2017年6月28日水曜日

過敏性腸症候群と腸内細菌のかかわり


ゲスト/琴似駅前内科クリニック 高柳 典弘 院長

過敏性腸症候群とはどのような病気ですか。
 過敏性腸症候群は、腸に原因となる異常が見当たらないのに腹痛や腹部の不快感、下痢、便秘といった便通異常が起こるのが特徴です。命にかかわる病気ではありませんが、日常生活の質を著しく低下させます。消化器科を受診する人の3割がこの病気という報告もあり、消化器の分野では「21世紀に遺された病気」として病態の解明と治療法の確立が課題とされています。
 最近の研究から、腸内細菌のバランスの乱れが原因の一つではないかと考えられるようになってきました。腸内に悪玉菌が増えると腹痛や腹部の不快感といった知覚過敏が起きやすくなること、また、抗生物質が治療に有効であることなどが報告されています。
 腸と脳とは密接な関連があります。脳の中枢神経は、腸の運動や分泌、免疫機能、血液の流れなどを調節し、腸からも脳にさまざまな情報が伝達されています。私たちがストレスを感じると、脳から腸にその情報が伝えられ、腸の運動を亢進させるだけでなく、腸内細菌のバランスにも影響を及ぼすのです。

過敏性腸症候群の治療について教えてください。
 過敏性腸症候群は、下痢症状が多いタイプ、便秘症状が多いタイプ、下痢と便秘の症状を繰り返すタイプなどに分けられます。治療の第1ステップは、食事の指導と生活習慣の改善です。昼夜逆転や夜型の生活スタイル、不規則な食生活、睡眠不足は腸に悪影響を与え症状を増悪させるからです。症状によっては、便を適度な硬さに調整したり、腸のぜん動運動を起こしやすくしたりする薬剤を用いることもあります。
 腸の健康を保つには、善玉菌が増える環境を整えてあげることが重要なポイントです。ヨーグルトや乳酸菌飲料を摂取すれば大丈夫と思いがちですが、口から摂取して腸にたどり着ける乳酸菌の数は限られますので、野菜や芋、豆、海藻類、果物など食物繊維を多く含んだ食品をとることも心掛けるなど、乳酸菌など善玉菌の働きを促進させるような環境をつくってあげることも必要です。
 過敏性腸症候群は、ストレスや生活のリズム・腸内細菌の乱れなどが微妙に関わり合いながら発症します。おなかの不調を感じたら、ストレスと上手に向き合いながら、まず普段の食事内容やバランス、食事時間などを見直してみましょう。

2017年6月21日水曜日

帯状疱疹


ゲスト/宮の森スキンケア診療室 上林 淑人 院長

帯状疱疹とはどのような病気ですか。
 現在では定期予防接種の一つとなっていますが、水ぼうそうに子供の頃かかったことがある人は多いと思います。水ぼうそうが治っても、その原因ウイルスは体内から消えることはなく体の神経節に残って潜伏しています。疲れやストレスなどで免疫力が低下すると、その潜伏していたウイルスが再び活動を開始し、痛みや発赤、水ぶくれを伴った皮疹が出現します。これが「帯状疱疹」です。主に帯状に皮疹が出ることが多いので「帯状疱疹」と言われていますが、顔や頭に出現した場合など、一概に帯状とは言えないことも多く判断が難しく注意が必要です。日常よく見られる皮膚疾患の一つですが、老若男女だれでもかかる可能性があります。また加齢により免疫力が低下するため、高齢化社会の進行に伴い患者数は増加傾向にあります。
 通常は前駆症状として、体の左右どちらか一方に局所的にチクチク、ピリピリとした痛みや違和感が出現し、その後しばらくしてその部位に、赤くむくんだ水ぶくれを伴う皮疹が現れてきます。このような皮疹は体の神経の走行に沿って現れます。顔や頭に出現すると、眼球の角膜炎やめまい、顔面神経の麻痺を起こすこともあり注意が必要です。
 皮疹や痛みなどの症状の程度が強く、神経への障害が大きかった場合、皮膚症状が治まった後も後遺症として痛みが残ってしまうことがあります。これを「帯状疱疹後神経痛」といいます。60歳以上の高齢者に起こりやすい傾向があります。また帯状疱疹の治療が速やかに行われなかった場合に生じやすいとされています。

治療について教えてください。
 治療は、帯状疱疹の原因であるヘルペスウイルスの増殖を抑える薬(抗ウイルス薬)を使用します。内服薬の使用が一般的です。通常1週間内服します。飲み始めて2~3日で効果が現れてきます。痛みや皮疹などの皮膚症状は、治療開始後1~2週間をピークに徐々に快方に向かいます。高齢者は治るのに時間がかかる傾向があります。
 皮疹部の保護や細菌などによる二次感染を防ぐために塗り薬を、痛みと炎症を抑えるために消炎鎮痛薬を併用することが多いです。また、痛みが激しいなど症状が重篤の場合、入院治療が必要になることもあります。
 帯状疱疹後神経痛を防ぐためにも、発症後できるだけ早期の治療が望まれます。帯状疱疹を疑ったら早めに医療機関を受診することが大切です。

