2018年3月30日金曜日

子どもの矯正治療の基本のきほん

ゲスト/E-line矯正歯科上野 拓郎 院長

子どもの歯科矯正治療についていろいろ教えてください。
 子どもは成長過程にあるため、矯正治療を始める適切な時期があります。成長する力を利用することで、正しくかめるように骨格を誘導し、スムーズに歯並びやかみ合わせを改善できるからです。矯正歯科に相談する時期は「永久歯が生えてから」と思っている親御さんがいらっしゃるかもしれませんが、それではタイミングを逃してしまう場合があるので、お子さんの就学時にまず一度は受診してみることをお勧めします。この時期にかみ合わせを見ると将来の歯並びが予測できます。はっきりと外見から分かる症例だけでなく、今後おこりうる不正咬合(こうごう)も予測できます。また、適切な時期の治療は、使用できる矯正装置の選択肢が豊富で、一人ひとりに合った治療法を選べるというメリットもあります。
 矯正治療の流れを簡単に紹介します。最初に行うカウンセリングでは、治療方法、期間、費用等についてご説明します。納得し、治療を開始されると決まれば、あらためて必要な検査を行います。この検査の中で最も重要なのは、「頭部X線規格写真」という矯正専用のレントゲン写真です。これを撮る事によってはじめて、正確な矯正治療の診断や方針が立つとも言える大切な検査です。このような検査の後、診断、治療方針を決定し治療開始となります。
 子どもの歯並びやかみ合わせは、成長とともに変化していきます。計画に沿って治療を進めていくのはもちろんですが、そういった口の中に現れるさまざまな変化を捉え、的確な対応をしていくのも矯正治療の重要な役割です。歯やあごの状態によっては、治療を始めるまで数年待つ場合もあります。「治療期間はどれくらいかかりますか?」という質問をよく受けますが、子どもの矯正は大人の矯正と違って、成長に合わせて時間をかけて行うものですから、「長い付き合い」になるものとお考えください。大まかな目安としては、永久歯が生え揃う中学生ぐらいを一つのゴールと考えることができます。
 小さなお子さんが、自分から「歯並びがおかしい」と感じて「治したい」と訴えるケースはまれです。お子さんの人生を考え、矯正治療に一歩を踏み出すのは親御さんの役割です。矯正治療をして歯並びがきれいになることは、一生にわたってお子さんの健康的な笑顔を支える大切な財産となるはずです。

2018年3月22日木曜日

脳卒中の手がかりとなる症状

ゲスト/札幌宮の沢脳神経外科病院  井上 道夫 医師

脳卒中について教えてください。
 日本人の死因の第4位を占める脳卒中。脳の血管が破れたり(脳出血、くも膜下出血)、詰まる(脳梗塞)ことで、脳が障害を受ける病気です。後遺症も深刻で、高齢者の寝たきりや介護が必要になる原因で最も多いものです。血管は加齢で傷みやすい臓器なので、基本的には年を取るほどかかりやすくなる疾患といえます。
 脳卒中の症状は多岐にわたります。片側の手足にまひやしびれが起こる、ろれつが回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解しにくい、歩けない、ふらふらする、物が2つに見える、視野が大きく欠ける、今まで経験したことのない激しい頭痛がするといった症状です。

自分や周囲の人にそれらの症状が出た時はどうすればいいですか。
 脳卒中は前兆がなく、ある日突然起こり、一刻も早い治療が必要な病気です。脳卒中が疑われる症状が出現したら、発症時刻を確認して急いで救急車を呼んでください。脳卒中のほとんどは血管が詰まる脳梗塞で発症しますが、脳梗塞の症状には特徴があります。手足と言葉の症状が出やすいことです。つまり、突然に、左右どちらかの手足の力が抜ける片麻痺と、言葉がうまくしゃべれなかったりする場合は、脳卒中になった可能性が高いので様子を見たりせずにすぐに救急車を呼ぶことです。「症状は大したことがないので、急がなくてもいい」と自己判断し、受診を翌日に持ち越してしまったため完全に手遅れになってしまうケースも少なくありません。とにかく「速やかに」です。脳卒中の症状は自然によくなることはほとんどなく、むしろ数日のうちに進行することが多いのです。医療が進歩しても脳卒中を完全に治すのは難しいのですが、早い段階で適切な診断・治療につなげれば、点滴治療やリハビリテーションを超早期から行うことにより、後遺症を最小限に抑えることができます。
もちろん、脳卒中の症状は手足のまひと言葉の障害だけでなく、先ほど語ったように多岐にわたり判断が難しいことも多いので、脳卒中を疑ったら医療機関に直接連絡を取るのも一つの手です。脳卒中の専門的な治療を行う医療機関は、各都道府県がリストを作成し、ホームページなどで公表しています。こうした資料にも目を通し、自分が暮らす地域ではどこの医療機関がその役割を担っているのか、24時間体制で相談や受け入れにあたっているかなどについて、健康な時に前もって知っておくことが大切です。
 また、札幌市では24時間365日、市民からの救急医療相談に看護師が対応する電話による相談窓口「救急安心センターさっぽろ」を運営しています。急に具合が悪くなった時など、救急車を呼んだ方がいいのか、様子を見た方がいいのか判断に迷ったら相談してみるとよいでしょう。

