2019年3月27日水曜日

胃がんの内視鏡治療

ゲスト/福住内科クリニック 佐藤 康裕 院長

胃がんの内視鏡による治療はどのように行われますか。
 口から挿入した内視鏡(胃カメラ)により、胃の内側からがんを切除します。胃がんは粘膜から発生し、次第に下層へ広がり、ある程度の深さに達すると胃の周囲のリンパ節に転移を起こし始めます。外科手術では周囲のリンパ節を含めて胃を切除しますが、内視鏡で切除できるのは胃の粘膜だけです。つまり、内視鏡治療で治る条件は、がんが胃の粘膜にとどまり、リンパ節への転移がないということになります。
 近年開発された「内視鏡的粘膜下層剥離術」によって、以前より多くの病変が切除可能になりました。治療中は鎮静剤などの注射により苦痛は少なく、入院は1〜2週間程度で済みます。外科手術では胃の下側の3分の2の切除や全摘などが行われ、患者さんによっては術後に体重が減少したり体力が低下したりします。一方、内視鏡治療であれば、術後も胃の大きさは変わりません。手術の傷痕も残らず、術前と同じような生活を望めます。

早期胃がんはどのように発見されますか。
 良い治療法であっても、がんを早期発見できなければ内視鏡治療を受けることはできません。自覚症状が出てから見つかったがんは進行がんで外科手術が必要です。症状のない早期がんの発見には「胃がん危険群」に対する定期検査が重要です。胃がんのほとんどは、現在または過去のピロリ菌感染者が発症し、ピロリ菌を持っている人は未感染者の150倍ほど胃がんになりやすいと推測されています。ピロリ菌は乳幼児期に感染し、持続的に胃の粘膜に住みつきます。大人に感染することはまれですので、できるだけ若いうちに検査を受けて除菌することが望まれます。
 2019年1月より札幌市では、指定医療機関においてがん検診の一つとしてピロリ菌検査を実施しています。満40歳・42歳・44歳・46歳・48歳の方を対象に、自己負担は千円で、血液検査のみで判定できます。除菌によって胃がんの発症は約3分の1に減少しますが、除菌時期が中年以降であれば未感染者と比べるとかなり高い発がんリスクがあります。ピロリ菌が胃がんの原因であることが広く知られ、除菌した患者さんも増えていますが、「除菌したので胃がんにはかからない」と誤解されている方もまだ多くいます。除菌後も定期的な内視鏡検査を受けることが重要であり、1年ごとの検査を目安にすれば、がんの早期発見が可能になります。

2019年3月20日水曜日

「眼瞼下垂症〜まぶたのたるみと老人性顔貌」

ゲスト/医療法人藻友会 いしやま形成外科クリニック 石山 誠一郎 院長


─眼瞼下垂症とはどのような病気ですか。
 眼瞼下垂症は、読んで字のごとく眼瞼(まぶた)が下垂する(垂れ下がる)ため、まぶたがうまくあげられなくなり、前方が見えにくくなる病気です。生まれつきの場合もありますが、多くが後天性です。最も多いのは、加齢や生活習慣に伴う腱膜性の眼瞼下垂です。コンタクトレンズを長年使用していたり、アトピー性皮膚炎や花粉症のかゆみでまぶたを強く擦(こす)ることが続いたり、スマホやパソコンなどによる眼の酷使、白内障の手術後、あるいは加齢に伴いまぶたを吊り上げる筋肉が、まぶたを支える瞼板(けんばん)から外れることが原因で起こります。
 老化が原因の場合は、まぶたの皮膚自体も垂れ下がることが少なくありません。「眠たそうな顔をしているといわれる」「若い頃より目が小さくなった感じがする」「実年齢より老けて見られる」など、整容的な問題を伴うことも多いです。また、眼瞼下垂症は視野が狭くなり、前が見えにくくなるため、おでこの筋肉を使って眉毛を強く上げたり、顎を突き上げたりして物を見るようになります。この結果、おでこや眉間に深いしわが寄るなど、老人に似た特有の顔つき(老人性顔貌)になりやすいです。近年では、眼瞼下垂症が頭痛や肩こりなどさまざまな不定愁訴を引き起こす要因となっていることも分かっています。

─治療について教えてください。
 薬では治すことができないため、手術が必要となります。腱膜性の眼瞼下垂の場合は、一般的にまぶたを吊り上げる筋肉を瞼板の正しい位置に再固定する手術が行われます。この際に余剰な皮膚も切除します。局所麻酔で行うので日帰り手術も可能です。手術後の腫れは1、2週間かけて引いていきます。眼が大きくなり、二重まぶたがくっきりするため、少し若返った印象になる方が多いです。傷跡は二重の線にかくれるので、ほとんど分かりません。眼瞼下垂症の治療は美容的な側面もありますが、視界の妨げや頭痛、肩こりなどの症状の改善が主体の場合は、健康保険が適応されます。
 「目は口ほどに物をいう」ということわざがある通り、眼の表情や視線は他人に与える印象を大きく左右します。私たち形成外科医は機能的な面のみならず、整容面も十分に考慮しながら手術を行います。眼瞼下垂症でお困りの方は、ぜひお近くの形成外科へご相談ください。

