2016年1月20日水曜日

リウマチ実地診療のあるべき姿


ゲスト/佐川昭リウマチクリニック 佐川 昭 院長

関節リウマチ診療の現在と今後の展望について教えてください。
 関節リウマチの治療目標は「寛解」です。寛解とは、関節リウマチの症状が、ほぼ消えて、病状がコントロールされている状態のことをいいます。2011年に米国リウマチ学会と欧州リウマチ学会が共同で、「T2T(Treat to Target)」で目標にすべき寛解の基準を定めました。T2Tとは、目標に向かって治療を行うという意味で、寛解を目標にした関節リウマチ治療のスローガンとなっています。13年には最新版のリコメンデーション(治療推奨)が発表されました。リコメンデーションは、「関節リウマチの治療は、患者とリウマチ医の合意に基づいて行われるべきである」「炎症を取り除くことが、治療ゴールを達成するために最も重要である」など4つの基本的な考え方と、「関節リウマチ治療の目標は、まず臨床的寛解(炎症反応がなくなり、患者さん本人も、周囲の人も症状を感じていない状態)を達成することである」など10の声明で成り立っています。
 私が考える「リウマチ実地診療のあるべき姿」の基本は、何よりも患者さんを思う心を大切にし、T2Tを守ることを前提に、❶自らがまず健康で楽しく仕事ができる ❷医の倫理を守る ❸責任感を持つ ❹マルチタレントであれ ❺謙虚であれ ❻やる気を持って何でも積極的にやることです。患者さんに対しては、生活面全般でサポートを考えてあげることが大事です。新しい寛解基準や治療目標の確立、早期診断および治療を可能にする関節エコーや生物学的製剤の登場などによって、関節リウマチは「治る」時代に入りました。一方で、患者さんの目には見えない満足度の向上も非常に大切であると考えます。例えば、関節リウマチは治療が長期にわたるため、患者さんにとっては心理的負担も大きく、また、薬価の高い生物学的製剤の導入となれば経済的にも大きな負担となります。これらのさまざまな問題を解決するには、医師以外のメディカルスタッフの協力が必要となります。患者さんが悩んでいること、困っていることをしっかりと受け止めて、目の前の障害を一つずつ解決し、患者さんに心から喜んでもらい、幸せになってもらうという目標を、スタッフ全員が共有する必要があります。患者さんの満足度向上は、多職種によるチーム医療によって達成されるものと思っています。

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