2015年12月16日水曜日

急性期における認知症入院治療


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 森 一也 理事長・院長

急性期における認知症の入院治療の現状について教えてください。
 高齢化が進行し、認知症は、誰もが当事者あるいは介護者となり得る身近な病気になってきました。2015年1月、認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)が策定され、認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で、自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目標としました。このため、早期診断・早期対応を軸とし、認知症に伴う行動・心理症状(BPSD)や身体合併症などが見られる場合にも、医療機関と介護施設が連携し、「発症予防→発症初期→急性増悪(ぞうあく)時→発症中期→人生の最終段階」という認知症の容態の変化に応じた、切れ目のない、その時の容態にふさわしい場所での支援、医療・介護サービスの提供が求められています。
 認知症患者が入院に至るケースではBPSDを伴う場合がほとんどであり、興奮、幻覚、妄想、身体攻撃などが高い頻度で見られます。入院期間が3カ月を越える長期入院に至ったケースでは、身体疾患などの合併症や症状の改善しないBPSDの他に、受入施設がないなどの環境的要因や、家族が関わりを拒否する例もあります。このため、入院時から退院に向けた調整を図り、退院後の受け入れ先の確保や地域で利用できる社会資源の有効活用、家族との積極的な連携が行われることが必要です。
 社会から孤立している高齢者が認知症を発症し、地域での生活が破綻した状態で入院してくるケースも増えています。このような場合、病院側で認知症の治療のみならず、生活基盤の再構築や退院後の受け入れ先の確保まで担うこともあり、結果として退院までに時間がかかってしまうこともあります。行政からの依頼で、精神疾患を持っている未治療の高齢者が入院してくるケースもあり、退院後に必要なサービスや受け入れ先の調整、確保に苦慮することも少なくありません。また、要介護認定に時間がかかり、退院に向けた調整が進まないケースもあります。これらのように、BPSDの治療がうまくいかず入院が長期化するというよりも、それ以外の要因で早期退院ができないケースが多いのが実情です。
 これからの精神科病院は、自らの専門性を究めつつ、適切な役割分担を進め、積極的に地域資源と連携し、認知症の人にやさしい地域づくりに関わっていくことが求められています。