2017年9月6日水曜日

高齢者のうつ病


ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院  太田 健介 院長

高齢者のうつ病について教えてください。
 うつ病は、環境の大きな変化が発病の引き金になるケースが多く、初老期以降は定年退職や配偶者の死亡といったさまざまな喪失体験、一人暮らしの寂しさ、体力の衰えや健康への不安などうつ病にかかりやすい条件が重なります。高齢者人口の増加に伴い、患者数は増加傾向にあります。
 高齢者のうつ病には特徴的な症状があります。まず、気分の落ち込みなど心の不調よりも、頭痛や腹痛、めまい、排尿困難など身体症状を多く訴えます。内科などで検査を受けても原因が見当たらず、精神科や心療内科を受診してみたらうつ病と診断されたというケースもあります。
 また、皮膚を針やナイフで刺されるといった、身体にあるはずのない異常を感じる「体感幻覚」や、現実ではないことを現実だと思ってしまう「妄想」も、この年齢層に多い精神病性うつ病の特徴の一つです。妄想には、自分は不治の病にかかってしまったと思い込む「心気妄想」、周りに迷惑をかけていると強く思う「罪業妄想」、お金がなくて生きていけないと思い込む「貧困妄想」などがあります。

診断と治療について教えてください。
 うつ病は、心疾患や脳血管疾患、甲状腺機能低下症のような身体的な病気が原因で現れることもあります。アルコールやステロイドなど、薬物の副作用によるうつ状態も考えられます。一見、認知症かと思われる言動がうつ病の症状であったり(仮性認知症)、うつ状態が認知症の前駆症状であることもあります。このように、うつ状態は、うつ病以外にも多くの病気で現れるので、問診で症状を詳しく聞き、場合によっては別の病気が隠れていないか調べる検査(MRIやCTなどの画像検査、認知症検査など)を行います。
 治療の柱になるのは薬物療法です。高齢者の治療では副作用の観点から、薬は少量から始め、必要に応じて増やしていきます。これに併せて、休養が必要な方では、ゆっくり休めるような環境をつくること、居場所や相談相手をつくることなど環境調整や、認知行動療法などの心理療法、運動を行います。精神病性うつ病など薬物療法の効果が少ないケースでは、修正型電気けいれん療法が有効な場合も多いです。
 高齢者のうつ病は、本人も周囲の人も年齢のせいだろうと見過ごしてしまい、受診が遅れがちです。異変に気付いたら、すぐに専門的な診察を受けることが大切です。