2018年2月14日水曜日

白板症


ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

白板症とはどのような病気ですか。
 白板症とは、口腔内の粘膜によくみられる白っぽい病変の総称です。平滑なものやいぼ状に隆起しているもの、赤い部分が混在しているものなどがあり、ガーゼなどでこすっても取れません。患者は50〜70歳代に多く、歯茎や舌の側面の舌縁(ぜつえん)、頬の内側の粘膜によくみられます。通常は痛んだりしみたりせず無症状が多いですが、赤い部分が混在するものでは、痛みを伴います。
 原因は、長期の喫煙や飲酒、ビタミンAやBの不足、合わない義歯や詰め物、過度なブラッシングによる擦過刺激、虫歯による粘膜への刺激などが指摘されていますが、はっきり分かっていません。
 白板症の4〜8%が将来がんになるため、前がん病変ともいわれます。がんになるまで数年〜十数年かかるとされますので、用心は必要ですが、早期に受診すればそれほど心配はいりません。

診断と治療について教えてください。
 口腔内は狭いようで広く、鏡で見ても舌の裏など陰になって見えないところが多いです。加えて、白板症は痛みがないケースが多いので、自分では気付きにくいです。また、自分で白っぽい病変に気付いても口内炎などと区別をつけることは難しいので、病気の発見にはかかりつけの歯科を定期的に受診することが重要です。歯科医は患者さんの口腔内の変化にとても敏感です。
 白板症と同じように口腔内で白くみえる病気には、粘膜に白い部分がレース状に連なる「扁平苔癬(へんぺいたいせん)」や、真菌(カビ)の感染症である「カンジタ症」、良性腫瘍である「乳頭腫」などがあります。組織の一部をとる生検(顕微鏡検査)によって正確な診断が可能で、ほかの病気との区別や、悪性化しやすいか、初期のがんはないかなども調べられます。
 治療法は、ビタミンの服用や禁煙で治癒する場合もありますが、病変を切除するのが最良とされます。ただし、白板症は必ずしもがんになるわけではなく、また、広範囲の病変では切除すると口腔内に機能障害をもたらすリスクもあるので、経過観察を優先し、病変に変化があれば直ちに切除など対処するのも一つの方法です。
 また虫歯の治療や不適合な義歯を直すなどの口腔ケアを徹底し、白板症を予防することも大切です。

2018年2月7日水曜日

認知症予防と治療の未来


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 鈴木 啓史 医師

アルツハイマー型認知症について教えてください。
 認知症は、脳の神経細胞が壊れていくことで記憶障害や判断力の低下が現れ、日常生活に支障が生じる病気で、原因や症状によってさまざまな種類に分けられます。中でも全体の3分の2を占めるとされるのがアルツハイマー型認知症で、治療や新薬の開発などで最も重要視されています。
 現在、アルツハイマー型認知症になる原因ははっきりとは分かっていません。国内で承認・使用されている治療薬は4種類ありますが、いずれの薬も残った正常な脳の力を引き出すことで、症状を緩和させたり、進行を遅らせたりするもので、残念ながら根本的に治す薬はありません。
 近年、さまざまな研究・調査から脳内に「アミロイドβ(ベータ)」という特殊なタンパク質がたまることが、発症の有力な原因と考えられています。アミロイドβは本来、消えていくものですが、何らかの要因により脳に蓄積され、「老人斑」という黒いシミをつくります。これが脳の神経細胞を壊し、結果、認知症を引き起こすのです。また、「タウ」と呼ばれるタンパク質の関連も指摘されています。

開発中の薬など最新の情報を教えてください。
 認知症の脳内の変化は、物忘れなど症状が表面化する前に始まっています。アミロイドβなど異常なタンパク質の蓄積は、長い時間をかけて少しずつ進んでいきます。現在、臨床試験が行われている薬剤やワクチンの多くは、アミロイドβやタウの蓄積を食い止めることを目的に開発されています。
 具体的には、脳内にたまるアミロイドβを取り除く薬、脳におけるアミロイドβの産生を抑える薬、神経細胞にできるタウを抑える薬などが臨床試験に入っています。また、認知症が引き起こす神経細胞の死滅を防ぐ薬も、日本とアメリカで開発が進んでいます。これら認知症の病因に基づいた疾患修飾薬(DMT)が近い将来に実用化されるかもしれません。
 治療だけでなく、アルツハイマー型認知症の早期診断に向けた取り組みも進んでいます。検査技術の進歩で、発症前に脳内のアミロイドβの蓄積状況を診断することは可能です(アミロイドPET)。ただし、現時点では保険の適用がなく(自己負担で)高額な検査となります。