2018年5月23日水曜日

呼気一酸化窒素濃度の測定

ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 院長

呼気中の一酸化窒素濃度からどのようなことが分かりますか。
 1990年代以降の研究により、ぜんそくなどの患者さんは呼気中の一酸化窒素(NO)濃度が高くなることが明らかになりました。一般に呼気NOは喀痰(かくたん)中の好酸球数と相関することから、好酸球性の気道炎症の程度を測定できるバイオマーカーとなっています。実際の測定方法は、機械に一定のスピードで息を吹き込むとNO値が表示されます。値が高いほどアレルギー性の炎症が強いことを表します。
 長引く咳(せき)での受診時、単にかぜに伴う咳なのか、咳ぜんそくの可能性が高いかどうかの診断に役立ちます。咳ぜんそくはぜんそくの前段階の状態であり、アレルギー性の気道炎症が起きています。咳ぜんそくが疑われれば、吸入ステロイド薬による治療が開始されます。肺気腫や慢性気管支炎といった慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)ではNO値は上昇しない傾向があるので、咳ぜんそくやぜんそくとの鑑別にも役立ちます。また、ぜんそくで治療中の患者さんにおいては、現在の治療薬でコントロールできているかどうかの目安になります。

呼気一酸化窒素濃度の測定検査について教えてください。
 測定は一度だけではなく、時々行って値の経過を見ていくことが大切です。例えば、吸入ステロイド薬を続けて、ぜんそくのコントロールがついてくると、NO値は下がってきます。一般的には、正常値は25ppb(1ppbは10億分の1)以下となっています。
 咳ぜんそくでは25~50ppbのことが多く、50 ppb以上ではぜんそくが強く疑われます。しかし、この検査も万能ではなく、咳ぜんそくやぜんそくでも高値にならないことがあります。反対に、ぜんそくでなくても高値になることもあります。例えば、アレルギー性鼻炎やアトピーを合併していると高値になります。また、レタスやホウレンソウなどアルギニンを多く含む食事を取ると高くなります。一方で、習慣的な喫煙や運動後では低めになります。カフェイン、アルコールの摂取により低下することもあります。このように測定時には影響を及ぼす因子を考慮する必要がありますが、息を吹き込むだけの苦痛のない検査で、咳ぜんそくなどのアレルギー性の炎症の程度を簡単に把握できるので、非常に有用な検査といえます。

2018年4月25日水曜日

子どもの歯科矯正治療

ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

子どもの矯正治療について教えてください。
 お子さんの歯並びに矯正が必要かどうか迷う人も多いのではないでしょうか。歯並びを確かめる方法の一つとして、お子さんの口元を顔の正面から観察してみてください。上下の前歯の真ん中の位置が一致していれば安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要があると考えられます。出っ歯や受け口など、上下の顎が前後に大き過ぎたり小さ過ぎたりという骨格的な問題は、一般の方でも気付きやすいですが、左右のずれは発見しにくいものです。
 前後あるいは左右にずれが認められる場合は、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9〜11歳までに矯正治療を行うのが理想的です。就寝時にバイオネーターと呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、寝ている間にずれた顎の骨を中央に移動させます。子どもの成長の力を利用して、無理なく自然にバランスのよい骨格をつくれます。痛みはほとんどなく、日中は装着の必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は半年〜1年が平均で、経過観察のための通院は、1〜3カ月に一度が目安となります。
 ずれの原因はさまざまですが、歯そのものがずれているケースもあり、永久歯がはえそろってからでも治療は可能です。その場合、抜歯する可能性は高くなりますが、きれいに治療できるケースがほとんどです。矯正治療をいつ始めるべきかという判断は非常に難しいので、一度専門医にご相談ください。

家庭でチェックするための別の方法はありますか。
 頬づえやかみ癖、就寝時の姿勢が左右どちらかに大幅に偏っている場合などは、左右のずれを引き起こす原因になることがあります。上下の前歯の位置を確認したら、次は鼻の先端を基準に、鼻の中央に前歯の中心が沿っているかを見てください。ずれの原因は一見して分かるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長時期を逃してしまうので注意が必要です。
 子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置していると、成長に伴い虫歯や歯周病の原因となったり、顎関節にも悪影響を及ぼす恐れがあります。また、大人になってから心理的なストレスの原因となる場合もあります。少しでもおかしいと感じたら、早めに専門医に相談することをお勧めします。

