2018年2月7日水曜日

認知症予防と治療の未来


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 鈴木 啓史 医師

アルツハイマー型認知症について教えてください。
 認知症は、脳の神経細胞が壊れていくことで記憶障害や判断力の低下が現れ、日常生活に支障が生じる病気で、原因や症状によってさまざまな種類に分けられます。中でも全体の3分の2を占めるとされるのがアルツハイマー型認知症で、治療や新薬の開発などで最も重要視されています。
 現在、アルツハイマー型認知症になる原因ははっきりとは分かっていません。国内で承認・使用されている治療薬は4種類ありますが、いずれの薬も残った正常な脳の力を引き出すことで、症状を緩和させたり、進行を遅らせたりするもので、残念ながら根本的に治す薬はありません。
 近年、さまざまな研究・調査から脳内に「アミロイドβ(ベータ)」という特殊なタンパク質がたまることが、発症の有力な原因と考えられています。アミロイドβは本来、消えていくものですが、何らかの要因により脳に蓄積され、「老人斑」という黒いシミをつくります。これが脳の神経細胞を壊し、結果、認知症を引き起こすのです。また、「タウ」と呼ばれるタンパク質の関連も指摘されています。

開発中の薬など最新の情報を教えてください。
 認知症の脳内の変化は、物忘れなど症状が表面化する前に始まっています。アミロイドβなど異常なタンパク質の蓄積は、長い時間をかけて少しずつ進んでいきます。現在、臨床試験が行われている薬剤やワクチンの多くは、アミロイドβやタウの蓄積を食い止めることを目的に開発されています。
 具体的には、脳内にたまるアミロイドβを取り除く薬、脳におけるアミロイドβの産生を抑える薬、神経細胞にできるタウを抑える薬などが臨床試験に入っています。また、認知症が引き起こす神経細胞の死滅を防ぐ薬も、日本とアメリカで開発が進んでいます。これら認知症の病因に基づいた疾患修飾薬(DMT)が近い将来に実用化されるかもしれません。
 治療だけでなく、アルツハイマー型認知症の早期診断に向けた取り組みも進んでいます。検査技術の進歩で、発症前に脳内のアミロイドβの蓄積状況を診断することは可能です(アミロイドPET)。ただし、現時点では保険の適用がなく(自己負担で)高額な検査となります。