2019年11月27日水曜日

秋から冬の乾燥肌ケア

ゲスト宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長

乾燥肌について教えてください。
 秋から冬にかけて寒い季節に、多くの人が悩まされる肌のトラブルといえば乾燥肌です。皮膚が乾燥して、カサカサした状態になり、ひどくなると白く粉をふいたり、ひび割れてうろこのようになったりします。ある程度乾燥すると、それだけでかゆみを伴い、掻(か)くと悪化して皮膚炎を起こす場合もあります(皮脂欠乏性湿疹)。
 皮膚表面を覆う脂分など、皮膚の潤いを保つ成分が、加齢などにより減ったり、不足したりすること、また、ストレスや疲労、ビタミン不足などによる肌荒れの進行が乾燥肌の原因です。外気や室内の乾燥、皮膚を強く洗いすぎるといった生活習慣なども外的な要因として挙げられます。
 乾燥してカサカサした皮膚は、目に見えない細かな傷がたくさん付いた皮膚ともいえます。これらの傷からいろいろな刺激物が入り込んでかゆみを起こし、さらなる皮膚トラブルの原因となります。放っておくとますます症状は悪化しますので、早い時期から治療することが大切です。

乾燥肌の治療と対策について教えてください。
 治療は、傷ついた皮膚の表面に潤いを与える保湿剤が中心となります。皮膚のダメージに応じて、かゆみや炎症を抑える薬を処方することもあります。ただの乾燥肌と思っていたら別の皮膚の病気が隠れていたというケースもあるので、自己判断に頼らず、専門医と相談の上で治療することをお勧めします。
 乾燥肌対策の最重要ポイントは、保湿クリームなどを小まめに塗り、皮膚の潤いを保つことです。1日1回塗るより、1日2回朝と夜(可能なら入浴後)に塗った方が保湿効果は高いという研究結果が出ています。「保湿剤を塗る量はどのくらい?」という質問をよく受けますが、1FTU(ワン・フィンガー・チップ・ユニット)という単位を目安にしてもらっています。これは人差し指の先端から第一関節までチューブから絞り出した量が薬0.5gで、両方の手のひらに塗る量に相当するという塗り方です。ローションの場合は手のひらの上に1円玉大が1FTUの目安です。塗る量が少し多いと感じるかもしれませんが、十分な量をしっかり塗ることで、期待する効果が得られやすくなります。感覚的には「保湿剤の油分で皮膚の表面が光る程度」「ティッシュペーパー1枚が皮膚に貼りつく程度」と覚えておくといいでしょう。

2019年11月20日水曜日

広がる新型たばこの健康リスク

ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 院長

―火をつけない新型たばこのシェアが拡大しています。新型たばこの健康上のリスクについて教えてください。
 紙巻きたばこの喫煙・受動喫煙は長年の研究で、肺がんなどの危険を高めることが科学的に証明されていますが、近年、従来の紙巻きたばこより有害物質が少ないと宣伝される新型たばこが登場し、今や世界規模で普及しています。新型たばことは、電子たばこと加熱式たばこを指します。
 電子たばこは、ニコチンや多様な香料を含む液体を専用装置で加熱してエアロゾル(気体中に分散して浮遊する液体及び個体の微粒子の総称)を吸うものです。日本ではニコチンを含む電子たばこは法律で規制され市販されていませんが、8000種類以上あるといわれている香料の香りや味を楽しむものは規制外です。電子たばこは発売当初から有害性が議論になっています。有害成分の濃度が低いという業者の主張とは異なり、従来の紙巻きたばこに比べて安全とはいえない可能性が高いという研究結果が相次いでいます。米国では、電子たばこを吸った後、深刻な肺の病気にかかった患者が死亡した例もあり、電子たばこに含まれる未知の有害成分が関係しているとみて調査が進められています。
 一方、加熱式たばこは、たばこの葉に直接火を付けるのではなく、たばこの葉を加熱してニコチンなどを含んだエアロゾルを発生させる方式のたばこです。日本で急速に広がる加熱式たばこは「有害物質が少なく、煙が出ないのでクリーン」と俗にいわれていますが、本当にそうなのでしょうか。確かに、ニコチンは減少するものの、紙巻きたばこに含まれるその他の発がん性物質や有害物質は一律に減少しないことが明らかになっています。発がん性物質や有害物質には許容範囲がないので少量でも使用しないことが大切です。また、加熱式たばこの喫煙者が吸い込んだエアロゾルの約3分の1は、そのまま吐き出されます。その煙は見えにくく、においもほとんどありませんが、高濃度の有害な成分を含んでいることが実験で確認されています。受動喫煙がないという誤解・誤認識により、加熱式たばこの使用を認める飲食店が増えているようですが、受動喫煙の点からは問題だといえます。
 新型たばこは市販されてからの期間が短く健康被害の調査がまだ十分に行われておらず、紙巻きタバコよりも安全だという保障はまったくありません。日本呼吸器学会からは「使用者にとっても、受動喫煙させられる人にとっても、電子たばこや加熱式たばこの使用は推奨できない」という見解が出されています。

