2016年8月10日水曜日

甲状腺の病気


ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 院長

甲状腺の病気について教えてください。
 甲状腺は、首の前面、喉仏の下にあるチョウのような形の臓器です。甲状腺の最も重要な働きは、海藻などの食べ物に含まれるヨードを原料に、甲状腺ホルモンをつくることです。甲状腺ホルモンは、人間の身体の基礎代謝の維持に必要なだけでなく、体の発育にも関係する大切なホルモンの一つで、子どもの成長促進にも欠かせません。
 甲状腺の病気は、大きくは三つのタイプに分けられます。一つは甲状腺の機能が異常に高くなり、ホルモンの分泌が過剰になる甲状腺機能亢進(こうしん)症で、よく知られたバセドー病が大半です。これとは逆に、炎症が起きて機能が低下する病気もあり、代表的なものが橋本病(慢性甲状腺炎)です。三つめは甲状腺の腫瘍で、良性と悪性(がん)のものがあります。
 甲状腺の病気の多くは自己免疫疾患で、本来はウイルスなどの異物を撃退するための免疫系に何らかの異常が生じ、自分の体の組織の一部を抗原として認識してしまうために起きます。基本的には誰にでも起こりえる病気ですが、女性に多く、また、遺伝的な要因が大きく関係するとされています。

甲状腺の病気の検査、治療について教えてください。
 甲状腺ホルモンの分泌が多ければバセドー病の疑いが強まり、逆に少なければ、橋本病による甲状腺機能低下の可能性が高まります。甲状腺ホルモンやある種の抗体などを調べる血液検査、超音波検査やエックス線検査などを組み合わせて、正確な診断が可能になります。一方、腫瘍の診断は、触診、超音波検査、細胞診が三本柱です。
 バセドー病の治療は、抗甲状腺薬の服用が中心となりますが、手術や放射性ヨードの投与による方法もあります。橋本病には、甲状腺ホルモンの補充療法を行います。甲状腺腫瘍は、悪性の場合は進行度に応じた手術を選択します。良性の場合、基本的には経過観察を行いますが、腫瘍が大きい、圧迫などの症状がある、がんが否定しきれないなどのケースでは手術を行うこともあります。
 自覚症状がないことも多く、また症状が出てもほかの病気と間違われやすい甲状腺の病気ですが、早期に診断を確定して適切な治療を受ければ、健康な人と変わらない生活が送れます。家族に甲状腺の病気の方がいる場合は、症状がなくても定期検診をお勧めします。