2017年5月31日水曜日

多焦点眼内レンズによる白内障治療(眼科領域の先進医療)


ゲスト/大橋眼科 大橋 勉 院長

白内障の治療について教えてください。
 白内障は、瞳の後ろにある水晶体が濁るために起きる視力障害です。治療には点眼薬が投与されますが、最終的には手術が必要です。一般的な手術法は、水晶体を包んでいる袋を残し、袋の中の濁りを超音波で細くして取り除き、代わりに人工の眼内レンズを挿入するものです。安全性の高い手術ですが、それぞれの目によって症状、程度、状況が異なるため、同じ白内障の手術でも難易度に差があります。
 眼内レンズは1つの距離に焦点を合わせた「単焦点眼内レンズ」が使われていますが、近年では、遠距離と近距離の2点に焦点が合うように設計された「多焦点眼内レンズ」も一般的になってきました。─多焦点眼内レンズによる白内障手術について教えてください。
 自由にピントを変えられるような見え方とは異なりますが、遠くにも近くにもメガネなしで焦点が合いやすくなります。場合によってはメガネを必要とするケースもありますが、頻繁に掛け外しをする煩わしさからは解放されます。夜間の光をまぶしく感じたり、暗い場所ではくっきり感が落ちたりするなどの弱点もあるので、どちらのレンズにするかは医師と話し合い、ライフスタイルを考慮して選択することをお勧めします。
 多焦点眼内レンズは2007年に厚労省に認可され、08年に先進医療として承認されました。先進医療とは、厚生労働大臣が保険適用外の先端的な医療技術と保険診療との併用を、一定条件を満たした施設のみに認める医療制度です。先進医療施設に認定された医療機関で、多焦点眼内レンズによる白内障治療を受ける場合、術前術後の診察などに保険が適用となります。また、民間の生命保険の先進医療特約の対象ともなり、先進医療に係る費用が全額給付されるケースもあります。
 14年5月から、厚労省の認可を受け、乱視矯正機能を持たせた多焦点眼内レンズも発売されています。従来の眼内レンズでは矯正不可能であった乱視も、白内障手術と同時に治すことができるようになりました。また、保険外診療となりますが、遠近に加えて中間距離にも焦点の合う「三焦点眼内レンズ」も登場しています。眼内レンズの進化に伴い、白内障手術も視力の質をより一層重視する新しい時代に入ってきました。

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