2019年1月30日水曜日

歯性上顎洞炎

ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

歯性上顎洞炎とはどのような病気ですか。
 「上顎洞(じょうがくどう)」とは聞き慣れない言葉ですが、頬骨の内側にある空洞のことです。鼻腔周囲の骨中の空洞を「副鼻腔(ふくびくう)」といい、上顎洞はその一つです。副鼻腔の中は、粘膜で覆われており、粘膜の表面には線毛と呼ばれる細い毛が生えています。線毛は、外から入ってきたホコリや細菌、ウイルスなどの異物を、粘液と一緒に空洞の外へ送り出す働きを持っています。
 副鼻腔がかぜやインフルエンザなどの感染から炎症を起こし、不快な症状を引き起こす病気が「副鼻腔炎」です。膿が副鼻腔にたまることが多く、「蓄膿症」とも呼ばれます。上顎のむし歯や歯周炎が主な原因となり、蓄膿症同様、上顎洞に膿がたまる病気を「歯性上顎洞炎」といいます。
 上顎の奥歯の歯根の先は、上顎洞に近接しており、歯によっては歯根が上顎洞内に入り込んでいます。そのため、深いむし歯で奥歯の根っこが炎症や壊死を起こしていたり、歯周病で歯根のまわりに膿がたまったりしているのを放置すると、細菌が上顎洞に侵入し始めます。歯性上顎洞炎にかかると、鼻から膿が出てくる、息をしたときに臭い、かむと痛い、頬が重苦しいなどの症状があります。第二大臼歯が最も原因になりやすいとされ、左右いずれか、片側のみに起こりやすいのも特徴です。

診断と治療、予防について教えてください。
 症例によっては、診断や原因歯の特定が難しいケースもありますが、近年では「歯科用コーンビームCT」を用いた低被ばくのCT検査により、より精度の高い診断ができるようになりました。
 治療は耳鼻咽喉科と歯科を受診し、上顎洞炎の治療とその原因となっている口腔内の治療をいっしょに行う必要があります。歯科では原因歯を特定し、抜歯や根の治療、歯周病や歯槽膿漏の治療を行います。歯性上顎洞炎は長引くと手術が必要となる場合も多く、上顎の歯の違和感と副鼻腔炎の症状が伴う場合は、早めの受診をお勧めします。
 予防は、上顎の歯の近くには上顎洞があることを意識して、日ごろから歯みがきなどのケアを怠らないこと。また、一見正常に見える詰め物治療後の奥歯が、実はその下で炎症を起こしているケースがあるので、定期的に歯科検診を受け、歯の根の治療は根気よく、丁寧に処置してもらうことが大切です。

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