2019年4月24日水曜日

子どもの歯科矯正治療

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

子どもの矯正治療について教えてください。
 お子さんの歯並びに矯正が必要かどうか迷う人も多いのではないでしょうか。歯並びを確かめる方法の一つとして、お子さんの口元を顔の正面から観察してみてください。上下の前歯の真ん中の位置が一致していれば安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要があると考えられます。出っ歯や受け口など、上下の顎が前後に大き過ぎたり小さ過ぎたりという骨格的な問題は、一般の方でも気付きやすいですが、左右のずれは発見しにくいものです。
 前後あるいは左右にずれが認められる場合は、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9〜11歳までに矯正治療を行うのが理想的です。就寝時にバイオネーターと呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、寝ている間にずれた顎の骨を中央に移動させます。子どもの成長の力を利用して、無理なく自然にバランスのよい骨格をつくれます。痛みはほとんどなく、日中は装着の必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は半年〜1年が平均で、経過観察のための通院は、1〜3カ月に一度が目安となります。
 ずれの原因はさまざまですが、歯そのものがずれているケースもあり、永久歯がはえそろってからでも治療は可能です。その場合、抜歯する可能性は高くなりますが、きれいに治療できるケースがほとんどです。矯正治療をいつ始めるべきかという判断は非常に難しいので、一度歯科医にご相談ください。

家庭でチェックするための別の方法はありますか。
 頬づえやかみ癖、就寝時の姿勢が左右どちらかに大幅に偏っている場合などは、左右のずれを引き起こす原因になることがあります。上下の前歯の位置を確認したら、次は鼻の先端を基準に、鼻の中央に前歯の中心が沿っているかを見てください。ずれの原因は一見して分かるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長時期を逃してしまうので注意が必要です。
 子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置していると、成長に伴い虫歯や歯周病の原因となったり、顎関節にも悪影響を及ぼす恐れがあります。また、大人になってから心理的なストレスの原因となる場合もあります。少しでもおかしいと感じたら、早めに歯科医に相談することをお勧めします。

2019年4月17日水曜日

鼻から入れる内視鏡(経鼻内視鏡検査)

ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 院長

鼻から入れる内視鏡について教えてください。
 これまで、胃内視鏡検査は口から入れる経口内視鏡を用いるのが一般的でした。しかし、最近は「経鼻内視鏡検査」という鼻から挿入する方法で検査が行われることが増えてきました。経鼻内視鏡はかなり以前からあったのですが、近年は性能が良くなり、導入する医療機関が急増しています。
 経鼻内視鏡は弾力性のあるしなやかなチューブで、直径は5mm台と一般的な経口内視鏡に比べて細く、スムーズに挿入することができます。画像もクリアな高画質で、視野が広く、ごく小さな病変も発見することが可能です。
 経口内視鏡は挿入時、舌の付け根の舌根という部分に内視鏡が触れることで、検査の最中に吐き気をもよおすことがあるなど、患者さんの負担が大きかったのですが、経鼻内視鏡では、鼻から挿入した内視鏡は鼻腔(びくう)を通って食道に入るため、嘔吐感や痛みがほとんどありません。また、検査中に医師と会話できることも、患者さんと医師双方にとって大きなメリットになっています。

経鼻内視鏡検査の流れを教えてください。
 最初に鼻づまりがあるか、鼻血が出やすいかなど鼻の状態を確かめます。鼻の疾患がある場合などは、経鼻内視鏡が使えないこともあります。
 前処置として、鼻腔に「局所血管収縮剤」をスプレーし、鼻の通りを良くして出血をしにくくします。続いて、鼻腔に麻酔薬を注入してから、麻酔薬を塗った内視鏡と同じ太さの柔らかなチューブを挿入し、鼻腔の局所麻酔を行います。これによって、内視鏡が通過するときの痛みが抑えられます。局所麻酔なので、眠くなったりすることはありません。この後、内視鏡が鼻から挿入され、鼻腔、喉、食道、胃、十二指腸と順次観察がなされ、通常数分以内に終了します。
 がんや潰瘍など、食道や胃、十二指腸などの疾患は、早期発見・早期治療が完治への近道です。「検査が怖い」「以前すごくきつかった」など経口内視鏡を苦手とするあまりに受診が遅れ、症状が進行していることもあります。経鼻内視鏡は患者さんの体への負担が少ないので、内視鏡検査をちゅうちょしている人は1日も早く医師に相談してほしいと思います。