2018年4月11日水曜日

摂食障害

ゲスト/特定医療法人北仁会  いしばし病院 畠上 大樹 医師

摂食障害とはどのような病気ですか。
 摂食障害はさまざまな心理的・社会的な要因から、体重や体型の変化に過度にこだわり、食行動に異常を起こす病気です。10〜20代の若い女性に増加傾向がある一方、中・高齢層にも拡大している現代社会が抱える病の一つです。
 大きく分けて、極端に食事を制限する「拒食症」と、過剰に食べる「過食症」があります。いずれも太ることへの恐怖感を持っており、拒食の反動から過食に変わるケース、拒食と過食を繰り返すケースなどさまざまです。
 摂食障害と同時にうつの症状や、感情、行動、人間関係が不安定になる「境界性人格障害」が現れることがあります。また、摂食障害を抱える女性が、無意識に食料品を万引きしてしまうなどの「病的窃盗」を併発している例も多いです。本人が隠したり、家族や周囲の人も病気に気付かなかったり、適切な治療を受けないまま重症化するケースが多く、摂食障害の死亡率は約5%(栄養失調による合併症など)と精神疾患の中で最も高い数値となっています。毎年、摂食障害が原因で亡くなる方は少なくないのです。

原因や治療について教えてください。
 患者さんのほとんどは、生まれつき繊細な性格・体質であり、自分のことを低く評価し、不安を抱えています。また、完璧主義で、融通の効かない優等生タイプが多いです。やせることを礼賛する社会の風潮も背景にあるでしょう。ただ、摂食障害の原因を特定することは非常に難しいため、原因を無理に探すのではなく、これからどうしていけばよいかを考えていくことが重要です。
 摂食障害の治療は、まず自分を苦しめているのは自分自身ではなく、「病気」であることを認識し、「気の持ちよう」や「本人の努力」だけでどうにかなるような病気ではないと知ることから始まります。周囲の助力と医療機関の助けが不可欠だと理解してもらうのです。
 治療に特効薬はありませんが、精神科や心療内科などの医師とのカウンセリングによる認知行動療法や、自助グループでの対話に効果が認められています。一般的に摂食障害の治療は時間を要することが多いです。一進一退を繰り返しながら徐々に良くなっていきます。回復への道は決して平坦ではありませんが、治る病気です。あせらず、あきらめず、ゆっくりと治療を続けることが第一です。

2018年4月4日水曜日

加齢黄斑変性症

ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長

加齢黄斑変性症とはどのような病気ですか。
 人間の眼は、角膜、水晶体、硝子体(しょうしたい)を通って、網膜の上に像を結んで物を見ます。その中心部は黄斑部と呼ばれ、物を見るために最も重要な部分です。この黄斑部に異常な老化現象が起こり、視力が低下する病気が加齢黄斑変性症です。欧米先進国では50歳以上の失明の主因とされ、日本でも患者数が増加しています。視野の中央がよく見えない、暗く見える、ゆがむといった症状が現れたら、加齢黄斑変性症が疑われます。
 この病気は、網膜に栄養や酸素を供給している脈絡膜から発生する新生血管の有無によって「浸出(しんしゅつ)型」と「萎縮型」とに分けられます。浸出型は、新生血管が発生し、出血などにより網膜が障害されて起こるタイプで、進行が早く、急激に視力が低下していきます。萎縮型は、網膜の細胞が加齢により徐々に萎縮していきます。日本では進行の早い浸出型が多く、急な失明の危険性もあるため、有効な治療法が求められてきました。

治療法について教えてください。
 これまで国内では、光に対する感受性を持つ光感受性物質(ベルテポルフィリン)を、ひじから注射し、新生血管に到達した時、非熱性の半導体レーザーを当てて化学反応を起こさせる「光線力学療法」が、浸出型の治療の中心的役割を果たしてきました。しかし、日本でも新生血管の成長を活発にする物質である血管内皮増殖因子(VEGF)の働きを抑える治療薬が登場し、薬物療法が広がり始めており、いくつかの種類の抗VEGFがあります。
 これは「抗VEGF療法」といい、薬を眼球の硝子体に注射することで、新生血管の増殖や成長を抑えます。基本的には月1回の注射を1~3ヶ月行い、その後症状が悪化するようであれば、再度注射を追加して治療を行っております。抗VEGF療法は視力の維持だけでなく改善効果も期待でき、画期的といえます。ただ一旦大出血を起こし網膜に強い障害が起きた場合は、回復しない事も多いです。薬は保険適用されているものの価格が比較的高く、10回以上も注射をすることが希にあります。また、まれに感染、視力低下、眼痛、出血などの合併症が起こる可能性もあり、費用やリスクも含め、医師と話し合って納得してから治療を受けるようにしましょう。
 いずれにしても、早い時期に治療することが大切です。視界に異変を感じたら、すぐに眼科専門医を受診してください。

