2019年2月20日水曜日

社交不安症

ゲスト/医療法人北仁会  いしばし病院 内田 啓仁 医師

社交不安症とはどのような病気ですか。
 社交不安症(SAD)は、人前で話をするなど注目を浴びる行動に不安を感じ、顔が赤くほてる、脈が速くなる、息苦しくなる、おなかが痛くなるなどの症状が現れる病気です。例えば、公式な席であいさつをする、会議で指名され意見を言う、よく知らない人に電話をかける、外で他人と食事するといった状況で症状が出ることが多いです。その不安が、公衆の面前での行動に限定されている場合を「パフォーマンス限局型」と呼びます。
 恥ずかしいと思う場面でも、多くの人は徐々に慣れてきて平常心で振る舞えるようになりますが、SADの人は「恥をかいたらどうしよう」「変に思われるかもしれない」という不安感を覚え、そうした場面に遭遇することへの恐怖心を抱えています。SADのため、他人との関わりが辛くなり、不登校や引きこもりなど社会生活に支障を来すケースも少なくありません。
 SADは10〜20歳代に発症することが多く、症状が慢性化してくると、うつ病やアルコール依存症など別の精神疾患の合併が問題となります。心の病気か、性格の特性か、一見しただけでは見分けがつかないのもSADの特徴的な一面で、「内気」「人見知り」「引っ込み思案」などと思い込み、診療の機会を失ったまま過ごしている人も多いです。

治療について教えてください。
 SADの治療法には大きく2つ、薬物療法と精神療法があります。薬物療法では、不安や恐怖を感じる原因とされる脳内物質のバランスを保つ薬・SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を用います。抗不安薬やβ遮断薬などを併用し、不安時の身体症状の緩和を図る場合もあります。
 精神療法では、物事の受け止め方のゆがみや偏りを修正していく「認知行動療法」や、不安が生まれる状況にあえて飛び込んで段階的に身を慣らしていく「暴露療法」などが有効です。同時に、適度な有酸素運動などの生活指導や呼吸法、リラックス法など不安状況への対処法の指導も行われます。
 SADは治療のできる病気です。治療によって長年の苦痛から解放され、人生が大きく変わる患者さんもたくさんいます。不安の頻度が多かったり、社会生活への影響が大きい場合は、思い切って専門医を受診し、適切な治療を受けることをお勧めします。

2019年2月13日水曜日

肺年齢とCOPD(慢性閉塞性肺疾患)

ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長

肺年齢について教えてください。
 胸部X線検査は、肺の異常所見を見つけるものですが、呼吸器疾患の早期発見は難しいとされています。早期発見のためには、肺活量のようにどのくらいの量の空気を吸い込んだり吐き出したりできるか、またどれくらいの速さでたくさん吐き出すことができるかを調べる「スパイロメトリー」という呼吸機能検査が必要です。しかし、従来のスパイロメトリーによる検査値の判定(表示)は、患者さんにとって理解しにくいものでした。そこで、日本呼吸器学会が呼吸機能検査の結果をもとに、呼吸機能を年齢という身近な指標に置き換え、肺の健康状態を知る目安として考案したのが「肺年齢」です。例えば、59歳の患者さんが「肺年齢は93歳。実年齢よりも34歳高いです」と指摘されたら、日常生活に苦痛や不便を感じていなくても、少なからず危機感を覚えるはずです。実年齢との差を自覚することで、呼吸機能の健康への関心と早期治療への意識が高まることが期待されています。
 肺年齢は、大きく息を吸ったのち一秒間にいっきに吐ける息の量(一秒量)を測ることで、自分の肺の機能が実際は何歳ごろの肺の状態に相当しているのかをみる一つの目安です。一秒量の標準値は性別、年齢、身長によって異なり、20歳代をピークに加齢とともに減少します。測定後、患者さんの肺年齢と評価コメントが表示され、「異常なし」から「境界領域(現時点では異常なし)」、「肺疾患の疑い(要精検)」、「COPDの疑い(要経過観察・生活改善)」、「COPDの疑い(要医療・精検)」まで5つのグループに分類されます。「肺疾患の疑い」となった場合は、専門医による精査が必要と判断されます。また、「COPDの疑い」がある場合には、専門医の診断後、禁煙指導や気管支拡張薬、吸入ステロイド薬などによる治療が開始されます。
 肺年齢を老化させる病気の代表がCOPDです。喫煙が主な原因とされ、肺への空気の通りが慢性的に悪くなり、ゆっくりと進行していきます。これまで肺気腫や慢性気管支炎と呼ばれていたもののほとんどが含まれます。せき、たん、息切れが主な症状ですが、進行すると呼吸困難で日常生活に支障をきたし、呼吸不全で死に至るケースもあります。
 COPDは初期の段階では症状を自覚しにくいので、早期発見に呼吸機能検査は不可欠です。まずは自分の肺年齢を知ること。そして、定期的な肺年齢の測定を心掛け、COPDをはじめとする呼吸器疾患の予防と早期発見につなげることが大切です。

2019年2月6日水曜日

おしり(肛門)の痛み

ゲスト/札幌いしやま病院 碓井 麻美 医師 

おしりに痛みがあるとき、どんな病気が考えられますか。
 おしりの痛みといえば、痔を思い浮かべる人が多いと思います。痔とは肛門に起こる良性の病気の総称です。その中で頻度が高いのが、痔核(いぼ痔)・裂肛(きれ痔)、痔瘻(あな痔)の3大疾患です。
 痔核と裂肛は、排便時と排便後しばらくの間痛みがある、おしりから出血するなどはっきりとした自覚症状があるケースが多いです。また、痔瘻は皮膚に孔(あな)を形成することが多く、痛みや発熱が生じるのが一般的です。ただ、痔瘻の中でも特殊なタイプであり、皮膚から深い位置の膿瘍が原因の痔瘻(深部痔瘻、複雑痔瘻)は、頻度が少なく自覚症状も軽いケースが多いため、比較的診断が難しいです。おしりを専門的に診る肛門外科以外の診療科では、しばしば見逃されることが多い病気です。
 同じ痔核でも、肛門の内側の粘膜にできる内痔核と肛門の皮膚部分にできる外痔核とでは、痛みの種類や症状は異なります。また、痔以外にも肛門周囲膿瘍、肛門周囲炎、おしりの奥の筋肉のコリなど、おしりや肛門周囲に痛みや違和感を感じる病気がたくさんあります。
 重要なのは早期に受診して、痛みの原因と現在の病状を正確に把握することです。専門医による的確な診断の後に、治療方法、タイミングなど患者さんのライフスタイルに合わせた治療を行います。

「おしりの病院」を受診するコツを教えてください。
 肛門外科など「おしりの病院」に行くのをためらう理由は、「おしりを見せるのが恥ずかしい」「手術をしなければならないのが嫌」などが多いように思います。知ってもらいたいのは、おしりの病気の多くが薬による治療が可能です。当然ですが、来院される患者さんすべてに手術を勧めるわけではありませんので、安心して受診してください。ですが、おしりの痛みを放っておいて悪化した後では、本当に手術しなければならなくなることもあります。症状が軽いうちに受診することが大切です。
 おしりの病気に限りませんが、今抱えている痛みについて、医師や看護師にできるだけ具体的に伝えることが、適切な診断・治療につながります。病院に行く前に「いつから、どのぐらいの時間痛むのか」、また、「どこが、どんなときに、どんなふうに痛くなるのか」をメモに控えておき、診察時に伝えるのも上手な受診の仕方です。