2019年4月10日水曜日

非アルコール性脂肪肝炎(NASH)

ゲスト/佐野内科医院 佐野 公昭 院長

非アルコール性脂肪肝炎とはどのような病気ですか。
 肝臓の細胞に脂肪が多くたまった状態が脂肪肝です。お酒の飲み過ぎによって引き起こされるアルコール性脂肪肝がよく知られていますが、お酒を飲まない場合でも脂肪肝になることがあり、これを非アルコール性脂肪性疾患(NAFLD=ナッフルディー)といいます。肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧症などの生活習慣病を伴うことが多く、メタボリックシンドロームの肝病変と考えられています。NAFLDにはほとんど病態が進行しない非アルコール性脂肪肝(NAFL=ナッフル)と、炎症や繊維化を伴い、肝炎から肝硬変、さらには肝がんに進行する危険性のある「非アルコール性脂肪肝炎(NASH=ナッシュ)」があります。飲酒歴がなくても脂肪肝の人で肝臓の病気が進行してしまうことがあるということです。
 肝臓は“沈黙の臓器”といわれるように、多少の負担がかかってもすぐには症状があらわれません。NASHになっていても、かなり病気が進行しない限りほとんど症状はありません。脂肪肝を治療せずに放っておくと、知らない間に肝硬変や肝がんまで進行してしまう場合があることを知っておいてほしいです。

診断と治療について教えてください。
 脂肪肝は自覚症状がほとんどないか、あっても倦怠感がある程度です。一般的な血液検査だけで診断することは難しく、超音波検査やCTによる検査で肝臓への脂肪沈着を確認します。NASHと診断するためには肝生検を行う必要がありますが、簡単に行える検査ではありませんし、多少のリスクもあります。そこで肝臓の線維化に着目して肝機能(GOT、GPT)や血小板数、年齢などから予測式(FIB-4 index)を用いて肝生検を行うべきかどうかの目安にします。電卓があればご自分でも計算できますが、データを入力すると結果を出してくれるホームページもあります。
 治療は、多くの場合肥満を伴っていますので、NAFLでは食事療法や運動療法など生活習慣の改善による減量が基本となります。NASHの場合も肥満のある場合は減量が大切で、糖尿病、脂質異常症、高血圧症がある場合にはそれらの治療も重要となります。こうした疾患に対する薬剤のなかにはNASHに対しても効果があると示唆されているものもあります。保険適用の問題はありますが、抗酸化作用があるビタミンEなども使われることがあります。肝障害の進行を防ぐため、初期の段階から積極的に治療を行なっていきます。
 特定健診など、健康診断で肥満と多少なりとも肝機能異常を認める場合には、症状がなくても専門医に相談してほしいと思います。

2019年4月3日水曜日

最新の糖尿病治療

ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長

最新の糖尿病治療薬について教えてください。
 糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖値へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は、理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬で、糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1c値を1.0%前後下げます。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬はHbA1c値を1.6%前後下げます。1日1回の注射が必要ですが、現在は1週間に1回で済む注射薬も出ました。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。従来まで体重を減少させる糖尿病薬がありませんでしたが、「SGLT-2阻害薬」が登場し、この薬剤は血糖値を下げると同時に体重も減らします。最近の研究データ結果によると、この種の薬剤は、心血管系の心不全の出現を抑える働きと糖尿病性腎臓病を良くする働きを持ち合わせていることが判明してきています。
 一方、インスリン注射に目を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖値が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は従来まで濁った製剤でしたが、透明な製剤が登場し、10回以上振って混合しなくても済むようになりました。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療状況が良好といえる目安は、HbA1cが7.0%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が、高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は125/75mmHg以下です。自宅で測定できる血圧計を治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。糖尿病に重症の虚血性心疾患を合併している場合には、LDL-コレステロールは70mg/dl以下と治療の基準値が厳しくなりました。
 以上のようなさまざまな基準値を長期間保てると、眼底出血による失明、腎臓の悪化による透析、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など、糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞、心筋梗塞などの予防にもつながります。