2018年3月30日金曜日

子どもの矯正治療の基本のきほん

ゲスト/E-line矯正歯科上野 拓郎 院長

子どもの歯科矯正治療についていろいろ教えてください。
 子どもは成長過程にあるため、矯正治療を始める適切な時期があります。成長する力を利用することで、正しくかめるように骨格を誘導し、スムーズに歯並びやかみ合わせを改善できるからです。矯正歯科に相談する時期は「永久歯が生えてから」と思っている親御さんがいらっしゃるかもしれませんが、それではタイミングを逃してしまう場合があるので、お子さんの就学時にまず一度は受診してみることをお勧めします。この時期にかみ合わせを見ると将来の歯並びが予測できます。はっきりと外見から分かる症例だけでなく、今後おこりうる不正咬合(こうごう)も予測できます。また、適切な時期の治療は、使用できる矯正装置の選択肢が豊富で、一人ひとりに合った治療法を選べるというメリットもあります。
 矯正治療の流れを簡単に紹介します。最初に行うカウンセリングでは、治療方法、期間、費用等についてご説明します。納得し、治療を開始されると決まれば、あらためて必要な検査を行います。この検査の中で最も重要なのは、「頭部X線規格写真」という矯正専用のレントゲン写真です。これを撮る事によってはじめて、正確な矯正治療の診断や方針が立つとも言える大切な検査です。このような検査の後、診断、治療方針を決定し治療開始となります。
 子どもの歯並びやかみ合わせは、成長とともに変化していきます。計画に沿って治療を進めていくのはもちろんですが、そういった口の中に現れるさまざまな変化を捉え、的確な対応をしていくのも矯正治療の重要な役割です。歯やあごの状態によっては、治療を始めるまで数年待つ場合もあります。「治療期間はどれくらいかかりますか?」という質問をよく受けますが、子どもの矯正は大人の矯正と違って、成長に合わせて時間をかけて行うものですから、「長い付き合い」になるものとお考えください。大まかな目安としては、永久歯が生え揃う中学生ぐらいを一つのゴールと考えることができます。
 小さなお子さんが、自分から「歯並びがおかしい」と感じて「治したい」と訴えるケースはまれです。お子さんの人生を考え、矯正治療に一歩を踏み出すのは親御さんの役割です。矯正治療をして歯並びがきれいになることは、一生にわたってお子さんの健康的な笑顔を支える大切な財産となるはずです。

2018年3月22日木曜日

脳卒中の手がかりとなる症状

ゲスト/札幌宮の沢脳神経外科病院  井上 道夫 医師

脳卒中について教えてください。
 日本人の死因の第4位を占める脳卒中。脳の血管が破れたり(脳出血、くも膜下出血)、詰まる(脳梗塞)ことで、脳が障害を受ける病気です。後遺症も深刻で、高齢者の寝たきりや介護が必要になる原因で最も多いものです。血管は加齢で傷みやすい臓器なので、基本的には年を取るほどかかりやすくなる疾患といえます。
 脳卒中の症状は多岐にわたります。片側の手足にまひやしびれが起こる、ろれつが回らない、言葉が出ない、他人の言うことが理解しにくい、歩けない、ふらふらする、物が2つに見える、視野が大きく欠ける、今まで経験したことのない激しい頭痛がするといった症状です。

自分や周囲の人にそれらの症状が出た時はどうすればいいですか。
 脳卒中は前兆がなく、ある日突然起こり、一刻も早い治療が必要な病気です。脳卒中が疑われる症状が出現したら、発症時刻を確認して急いで救急車を呼んでください。脳卒中のほとんどは血管が詰まる脳梗塞で発症しますが、脳梗塞の症状には特徴があります。手足と言葉の症状が出やすいことです。つまり、突然に、左右どちらかの手足の力が抜ける片麻痺と、言葉がうまくしゃべれなかったりする場合は、脳卒中になった可能性が高いので様子を見たりせずにすぐに救急車を呼ぶことです。「症状は大したことがないので、急がなくてもいい」と自己判断し、受診を翌日に持ち越してしまったため完全に手遅れになってしまうケースも少なくありません。とにかく「速やかに」です。脳卒中の症状は自然によくなることはほとんどなく、むしろ数日のうちに進行することが多いのです。医療が進歩しても脳卒中を完全に治すのは難しいのですが、早い段階で適切な診断・治療につなげれば、点滴治療やリハビリテーションを超早期から行うことにより、後遺症を最小限に抑えることができます。
もちろん、脳卒中の症状は手足のまひと言葉の障害だけでなく、先ほど語ったように多岐にわたり判断が難しいことも多いので、脳卒中を疑ったら医療機関に直接連絡を取るのも一つの手です。脳卒中の専門的な治療を行う医療機関は、各都道府県がリストを作成し、ホームページなどで公表しています。こうした資料にも目を通し、自分が暮らす地域ではどこの医療機関がその役割を担っているのか、24時間体制で相談や受け入れにあたっているかなどについて、健康な時に前もって知っておくことが大切です。
 また、札幌市では24時間365日、市民からの救急医療相談に看護師が対応する電話による相談窓口「救急安心センターさっぽろ」を運営しています。急に具合が悪くなった時など、救急車を呼んだ方がいいのか、様子を見た方がいいのか判断に迷ったら相談してみるとよいでしょう。