2018年3月14日水曜日

痔の原因と予防

ゲスト/札幌いしやまクリニック 西尾 昭彦 院長

痔について教えてください。
 痔とは肛門部分の疾患の総称で、痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔瘻(あな痔)の3つで外来患者さんの約8割を占めます。
 痔核はいぼができる場所によって、外痔核と内痔核に分類されます。外痔核は肛門の皮膚部分に血栓(血豆)ができるなど痛みを伴います。便秘で力んだり、重いものを持ったりした時に起こります。内痔核は肛門の内側の粘膜にできます。肛門の出口から数センチのところに「クッション」と呼ばれる柔らかい部分があり、水道の蛇口のゴム栓のような役割を果たしていますが、このクッションが腫れたり緩んだりした状態をいいます。トイレが長いことなどで、肛門部分の血液の流れが悪くなり、うっ血をきたすことが主な原因です。痔核ができると肛門は、便と痔核の区別ができなくなり、残便感からトイレが長くなりがちで、さらに痔核が大きくなるという悪循環になります。根治療法として、切らずに治す注射療法と外科手術があります。
 硬い便が肛門の内側の皮膚を傷つける裂肛は、痔の中でも痛い病気の代表格です。裂肛も「痛いからトイレを我慢する→便が硬くなる→切れる」という悪循環になります。繰り返し切れて傷が硬くなると、慢性の状態に移行してしまい手術が必要になるケースもあります。
 肛門の内側の皮膚と、その奥の直腸の粘膜のつなぎ目には、「肛門小窩」というくぼみがあります。このくぼみから入った細菌が炎症を引き起こし、肛門や直腸周囲に膿瘍をつくるのが痔瘻です。治療は、膿瘍のうみが外に出る際につくられるトンネル(痔瘻管)を切除する手術が必要です。

痔の予防法はありますか。
 痔核はトイレを短くすること、裂肛は便が硬くならないようにすること、痔瘻は、下痢をしないことが予防で重要です。良い便を短い時間で出すためには、規則正しい食生活、食物繊維や発酵食品の摂取、適度な水分補給を心掛け、腸内フローラのバランスを整え、おなかの状態を良好にしておくことです。
 それでもおしり・おなかの調子が悪い時は、早めに病院で受診することをお勧めします。痔核の約8割や急性期の裂肛は手術せずに治ります。痛い思いや恥ずかしい思いをするケースはほとんどないことを知ってもらえればと思います。

2018年3月7日水曜日

アルコール依存症

ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院  太田 健介 院長

アルコール依存症について教えてください。
 飲酒のコントロールが効かなくなる病気です。健康を損ね、家庭生活や仕事に支障を来たしても、お酒をやめられません。国内にはアルコール依存症の疑いがある人が約440万人いると推計されています。
 アルコール依存症は薬物依存症の一種です。個人の人格や意志の弱さが原因ではありません。繰り返し飲酒することで、お酒に含まれるエチルアルコールという依存性の薬物に対して、脳の神経細胞に耐性が生じ、飲酒量をコントロールできなくなるのです。ビール、ワイン、日本酒などさまざまなお酒がありますが、すべてにエチルアルコールが入っています。つまり、お酒を飲む人であれば誰でも、気づかないうちに依存症になってしまう可能性があるのです。
 依存症になると、飲酒を原因とする多種の合併症が生じます。例えば、高血圧、高脂血症、肝硬変、認知症などが挙げられます。また、脳卒中や心筋梗塞など、脳や循環器の疾患にかかるリスクも顕著に高くなります。うつ病の合併も頻度が高く、自殺のリスクを高めることも明らかになっています。
 依存症は中高年の男性に多い印象がありますが、高齢者や若年層、さらに女性の患者も増加しています。特に、未成年の飲酒は発達途上の脳への障害が大きく、ほんの数年で依存症になってしまう危険性があります。飲酒に対し寛容といわれる日本社会では、中高生からの酒害教育を行っていく必要があるでしょう。

依存症の治療と予防について教えてください。
 治療には「断酒」が必要です。飲酒のコントロールができない病気ですので、「1日1杯だけ」「土日だけ飲む」などの節酒は困難で、きっぱりやめるしかありません。薬物療法や認知行動療法、断酒会への参加により、断酒につなげていきます。ほかの病気と同じように、軽いうちに治療を始めれば、早期の回復が可能です。重要なのは、病気だと自覚し、正しい知識を得て、有効なやめ方を知ることです。
 依存症の一番の予防は、お酒と病気について正しく知ること。依存症は人生が破綻し、周囲を傷つける「進行性の深刻な病気」であると理解することが大切です。お酒の持つ負の側面を十分に認識し、お酒と安全に付き合っていくことが重要で、それができないのであればお酒をやめるのが安全です。