2019年3月13日水曜日

うつ病の受診のポイント

ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 響 徹 診療部長

うつ病について教えてください。
 うつ病は、気分が強く落ち込み憂うつになる、やる気が出ない、集中できないなどの精神的な症状のほか、眠れない、疲れやすい、体がだるいといった身体的な症状が現れることのある病気です。長引く不調や、他の診療科を受診しても症状が良くならない場合も、うつ病が原因の可能性があります。ストレス社会で生きる私たちにとって、うつ病はいつ、だれが発症してもおかしくない、非常に身近な病気です。
 日常生活の中で憂うつになったり、気分が落ち込んだりといった感情の変化はだれもが経験しますが、うつ病の場合には時間がたっても気分が晴れず、喜びや好奇心をなくした状態が長期間続きます。そのため、仕事や学校に行けなかったり、体を動かすことができなかったり、社会生活に大きな支障をきたします。
 残念なことに、症状が悪化するとうつ病のために自殺をしてしまう方も少なくありません。「心のかぜ」といわれることのあるうつ病ですが、実際は「かぜ」よりもっと恐ろしい病気なのです。症状の悪化を避けるためには、早期発見・早期治療が肝心です。
 うつ病の治療には、休養、薬物療法、精神療法などがあります。治療の経過は人によりさまざま。良くなった状態が続いても、自己判断で治療をやめると再発することもあるので、あせらずに取り組むことが大切です。

受診のポイントについて教えてください。
 うつ病の多くは、ストレスが持続的にかかった結果です。ストレスによって心身が疲れきり、さまざまな症状が出ているのです。一般的に「疲労」は「休め」のサインです。うつ病にならないためにも十分な休養を取る必要があります。危険なのは、普段であれば疲れを感じてもおかしくない状態なのに、身体感覚が鈍って疲労を感じなくなっている場合です。うつ病になっている可能性が高く、一刻も早い受診が必要です。
 本人がうつ病による不調を自覚していなくても、周囲の人が「以前と様子が違う」「どこか変だ」と感じることがあります。なるべく早い段階で周囲がこれらのサインをキャッチし、うつ病に気づいてあげることが重要です。うつ病は、医師や専門家による適切な治療はもちろんですが、周囲の人が病気への理解を示し、共感してあげること、そして、受診につなげてあげることがとても重要です。

2019年3月6日水曜日

多焦点眼内レンズによる白内障治療

ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長

白内障の治療について教えてください。
 白内障は、瞳の後ろにある水晶体が濁るために起きる視力障害です。治療には点眼薬が投与されますが、最終的には手術が必要です。日本白内障学会などによると、白内障手術は全国で年間140万件以上行われており、最も実施件数の多い外科手術の一つです。
 一般的な手術法は、水晶体を包んでいる袋を残し、袋の中の濁りを超音波で細かくして取り除き、代わりに人工の眼内レンズを挿入するものです。それぞれの目によって症状、程度、状況が異なるため、同じ白内障の手術でも難易度に差があります。
 通常、眼内レンズは1つの距離に焦点を合わせた「単焦点眼内レンズ」が使われていますが、近年では遠距離と近距離の2点に焦点が合うように設計された「多焦点眼内レンズ」も一般的になってきました。

多焦点眼内レンズによる白内障手術について教えてください。
 自由にピントを変えられるような見え方とは異なり、遠くにも近くにもメガネなしで焦点が合いやすくなります。場合によってはメガネを必要とするケースもありますが、頻繁に掛け外しをする煩わしさからは解放されます。乱視の治療も同時に行うことができますが、比較的治療の難易度が高く、多焦点眼内レンズを挿入後に乱視矯正の追加の治療が必要な場合もあります。
 夜間の光をまぶしく感じたり、暗い場所ではくっきり感が落ちたりするなどの弱点もあるので、どちらのレンズにするかは医師と話し合い、ライフスタイルを考慮して選択することをお勧めします。
 多焦点眼内レンズは2007年に厚労省に認可され、08年に先進医療として承認されました。先進医療とは、厚生労働大臣が保険適用外の先端的な医療技術と保険診療との併用を、一定条件を満たした施設のみに認める医療制度です。先進医療施設に認定された医療機関で、多焦点眼内レンズによる白内障治療を受ける場合、術前術後の診察などに保険が適用となります。また、民間の生命保険の先進医療特約の対象ともなり、先進医療に係る費用が全額給付されるケースもあります。
 保険外診療となりますが、遠近に加えて中間距離にも焦点の合う「三焦点眼内レンズ」も登場しています。眼内レンズの進化に伴い、白内障手術も見え方の質をより一層重視する時代に入ってきました。