2018年3月14日水曜日

痔の原因と予防

ゲスト/札幌いしやまクリニック 西尾 昭彦 院長

痔について教えてください。
 痔とは肛門部分の疾患の総称で、痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔瘻(あな痔)の3つで外来患者さんの約8割を占めます。
 痔核はいぼができる場所によって、外痔核と内痔核に分類されます。外痔核は肛門の皮膚部分に血栓(血豆)ができるなど痛みを伴います。便秘で力んだり、重いものを持ったりした時に起こります。内痔核は肛門の内側の粘膜にできます。肛門の出口から数センチのところに「クッション」と呼ばれる柔らかい部分があり、水道の蛇口のゴム栓のような役割を果たしていますが、このクッションが腫れたり緩んだりした状態をいいます。トイレが長いことなどで、肛門部分の血液の流れが悪くなり、うっ血をきたすことが主な原因です。痔核ができると肛門は、便と痔核の区別ができなくなり、残便感からトイレが長くなりがちで、さらに痔核が大きくなるという悪循環になります。根治療法として、切らずに治す注射療法と外科手術があります。
 硬い便が肛門の内側の皮膚を傷つける裂肛は、痔の中でも痛い病気の代表格です。裂肛も「痛いからトイレを我慢する→便が硬くなる→切れる」という悪循環になります。繰り返し切れて傷が硬くなると、慢性の状態に移行してしまい手術が必要になるケースもあります。
 肛門の内側の皮膚と、その奥の直腸の粘膜のつなぎ目には、「肛門小窩」というくぼみがあります。このくぼみから入った細菌が炎症を引き起こし、肛門や直腸周囲に膿瘍をつくるのが痔瘻です。治療は、膿瘍のうみが外に出る際につくられるトンネル(痔瘻管)を切除する手術が必要です。

痔の予防法はありますか。
 痔核はトイレを短くすること、裂肛は便が硬くならないようにすること、痔瘻は、下痢をしないことが予防で重要です。良い便を短い時間で出すためには、規則正しい食生活、食物繊維や発酵食品の摂取、適度な水分補給を心掛け、腸内フローラのバランスを整え、おなかの状態を良好にしておくことです。
 それでもおしり・おなかの調子が悪い時は、早めに病院で受診することをお勧めします。痔核の約8割や急性期の裂肛は手術せずに治ります。痛い思いや恥ずかしい思いをするケースはほとんどないことを知ってもらえればと思います。

2018年3月7日水曜日

アルコール依存症

ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院  太田 健介 院長

アルコール依存症について教えてください。
 飲酒のコントロールが効かなくなる病気です。健康を損ね、家庭生活や仕事に支障を来たしても、お酒をやめられません。国内にはアルコール依存症の疑いがある人が約440万人いると推計されています。
 アルコール依存症は薬物依存症の一種です。個人の人格や意志の弱さが原因ではありません。繰り返し飲酒することで、お酒に含まれるエチルアルコールという依存性の薬物に対して、脳の神経細胞に耐性が生じ、飲酒量をコントロールできなくなるのです。ビール、ワイン、日本酒などさまざまなお酒がありますが、すべてにエチルアルコールが入っています。つまり、お酒を飲む人であれば誰でも、気づかないうちに依存症になってしまう可能性があるのです。
 依存症になると、飲酒を原因とする多種の合併症が生じます。例えば、高血圧、高脂血症、肝硬変、認知症などが挙げられます。また、脳卒中や心筋梗塞など、脳や循環器の疾患にかかるリスクも顕著に高くなります。うつ病の合併も頻度が高く、自殺のリスクを高めることも明らかになっています。
 依存症は中高年の男性に多い印象がありますが、高齢者や若年層、さらに女性の患者も増加しています。特に、未成年の飲酒は発達途上の脳への障害が大きく、ほんの数年で依存症になってしまう危険性があります。飲酒に対し寛容といわれる日本社会では、中高生からの酒害教育を行っていく必要があるでしょう。

依存症の治療と予防について教えてください。
 治療には「断酒」が必要です。飲酒のコントロールができない病気ですので、「1日1杯だけ」「土日だけ飲む」などの節酒は困難で、きっぱりやめるしかありません。薬物療法や認知行動療法、断酒会への参加により、断酒につなげていきます。ほかの病気と同じように、軽いうちに治療を始めれば、早期の回復が可能です。重要なのは、病気だと自覚し、正しい知識を得て、有効なやめ方を知ることです。
 依存症の一番の予防は、お酒と病気について正しく知ること。依存症は人生が破綻し、周囲を傷つける「進行性の深刻な病気」であると理解することが大切です。お酒の持つ負の側面を十分に認識し、お酒と安全に付き合っていくことが重要で、それができないのであればお酒をやめるのが安全です。