2017年6月14日水曜日

統合失調症に対する注射剤による治療


ゲスト/医療法人社団 正心会 岡本病院 岡本 呉賦 院長

統合失調症とその治療について教えてください。
 統合失調症は、考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続き、幻覚や妄想といった症状を伴う精神疾患です。厚生労働省の推計では、国内の患者数は約71万人。発症頻度は100人に1人弱で、決して特殊な病気ではありません。
 症状を抑える抗精神病薬の服用が治療の重要な柱です。現在の主流は1990年代以降登場した「第2世代(非定型)」と呼ばれる薬です。以前の薬「第1世代(定型)」より手の震え、筋肉の硬直などの副作用が少ないという特徴があります。そのほか、抗不安薬や睡眠薬、抗パーキンソン病薬など別の種類の薬を、症状の調整のために併用するケースもあります。ただ、一般的に統合失調症の治療は、薬を何種類も併用するのではなくなるべく少ない種類・量にとどめることが望ましいとされています。
 抗精神病薬には同じ成分の薬でも異なった剤形があります。従来、飲み薬による投与が一般的でしたが、最近はより一歩進んだ治療として薬の効果が長く続く注射剤が注目されています。

薬の効果が長く続く注射剤とはどのようなものですか。
 持続性注射剤といい、1回の注射で2〜4週間効果が持続します。注射剤と聞くと、飲み薬より古い治療法というイメージを持たれる方もいるかもしれません。確かに、以前は特に症状の激しい急性期など、効果を早く得たいときや内服が難しいときに半ば強制的に注射剤を用いるケースなどもありましたが、持続性注射剤はそういった使い方の注射剤とは異なります。
 持続性注射剤を使うメリットとしては、よく薬を飲み忘れる人や毎日の服薬にわずらわしさを感じている人の助けになります。また、飲み薬の種類を減らせるケースが多く、私が診ている患者さんでは、持続性注射剤1剤だけで体調を保っている方も珍しくありません。結果、副作用が少なくなり精神症状が安定することも多く、患者さんの生活の質を高め、社会復帰を後押しする効果もあるといえます。
 持続性注射剤の適正な使い方が広がり、有効な治療の選択肢となることを期待していますが、必ずしも全員に効くわけではありません。従来のような服薬中心の治療が適した患者さんもいます。医師とコミュニケーションをとりながら、自分に最適な薬物療法を見つけることが何よりも重要です。

2017年6月7日水曜日

子どもの歯科矯正治療


ゲスト/宇治矯正歯科クリニック 宇治 正光 院長

子どもの矯正治療について教えてください。
 お子さんの歯並びに矯正が必要かどうか迷う人も多いのではないでしょうか。歯並びを確かめる方法の一つとして、お子さんの口元を顔の正面から観察してみてください。上下の前歯の真ん中の位置が一致していれば安心ですが、ずれている場合は、矯正の必要があると考えられます。出っ歯や受け口など、上下の顎が前後に大き過ぎたり小さ過ぎたりという骨格的な問題は、一般の方でも気付きやすいですが、左右のずれは発見しにくいものです。
 前後あるいは左右にずれが認められる場合は、顎骨(がっこつ)の成長コントロールが可能な9〜11歳までに矯正治療を行うのが理想的です。就寝時にバイオネーターと呼ばれる機能的顎(がく)矯正装置を装着し、寝ている間にずれた顎の骨を中央に移動させます。子どもの成長の力を利用して、無理なく自然にバランスのよい骨格をつくれます。痛みはほとんどなく、日中は装着の必要がありません。ずれの程度にもよりますが、装着期間は半年〜1年が平均で、経過観察のための通院は、1〜3カ月に一度が目安となります。
 ずれの原因はさまざまですが、歯そのものがずれているケースもあり、永久歯がはえそろってからでも治療は可能です。その場合、抜歯する可能性は高くなりますが、きれいに治療できるケースがほとんどです。矯正治療をいつ始めるべきかという判断は非常に難しいので、一度専門医にご相談ください。

家庭でチェックするための別の方法はありますか。
 頬づえやかみ癖、就寝時の姿勢が左右どちらかに大幅に偏っている場合などは、左右のずれを引き起こす原因になることがあります。上下の前歯の位置を確認したら、次は鼻の先端を基準に、鼻の中央に前歯の中心が沿っているかを見てください。ずれの原因は一見して分かるものではなく、万が一、骨格のずれを歯のずれと勘違いして放っておくと、矯正に最適な成長時期を逃してしまうので注意が必要です。
 子どものうちの悪い歯並びやかみ合わせを放置していると、成長に伴い虫歯や歯周病の原因となったり、顎関節にも悪影響を及ぼす恐れがあります。また、大人になってから心理的なストレスの原因となる場合もあります。少しでもおかしいと感じたら、早めに専門医に相談することをお勧めします。

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