2019年3月20日水曜日

「眼瞼下垂症〜まぶたのたるみと老人性顔貌」

ゲスト/医療法人藻友会 いしやま形成外科クリニック 石山 誠一郎 院長


─眼瞼下垂症とはどのような病気ですか。
 眼瞼下垂症は、読んで字のごとく眼瞼(まぶた)が下垂する(垂れ下がる)ため、まぶたがうまくあげられなくなり、前方が見えにくくなる病気です。生まれつきの場合もありますが、多くが後天性です。最も多いのは、加齢や生活習慣に伴う腱膜性の眼瞼下垂です。コンタクトレンズを長年使用していたり、アトピー性皮膚炎や花粉症のかゆみでまぶたを強く擦(こす)ることが続いたり、スマホやパソコンなどによる眼の酷使、白内障の手術後、あるいは加齢に伴いまぶたを吊り上げる筋肉が、まぶたを支える瞼板(けんばん)から外れることが原因で起こります。
 老化が原因の場合は、まぶたの皮膚自体も垂れ下がることが少なくありません。「眠たそうな顔をしているといわれる」「若い頃より目が小さくなった感じがする」「実年齢より老けて見られる」など、整容的な問題を伴うことも多いです。また、眼瞼下垂症は視野が狭くなり、前が見えにくくなるため、おでこの筋肉を使って眉毛を強く上げたり、顎を突き上げたりして物を見るようになります。この結果、おでこや眉間に深いしわが寄るなど、老人に似た特有の顔つき(老人性顔貌)になりやすいです。近年では、眼瞼下垂症が頭痛や肩こりなどさまざまな不定愁訴を引き起こす要因となっていることも分かっています。

─治療について教えてください。
 薬では治すことができないため、手術が必要となります。腱膜性の眼瞼下垂の場合は、一般的にまぶたを吊り上げる筋肉を瞼板の正しい位置に再固定する手術が行われます。この際に余剰な皮膚も切除します。局所麻酔で行うので日帰り手術も可能です。手術後の腫れは1、2週間かけて引いていきます。眼が大きくなり、二重まぶたがくっきりするため、少し若返った印象になる方が多いです。傷跡は二重の線にかくれるので、ほとんど分かりません。眼瞼下垂症の治療は美容的な側面もありますが、視界の妨げや頭痛、肩こりなどの症状の改善が主体の場合は、健康保険が適応されます。
 「目は口ほどに物をいう」ということわざがある通り、眼の表情や視線は他人に与える印象を大きく左右します。私たち形成外科医は機能的な面のみならず、整容面も十分に考慮しながら手術を行います。眼瞼下垂症でお困りの方は、ぜひお近くの形成外科へご相談ください。

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