2018年2月28日水曜日

慢性頭痛

ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 院長

頭痛の原因について教えてください。
 頭痛に悩み、「頭の痛みの原因は何なのか?」「何か悪い病気が隠れているのではないか?」と心配され、病院を訪れる方が増えています。不安は痛みを増強させますので、頭痛に対する正しい理解を得ることが重要です。
 頭痛にはさまざまな種類がありますが、大まかに「怖い頭痛」と「怖くない頭痛」に分けることができます。怖いのは、例えば「くも膜下出血」や「脳腫瘍」といった命にかかわる病気の症状としての頭痛です。われわれ医師は、頭痛の患者さんを診るときは、まず他の重篤な病気が隠れていないかを調べるのに時間をかけます。
 頭痛持ちと呼ばれる方の多くは、怖くない頭痛のケースが大半で、脳に病気がないのに繰り返し症状が起こる「慢性頭痛」と考えられます。先ほどの「怖い頭痛」とは違い、コンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)などの画像検査でも異常は出ません。国内では4人に1人が慢性頭痛を患っているとされます。痛みの程度は人それぞれですが、寝込んでしまうほどの痛みなど、日常生活に支障を来す場合もあります。日本では、慢性頭痛が病気であるという認識が薄いため、周囲の理解が得られず、患者さんの苦しみがより大きくなることもあります。

慢性頭痛について教えてください。
 慢性頭痛もまたいくつかに分類されますが、その7〜8割を占め、男女差なく最も多く認められるのが「緊張型頭痛」です。人間の頭は大きく重く、それを支える骨や筋肉には大きな負担がかかります。長時間同じ姿勢でいることや運動不足に加えて、精神的なストレスが引き起こす、背中から肩、首にかけての筋肉のこわばりによる頭痛です。ストレッチ体操やヨガなどで筋肉を和らげることが治療にも予防にも効果的です。
 「片頭痛」も慢性頭痛の一つです。目の奥や側頭部、後頭部などがズキンズキンと痛みます。頭がギューっと締め付けられるように感じたり、吐き気を伴ったりするなど、辛い頭痛の代表といえます。視界にキラキラ光るものが見えるなど、特徴的な前兆を伴うケースもあります。鎮痛剤が効かないほどの痛みに悩まされることも多く厄介ではありますが、それが「いつもの痛み方」であれば、怖くはない(命には別状がない)頭痛です。片頭痛専用の良い薬があり、適切なタイミングで使うと非常に有効です。

2018年2月23日金曜日

風邪(かぜ症候群

ゲスト/医療法人社団 大道内科・呼吸器科クリニック 大道 光秀 院長

風邪について詳しく教えてください。
 冬将軍が到来し、空気が乾燥するこの時期は、「風邪の季節」でもあります。風邪(かぜ)とは、実は単一の病名ではなく、いろいろな症状が重なった症候群(しょうこうぐん)なのです。だから一口に風邪といっても、くしゃみや鼻水、せき、のどの痛みなどを主な症状とする風邪から、せきのひどい気管支炎や、高熱、頭痛、からだのだるさ、ふしぶしの痛みなどの強い全身症状を伴うインフルエンザまで、さまざまなタイプがあります。ただ最近ではインフルエンザをすみやかに診断する検査法があるので、検査で陽性の場合、風邪とはいわずにインフルエンザと言います。
 風邪の症状を起こす微生物(病原菌)の80〜90%がウイルスによるものです。主なものは10種類ほどといわれ、冬はインフルエンザ(A、B)、RS、夏はコクサッキー、エコー、エンテロ、通年型としてはパラインフルエンザ、アデノ、季節とはあまり関係ないものとしてはライノ、コロナウイルスなどがあります。ただ、現在のところインフルエンザウイルスを除き、ウイルス感染症に有効な薬剤はありません。ですから「風邪薬」というのは、くしゃみや鼻水、せきなどの症状をやわらげる薬であり、ウイルスを殺す薬ではないのです。いわんや風邪の予防薬でもありません。インフルエンザワクチンは、インフルエンザウイルスの予防注射であって、風邪の予防注射ではありません。

病院を受診する際、気をつけたいポイントを教えてください。
 病院では、患者さんの症状にあわせて、鼻水止め、せき止め、痛み止め、解熱剤などの効果を有する薬を処方します。ですから、ただ「風邪をひいたので風邪薬をください」というのではなく、自分の症状をきちんと医師に伝えることが大切です。
 詳しい症状がわからなければ、薬の出しようがありません。それどころか、本当に風邪なのかさえわからないこともあります。せきやたんを症状とする病気には、肺炎や結核、肺がん、気管支ぜんそく、間質性肺炎などがあり、また発熱を症状とする病気には、膠原病や悪性リンパ腫、悪性腫瘍などがあります。命にかかわる病気が隠れているケースも多く、きちんと症状を伝えないと、手遅れになってしまうこともあるのです。
 病院を受診する際は、面倒でも、いつからどんな症状が出てきたのかをできるだけ詳しく伝えましょう。前もって、症状を記したメモなどを用意し、医師に見せるとより的確に診断、治療してもらえるはずです。

