2016年2月24日水曜日

ストレスチェック制度


ゲスト/医療法人社団五稜会病院  中島 公博 理事長

働く人の心を守るための「ストレスチェック」を事業者に義務付ける制度が、昨年12月1日から始まりました。これはどのような制度ですか。
 昨年改正された労働安全衛生法に基づく制度で、背景には過労やパワハラによる精神疾患での労災認定の増加などがあります。労働者が50人以上の事業者に義務付けられ、道内は約5千の事業者が対象となります。
 制度では、「時間内に仕事が処理しきれない」「ひどく疲れた」など仕事や最近1カ月の状態などについての質問票に従業員が回答。ストレスの状態が数値化され、長時間労働やストレスが多いと「医師による面接指導が必要」と判定され、従業員に伝えられます。本人の了解なしに結果が会社側に知らされることはなく、本人の希望がなければ面接も行われません。関わった職員や医師らは、罰則付きの守秘義務を負います。面接後に医師が必要だと判断すれば、会社は労働時間の短縮や配置転換などの措置を取ることが求められます。

制度の意義と課題について教えてください。
 この制度は、精神的不調を抱える労働者を探し出すことではなく、労働者が自分のストレス状態を知り、うつ病など心のトラブルを未然に防ぐという目的があります。悪化しないうちに十分に休養を取るなど適切に対処すれば、多くの場合で状態は改善します。
 また、事業者は検査を踏まえて、従業員が働きやすい環境を整えることが求められています。心の不調を訴える従業員の多い会社は、他の従業員にしわ寄せが及び、新たな不調者が発生する悪循環に陥りがちです。例えば、部署全体のストレスチェックの結果をまとめて分析、比較すれば、高ストレス者が多い部署が分かり、仕事の進め方を見直すなどの環境改善につなげられます。心の健康を損ない休職、離職する問題が深刻化している現在、制度は職場全体にとっても有意義と考えられます。事業者は、単に検査をするだけでなく、フォローをきちんと行うことが重要です。
 面談などを行う産業医の不足や個人情報の管理の問題、効果的なチェックができるか、従業員が不利益な扱いを受けないかなど課題もありますが、従業員の心の健康を守り、会社の力を十分に引き出すためにも、本制度によるメンタルヘルス対策は非常に有効であると思います。制度の実施を契機に職場全体で対策を進めるとともに、労働者も意義を理解し積極的に検査を受けてほしいです。

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