2018年10月24日水曜日

最新の糖尿病治療

ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長

最新の糖尿病治療薬について教えてください。
 糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖値へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は、理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬で、糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1c値を1.0%前後下げます。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP-1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬はHbA1c値を1.6%前後下げます。1日1回の注射が必要ですが、現在は1週間に1回で済む注射薬も出ました。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。従来まで体重を減少させる糖尿病薬がありませんでしたが、「SGLT-2阻害薬」が登場し、この薬剤は血糖値を下げると同時に体重も減らします。最近の研究データによる結果では、この種の薬剤は、心血管系の心不全の出現を抑える働きと糖尿病性腎臓病を良くする働きを持ち合わせていることが判明してきています。
 一方、インスリン注射に目を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖値が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は従来まで濁った製剤でしたが、透明な製剤が登場し、10回以上振って混合しなくても済むようになりました。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療状況が良好といえる目安は、HbA1cが7.0%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が、高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は125/75mmHg以下です。自宅で測定できる血圧計を治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。糖尿病に重症の虚血性心疾患を合併している場合には、LDL-コレステロールは70mg/dl以下と治療の基準値が厳しくなりました。
 以上のようなさまざまな基準値を長期間保てば、眼底出血(失明)、腎臓の悪化(透析)、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など、糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞、心筋梗塞などの予防にもつながります。

2018年10月17日水曜日

お酒で赤くなる人は、食道がんに要注意

ゲスト/福住内科クリニック 佐藤 康裕 院長

どのような人が食道がんになりやすいのですか。
 日本人の食道がんは、飲酒と喫煙が大きな原因です。飲酒については「昔は飲むとすぐに赤くなったけれど、鍛えられて強くなった」という人が特に要注意です。
 飲酒で顔が赤くなる人のことを「フラッシャー」と呼びます。お酒の成分のエタノールは、体内で分解され、アセトアルデヒドという有害物質に変化し、これがさらに分解されて無害な酢酸になります。アセトアルデヒドは顔の赤らみや頭痛、二日酔いの原因であることに加え、発がん物質でもあります。
 アセトアルデヒドを分解する酵素には、遺伝的に3つの型があります。日本人の50〜60%は強い酵素を持っており、この人たちはお酒に強く赤くなりません。5〜10%は酵素活性がなく、お酒がほとんど飲めない人たちです。残りの30〜45%が、酵素の働きが弱く、少し飲めるけれど赤くなるフラッシャーの人です。
 フラッシャーは、アセトアルデヒドの分解が遅く、体内に発がん物質のとどまる時間が長くなるため、がんのリスクが高いとされます。また、フラッシャーであったのに、飲み続けることで「お酒に強く」なり、さらに過度の飲酒を続けていると、食道がんの発症率が何十倍も高くなることがわかっています。
 欧米で頻度が高いのは逆流性食道炎に起因する食道がんです。日本ではこのタイプの食道がんは少ないのですが、生活習慣の欧米化などにより今後増加してくることも予想されます。

食道がんの診断や治療について教えてください。
 無症状の早期がんは、集団検診のバリウム検査で見つけられることはあまりありません。内視鏡検査であれば、早期発見が可能です。早期食道がんは、内視鏡を用いた切除で体に大きな負担をかけずに、比較的短期間で治療することができます。
 食道がんは進行してくると、のどの違和感や飲み込む時のつかえ感などの症状が出てきます。進行がんでは内視鏡による治療はできず、手術・抗がん剤・放射線を組み合わせて治療します。日々治療法は進歩していますが、依然としてこれらの治療による体の負担は大きく、治療が難しいがんといえます。
 食道がんにならないためにフラッシャーの人は過度の飲酒を控えてください。また、早期発見のためには、長年飲酒を続けている人は症状がなくても定期的な内視鏡検査を受けることをお勧めします。