2018年2月14日水曜日

白板症


ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長

白板症とはどのような病気ですか。
 白板症とは、口腔内の粘膜によくみられる白っぽい病変の総称です。平滑なものやいぼ状に隆起しているもの、赤い部分が混在しているものなどがあり、ガーゼなどでこすっても取れません。患者は50〜70歳代に多く、歯茎や舌の側面の舌縁(ぜつえん)、頬の内側の粘膜によくみられます。通常は痛んだりしみたりせず無症状が多いですが、赤い部分が混在するものでは、痛みを伴います。
 原因は、長期の喫煙や飲酒、ビタミンAやBの不足、合わない義歯や詰め物、過度なブラッシングによる擦過刺激、虫歯による粘膜への刺激などが指摘されていますが、はっきり分かっていません。
 白板症の4〜8%が将来がんになるため、前がん病変ともいわれます。がんになるまで数年〜十数年かかるとされますので、用心は必要ですが、早期に受診すればそれほど心配はいりません。

診断と治療について教えてください。
 口腔内は狭いようで広く、鏡で見ても舌の裏など陰になって見えないところが多いです。加えて、白板症は痛みがないケースが多いので、自分では気付きにくいです。また、自分で白っぽい病変に気付いても口内炎などと区別をつけることは難しいので、病気の発見にはかかりつけの歯科を定期的に受診することが重要です。歯科医は患者さんの口腔内の変化にとても敏感です。
 白板症と同じように口腔内で白くみえる病気には、粘膜に白い部分がレース状に連なる「扁平苔癬(へんぺいたいせん)」や、真菌(カビ)の感染症である「カンジタ症」、良性腫瘍である「乳頭腫」などがあります。組織の一部をとる生検(顕微鏡検査)によって正確な診断が可能で、ほかの病気との区別や、悪性化しやすいか、初期のがんはないかなども調べられます。
 治療法は、ビタミンの服用や禁煙で治癒する場合もありますが、病変を切除するのが最良とされます。ただし、白板症は必ずしもがんになるわけではなく、また、広範囲の病変では切除すると口腔内に機能障害をもたらすリスクもあるので、経過観察を優先し、病変に変化があれば直ちに切除など対処するのも一つの方法です。
 また虫歯の治療や不適合な義歯を直すなどの口腔ケアを徹底し、白板症を予防することも大切です。

2018年2月7日水曜日

認知症予防と治療の未来


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 鈴木 啓史 医師

アルツハイマー型認知症について教えてください。
 認知症は、脳の神経細胞が壊れていくことで記憶障害や判断力の低下が現れ、日常生活に支障が生じる病気で、原因や症状によってさまざまな種類に分けられます。中でも全体の3分の2を占めるとされるのがアルツハイマー型認知症で、治療や新薬の開発などで最も重要視されています。
 現在、アルツハイマー型認知症になる原因ははっきりとは分かっていません。国内で承認・使用されている治療薬は4種類ありますが、いずれの薬も残った正常な脳の力を引き出すことで、症状を緩和させたり、進行を遅らせたりするもので、残念ながら根本的に治す薬はありません。
 近年、さまざまな研究・調査から脳内に「アミロイドβ(ベータ)」という特殊なタンパク質がたまることが、発症の有力な原因と考えられています。アミロイドβは本来、消えていくものですが、何らかの要因により脳に蓄積され、「老人斑」という黒いシミをつくります。これが脳の神経細胞を壊し、結果、認知症を引き起こすのです。また、「タウ」と呼ばれるタンパク質の関連も指摘されています。

開発中の薬など最新の情報を教えてください。
 認知症の脳内の変化は、物忘れなど症状が表面化する前に始まっています。アミロイドβなど異常なタンパク質の蓄積は、長い時間をかけて少しずつ進んでいきます。現在、臨床試験が行われている薬剤やワクチンの多くは、アミロイドβやタウの蓄積を食い止めることを目的に開発されています。
 具体的には、脳内にたまるアミロイドβを取り除く薬、脳におけるアミロイドβの産生を抑える薬、神経細胞にできるタウを抑える薬などが臨床試験に入っています。また、認知症が引き起こす神経細胞の死滅を防ぐ薬も、日本とアメリカで開発が進んでいます。これら認知症の病因に基づいた疾患修飾薬(DMT)が近い将来に実用化されるかもしれません。
 治療だけでなく、アルツハイマー型認知症の早期診断に向けた取り組みも進んでいます。検査技術の進歩で、発症前に脳内のアミロイドβの蓄積状況を診断することは可能です(アミロイドPET)。ただし、現時点では保険の適用がなく(自己負担で)高額な検査となります。