2019年11月13日水曜日

全般不安症・全般性不安障害

ゲスト/医療法人社団 正心会  岡本病院  山中啓義 副院長

全般不安症・全般性不安障害とはどのような病気ですか。
 全般不安症・全般性不安障害(GAD)は、慢性的にコントロールできない心配によって不眠、筋緊張などの身体症状や集中困難をきたす疾患です。社会的・職業的機能障害、ほかの精神疾患や身体疾患との併存、放置しておくと自殺につながる恐れもあるとも考えられています。
 しかし、その概念や診断基準の変遷から患者さんはもちろんのこと、医師の中でもその認知度や理解度は未だに低い疾患の一つと思われます。
 GADの原点はドイツ精神医学(以下、伝統的精神医学)における「不安神経症」に遡ることができます。「何か悪いことが起こるのではないか」という予期不安、慢性不安を誘因としてさまざまな症状が生じるものとされます。伝統的精神医学は個々の症例を様々な角度から深く検討していくという長所がある一方、明確な基準がない、同じ症例でも医師によって診断の一致率が低いという短所もあります。
 1980年、疫学調査や自然科学的研究を進める上でDSM-3(心の病気に関する診断基準)が誕生し、不安障害の再編成が行われました。現在用いられているDSM-5において全般不安症・全般性不安障害は「多数のことへの制御不能で過剰な不安と心配(予期憂慮)が、起こる日の方が起こらない日より多い状態が少なくとも6か月間にわたる」と定義されています。そして、その不安および心配は以下6つの症状のうち3つ以上を伴っているものとされています。①落ち着きのなさ、緊張感 ②疲労感 ③集中困難 ④易怒性、焦燥 ⑤筋肉の緊張 ⑥不眠。DSM-5では「たとえ、うつ病期間中のみに起こったGAD(全般性不安障害)であっても、GADとしてよい」とされ、どんな気分障害とも併存すると規定されました。


治療について教えてください。
 GAD治療には長く抗不安薬や睡眠薬が用いられてきました。しかし、特にベンゾジアゼピン系薬剤による依存、耐性、離脱、眠気、認知機能低下などの観点から近年は推奨されていません。
 現在は、抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が薬物療法の第一選択薬となっています。また、非薬物療法として支持的精神療法、認知行動療法、リラクゼーション訓練などの有効性も報告されています。

2019年11月6日水曜日

股関節の関節外クリーニング手術

ゲスト/医療法人社団 二樹会 足立外科・整形外科クリニック 加谷 光規 副院長

股関節が痛くなる原因を教えてください。
 股関節に痛みを引き起こす病気は、股関節周囲炎やアスリートの股関節痛、変形性股関節症などが知られています。
 「五十股」とも呼ばれる股関節周囲炎は、股関節の使い過ぎなどで股の付け根に痛みを発症する病気です。痛みで受診しても、レントゲン検査では異常が発見されないことも多く、薬物療法やリハビリを行っても改善しないケースも少なくありません。アスリートの股関節痛は、サッカーや野球、バドミントンなど足を使うスポーツ選手に多いです。股関節の前面から大腿骨にかけて、膝を伸ばす大腿直筋という筋肉がついているのですが、この筋肉の股関節側の付着部の損傷が痛みの原因です。変形性股関節は、何らかの要因により股関節が変性し痛みを発症する病気です。大部分が骨盤の臼蓋(きゅうがい)の形成不全が原因です。
 股関節の痛みに対する治療には、痛みを緩和しながら日常生活を問題なく送るための手助けを行う保存的治療と、手術を行って痛みの原因を根本的に取り除く外科的治療があります。手術にもいくつか種類がありますが、新しい治療法として注目されているのが股関節鏡を用いた「関節外クリーニング手術」です。

股関節の関節外クリーニング手術について教えてください。
 関節外クリーニング手術は、1センチの創を2〜3カ所作り、そこから内視鏡を挿入して筋肉と筋肉の癒着や炎症などを取り除き、股関節の痛みを改善する治療法です。骨を削るなどの治療を必要としないので、入院期間は3日程度で済み、おおむね10日〜2週間で社会復帰が可能です。
 治療の対象となるのは、股関節周囲炎や運動に伴う股関節痛です。レントゲン画像で異常はないものの股関節痛があり、薬やリハビリではなかなか改善しないといった症例の約半数に適用となります。また、変形性関節症の中にも関節外クリーニング手術だけで改善する例もあるので、病状を見極めた上で治療法を決定することが重要です。
 股関節の痛みは、理学療法士による徒手的なリハビリで治るケースも少なくありません。さらに、術前に徒手的リハビリを実施することで、関節外クリーニング手術を行いやすくしたり、また術後に徒手的リハビリを行って回復を早めたりするなど、手術と組み合わせる治療も有効なケースが多いことが分かっています。