2018年10月10日水曜日

よくある皮膚のできもの

ゲスト/医療法人藻友会 いしやま形成外科クリニック 石山 誠一郎 院長

形成外科でよく扱う皮膚のできものについて教えてください。
 高齢者において必発といっていいほどありふれた皮膚のできものに「脂漏性角化症」があります。老人性イボとも呼ばれ、30代以降の男女にみられる皮膚の老化現象の一種です。皮膚にダメージを与える紫外線や、摩擦刺激などが原因と考えられます。日光を浴びやすい顔、特に頬やこめかみに発生することが多く、短髪の方であれば側頭部など髪の毛の中にも多発します。形状は淡褐色から黒色で、扁平(へんぺい)または半球状に盛り上がり、表面がザラザラしてきます。大きさは1mm程度の小さなものから、5cmを超えるような巨大なものまであります。自然に消えることはなく、加齢とともに増大してきます。洗顔や髭剃(ひげそ)りの際に引っかかり、出血を繰り返したり、かゆみが出てきたりする場合もあります。
 首の周りのイボも頻度の高い病気です。専門的には「アクロコルドン」と呼ばれます。放っておいても健康上問題になることはあまりないのですが、整容的な問題になるケースが多々あります。例えば、首元が広く開いたシャツを着るのを避けるようになったり、首周りを隠すのにスカーフが手放せなくなったりする方や、ネックレスなどのアクセサリーがイボに引っかかってしまい使えなくなる方がいます。
 顔のシミや首のイボが大きく盛り上がり、数が増えると、実年齢よりも老けた印象を与えると悩まれて相談に来られる方も多いです。

どのような治療を行うのですか。
 治療は、炭酸ガスレーザーの照射や電気メスを使った「電気凝固療法」などにより、患部のできものを削り取る場合がほとんどです。できものが皮膚の奥深くに達している場合などは、切除手術を行うこともあります。ただ、皮膚がんなど深刻な病気との鑑別が困難なものも含まれます。必要に応じて病理組織検査を行うなど、慎重に診断を確定させることが大切です。短期間のうちに全身に脂漏性角化症が多発する場合は、胃がんなどの悪性腫瘍を合併しているサインである可能性があるので、特に注意が必要です。
 脂漏性角化症やイボ、粉瘤(ふんりゅう)、ほくろなどの皮膚のできものは、薬では治せませんので、外科的治療が必要となります。整容的な問題にもつながりがちな顔や首のできものの治療は、まず形成外科で診察を受けることをお勧めします。

2018年10月3日水曜日

舌側矯正

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

矯正に対する最近の傾向について教えてください。
 近年、歯のかみ合わせと全身の健康状態やQOL(生活の質)との関係が、注目されるようになりました。それに並行し、口もとの美しさや歯並びに対する関心が高まり、歯の矯正治療が広く認知されてきました。矯正治療は子どものものと思われがちですが、最近は大人になって行う人も増えています。
 先日、30代の女性から「長年、歯並びの悪さがコンプレックスで矯正治療を考えていますが、装置を表からにするか、裏からにするか迷っている」との相談を受けました。この女性に限らず、歯列のでこぼこや、上顎(がく)前突、下顎前突、さらにあごの左右のずれを気にする方は多く、よくこのような相談を受けます。
 咬合(こうごう)の大切さを認識し、歯列やあごの骨のずれを治す矯正治療を受けようとする前向きな姿勢を隠す必要はありませんが、人知れずに治療したいという気持ちも分かります。特に社会人で、接客業など人前で話をする機会の多い方はそう考えるでしょう。思春期のお子さんが矯正装置を気にする心情も理解できます。そういう場合は、着けていても目立たない舌側矯正を選ぶ方もいます。

舌側矯正について教えてください。
 舌側矯正は、歯の裏側に矯正装置を入れます。表からは装置が目に付かないので、見た目にはまったく違和感がありません。他の人に気付かれることなく治療を行うことができる「見えない矯正治療」といえます。ただし、内側にあることから、表側からの矯正(唇側矯正)と比較すると、装着時の違和感など劣る部分もありました。しかし、近年これらの問題点を改善した舌側矯正装置「STb」が普及しています。
 「STb」は、従来の裏側に用いていたブラケットと比べると装置が非常に薄く、そして小さくなりました。それにより「話しにくい」「食事しづらい」「舌が痛い」「歯が磨きにくい」といった今までの舌側矯正の不快感が飛躍的に改善されました。また、歯の痛みもほとんどなく、治療期間も短くなり、より進化した次世代のブラケットといえます。
 「STb」の登場により、舌側矯正に踏み切れなかった人も気軽に、そして快適に矯正治療が受けられるようになったと思います。ぜひ一度、矯正歯科に相談してみてください。