2018年1月31日水曜日

変形性ひざ関節症


ゲスト/医療法人知仁会 八木整形外科病院 八木 知徳 理事長・院長

変形性ひざ関節症とはどのような病気ですか。
 50、60代の人が抱えるひざの痛みで最も多いのが変形性ひざ関節症です。関節の中で骨の表面を覆っている軟骨が、老化やけがによりすり減ることで発症します。
 初期症状は、立ち上がりや歩き始めといった動作を始める時、階段の上り下りの時などに感じる痛みや違和感で、しばらく休むと痛みがなくなる場合がほとんどです。症状が進むと、安静にしていても痛みが治りにくくなります。炎症のために水がたまったり、悪化に伴ってひざが見た目に大きく変形することもあります。
 関節軟骨は一度すり減ってしまうと、完全に元の状態には戻りません。しかし、早期に治療を開始することで、症状の進行を抑え、ひざの痛みや日常生活の不便を軽減することができます。少しでもひざに不安を感じたなら、まずは一度、整形外科でひざの診察を受けるようにしてください。

治療について教えてください。
 エックス線、MRIを撮ると症状の程度がおおよそ判明します。
 痛みが比較的軽く、画像診断でも軽症と診断されれば、関節軟骨の保護・潤滑作用のあるヒアルロン酸をひざに注射したり、肥満解消のための食事や筋力をつける運動を指導したりする保存的治療を行います。
 保存的治療で痛みが改善されない時は、手術で対処します。関節鏡で、老化して傷ついた半月板を取り除く手術、すねの骨を削って、O脚をややX脚に矯正することで、関節にかかる力を分散させる手術(高位脛骨骨切り術)、さらに重症な場合、変形した関節の一部または全部を人工関節に置き換える手術(人工ひざ関節置換術)などを行います。人工ひざ関節の手術を勧める目安としては、「一人で買い物に行けない」「階段の上り下りができない」「他の人と一緒のペースで行動できないので、旅行などに行けない」といった状況にあることが挙げられます。
 自分のひざを温存できるのが骨切り術の利点ですが、高齢の方の場合、骨の再生力が弱く適用できないケースもあります。術後数週間で歩けるようになり、痛みがほぼ確実に解消される人工ひざ関節置換術ですが、人工関節の摩耗などから再手術しなければならないケースもあります。このように治療法にはそれぞれ長所と短所があり、症状のみならず自分のライフスタイルを考えて、医師とよく相談して決めることが重要です。

2018年1月24日水曜日

関節リウマチと骨粗しょう症


ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 古崎 章 副院長

関節リウマチと骨粗しょう症との関係について教えてください。
 免疫の異常により、関節を構成する滑膜という組織で炎症が起き、腫れや痛みが起こり、進行すると骨が破壊され関節が変形してしまう関節リウマチ。治りにくい病気でしたが、治療の進歩で、症状が落ち着き進行しない「寛解」も目指せるようになってきました。
 一方、骨粗しょう症は「いつのまにか骨折」で知られるように、無症状で進み、次々と胸椎や腰椎の圧迫骨折をきたし、生活の質を著しく悪化させます。骨折の治療が長引き身体機能が低下し、そのまま寝たきりになるなど介護が必要になるおそれもあるなど、骨粗しょう症の怖さは、骨折や転倒がきっかけで「健康寿命」を短くしてしまうことにあります。
 関節リウマチの患者さんは病態的に骨粗しょう症になりやすいと考えられ、また関節リウマチは40〜50歳代の女性に発症することが多く、この時期は閉経に伴う骨密度の低下を来たし始める年代とされています。さらに、関節リウマチの治療に使われるステロイドですが、飲み続けると、骨がもろくなる場合が多いことが知られています。
 つまり、関節リウマチの患者さんは「病態的」にも「年齢的」にも「治療的」にも、骨粗しょう症になりやすい状態にあるので、関節炎のコントロールはもとより、骨粗しょう症の予防や治療も必要になります。

骨粗しょう症に対する対策や治療について教えてください。
 骨粗しょう症は、年齢や遺伝などの避けられないリスクだけではなく、喫煙や過度の飲酒、偏った食生活、運動不足など、日々の生活習慣の積み重ねも関係して発症するので、今の自分に当てはまるリスクに注意しながら生活改善に取り組み、定期的に骨量(骨密度)測定など検診を受けることが大切です。
 治療の中心は薬物療法です。骨形成(骨が作られること)を促す薬と、骨吸収(骨が壊されること)を抑える薬など、様々な治療薬があります。特に、抗ランクル抗体薬と呼ばれる薬は、骨密度の上昇や骨折の予防効果を有するほかに、関節リウマチでみられる骨びらん(骨の一部が欠けていること)を改善させる効果もあり、2017年7月より関節リウマチの治療にも適用が拡大されました。それぞれの薬に長所短所があるので、医師とよく相談して治療薬を選択してください。

