甲、指のかさつきやひび割れ、かゆみ、赤み、痛みといった手荒れに悩まされる患者さんも増えています。頻繁な手洗いで、手指の皮膚のバリア機能を担う皮脂が流れ落ち、水分が保ちにくくなることに加え、消毒液の殺菌成分が刺激となって症状を悪化させているケースが多いです。
 高温のお湯は皮脂を取る力が強いので、ぬるま湯や水での手洗いをお勧めします。また、ぬれたままにしておくと皮膚がかえって荒れやすくなるので、ぬれた手はハンカチやハンドタオルできちんと拭くことも大切です。肌の弱い人は、低刺激性の石けんや消毒液を選んだ方がいいでしょう。手荒れがあまりにもひどい時は、十分な水洗いだけでも構いません。手洗い、消毒のあとは、水分をよく拭き取ってからハンドクリームを塗ってください。流れ落ちた皮脂の代わりにバリアの役割を果たしてくれます。
 セルフケアを実践しても、口元や手指の症状が治らない時は、症状がさらに悪化する前に専門医を受診してください。

2020年6月3日水曜日

知っておきたい体温の話

ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長

体内の温度はどうなっているのですか。また、「平熱」とはいったい何度なのでしょうか。体温について詳しく教えてください。
 私たちの体は、熱を産生して体内の温度をまわりの温度より高く維持しています。体内の温度は、体の中心部は高くなっていて、外側になる手足や皮膚に近いところでは低くなっています。中心部分が高いのは脳や心臓、肝臓など、大切な臓器の働きを保つためです。体の中心部の温度は日常的には測れないので、体に負担をかけずに簡単に検温できる場所として、脇の下(腋窩)、口の中(口腔)、耳、直腸など体の表面に近い場所が用いられています。測定する部位ごとに検温に必要な方法や時間が異なり、得られる温度も異なります。平熱も部位によって違うのです。
 日本人の平熱は、一般的に36.6℃から37.2℃の間といわれていますが、あくまでも平均値で個人差があります。年代によっても異なり、子どもは体温が高めで、高齢では低めになります。体温は1日のうちでも変動します。早朝が最も低く、次第に体温は上昇し、午後3〜6時に最高値を示します。その後、夜に向けて下がっていきます。また、運動や食事、睡眠、女性の生理周期などによっても変動します。
 ご自分の平熱がどれくらいか、ふだんから知っておくとよいと思います。数日にわたって同じ部位で同じ時間帯で測るようにしてみてください。起床時、昼食前、夕方、就寝前の計4回検温し、時間帯ごとの平熱として覚えておくと、発熱を正しく判断できます。発熱の基準も一概にはいえません。自分の平熱より明らかに高ければ発熱ということになります。
 体温は、ご家庭にある体温計で誰でも気軽に測れるもっとも身近な体調チェックの手段です。一人ひとりが自分専用の体温計を持つのが理想です。計測場所や用途に応じてさまざまなタイプの体温計がありますが、最も一般的なのは脇の下で測るものです。
 測り方のコツは、体温計の先を脇の下のくぼみの中央にあて、体温計が上半身に対し30度くらいになるようにして脇を閉じます。肘を体に密着させ、体温計をはさんだ方の肘をもう一方の手で軽く抑えます。脇が完全に温まったときの温度を「平衡温」といい、これを測るのが正しい検温です。脇を閉じてから平衡温に達するまでには10分以上かかります。体温計によっては予測式と言って短い時間で測定できるものがあり、測定時間はさまざまです。測定が終わるまではじっと動かないで測定して下さい。