2016年10月19日水曜日

もの忘れ外来


ゲスト/札幌宮の沢脳神経外科病院  松村 茂樹 院長

もの忘れが気になるときは、どの診療科を受診すればいいのですか。
 「最近どうも忘れっぽい。でも何科を受診すればいいのか分からない。ただの老化現象かもしれないし…」。そう悩んだときに受診してほしいのが「もの忘れ外来」です。脳神経外科、精神科・心療内科、神経内科、老年内科で開設している病院やクリニックが増えてきています。
 皆さんがもの忘れを気にするのは、認知症への不安があるからです。「もの忘れ外来」では、問診と簡単な検査を行うことで、もの忘れの原因を判別し、認知症かどうかを診断します。
 まずは問診票などを使い、日ごろの症状を詳しく聞いたうえで、質問形式の認知機能検査(高次脳機能検査)を行います。これらの結果から認知症の疑いの有無を診ますが、これだけで判断するわけではありません。家庭や社会での生活に支障が出ていないかということも、重要な判断基準になります。さらに、脳のMRIやCTによる画像検査、血流や脳波の検査などを行い、ほかの病気にかかっていないかどうかも調べます。認知症のほかに、うつ病や特発性正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫といった脳の病気が、もの忘れの原因になっているケースもあるからです。
 前日の夕飯に何を食べたのか思い出せなかったり、人の名前が出てこなかったりなど、誰にでも、もの忘れはあるものです。ただ、自分自身についてもそうですが、家族の様子で「認知症では?」と心配になる場合は、老化による年相応のもの忘れなのか、認知症なのか、または別の病気なのかを明らかにするためにも早期の「もの忘れ外来」の受診をお勧めします。

認知症について教えてください。
 認知症は、脳の神経の働きが悪くなることで記憶力や判断力が低下し、生活に支障が出る病気です。認知症には、海馬という記憶を司る脳の部位が萎縮する「アルツハイマー病」、脳卒中が原因の「血管性認知症」、幻視や寝言、パーキンソン病のような症状を伴う「レビー小体型認知症」など、いくつかの種類があります。今のところ認知症は根本的に治すことはできませんが、薬などで症状の進行を抑え、生活機能の維持を目指すことが可能です。
 認知症は早い段階で治療を開始する方が、治療効果を期待できることが分かっています。早期の段階で認知症を発見するために「もの忘れ外来」があるといっていいでしょう。

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