2018年1月17日水曜日

緑内障診療ガイドラインの改訂のポイント


ゲスト/ふじた眼科クリニック 藤田 南都也 院長

緑内障診療ガイドラインについて教えてください。 
 眼圧が上昇し、視神経が損傷を受けて視野が欠けていく緑内障。国内では40歳以上の20人に1人が発症し、中途失明の上位疾患の一つとなっています。主な治療は眼圧を下げる点眼薬で、きちんと継続すれば進行を止めたり遅らせたりして失明を免れることも十分可能です。最近は点眼薬の種類も増え、一層治療の幅が広がっています。
 近年、緑内障の診断、治療に関する知識や手段の発展は目覚ましいものがありますが、眼科医が日常診療において緑内障の患者さんを前にして、常に時代の水準に合致した適切な診療を行うための指針が、日本緑内障学会が編集・出版する「緑内障診療ガイドライン」です。2012年に第3版が刊行されてから5年が経過し、現在その改訂作業が進められているところです。

改訂のポイントについて教えてください。
 第3版が刊行された当時、「発達緑内障」と呼ばれる小児の緑内障については詳細な診断基準がありませんでしたが、改訂版では、発達緑内障という言葉はなくなり、小児緑内障は大きく「原発小児緑内障」と「続発小児緑内障」に二分されることになりました。
 もう一つのポイントは、これまで専門家の間でプレペリメトリー緑内障(PPG)と呼ばれていた、視野検査に異常が出る前段階を「前視野緑内障」と位置付けたことです。改訂前の緑内障の診断基準では、形態学的な変化と、視野の異常という機能的な変化がそろっていることが必要でした。しかし、近年、光干渉断層計(OCT)検査が普及し、網膜の神経線維の厚みの変化をより正確に判定できるようになったため、形態学的な変化・異常がありながらも、通常の視野検査でまだ視野欠損を認めない状態のPPGの診断がつくようになったという背景があります。
 PPGは原則的には無治療で慎重に経過観察されることも多かったのですが、緑内障患者さんにおいて視野障害が現れた時点ではすでに多くの方が網膜に障害を受けていることも分かっています。PPGが前視野緑内障と名付けられたことで、視野に異常が出る前のより網膜の障害が軽い状態から点眼治療を開始するケースが増え、緑内障の患者さん、そして潜在患者さんの視機能の質の維持につながる改訂になったといえるでしょう。

2018年1月10日水曜日

発達障害


ゲスト/医療法人社団五稜会病院  中島 公博 理事長

発達障害について教えてください。
 近年、発達障害という言葉をあちこちで耳にするようになりました。発達障害は、気持ちを読み取るのが困難な「自閉症スペクトラム障害(アスペルガー症候群など)」、読み書きなどが極端に苦手な「学習障害」、気が散りやすい「注意欠如多動性障害」などの総称です。外見からは分かりづらく、厚労省によると、発達障害の人は疑いを含めて約700万人に上ります。
 生まれつき、脳の働き方がほかの人と異なるために起こるもので、くわしいメカニズムは分かっていません。子育ての方法が悪いからではなく、また、心の病気とも違います。
 発達障害のある人は、家庭や学校や職場でさまざまな困難を抱えているケースが多いです。周囲からはやる気がないとか、いいかげんとか思われやすく、また、理解されにくく、誤解されやすく、孤立しやすく、“生きづらさ”を感じていることが多いです。また、発達障害はそれぞれの特性に合った支援や周囲の理解が得られないと、うつ病やパニック障害などを併発することもあります。発達障害に「ここから」という明確な境界線はありません。診断を受けるほどではないが、発達障害の傾向があり、日常生活に困っている人も多いと考えられます。

診療について教えてください。
 自身や家族、周囲の方の“生きづらさ”の原因が発達障害にあるのではないかと感じたら、ぜひ精神科など身近な専門機関に相談してほしいです。病名を恐れて診察を避けるのはマイナスです。例えば、子どもに発達障害がある場合、早い時期に適切な対応を開始することで、発達の偏り自体は変わらなくても、その人らしい成長を支え、不適応を軽減できることがわかってきました。
 大人になってから障害に気付く人もいます。本人や家族の声に丁寧に耳を傾けながら、“生きづらさ”を少しでも減らす努力と工夫を重ねていきます。周囲の協力も得ながら、仕事や対人コミュニケーションで、どうすればうまくやっていけるかを考えていきます。
 診療や対応の基本は「みんな違って、みんないい」です。発達障害の特徴をむしろ良さとして発揮している人も多いです。周囲の配慮により円滑に仕事をこなす人もいれば、興味ある分野で才能を伸ばす人もいます。