2015年4月22日水曜日

肺炎球菌ワクチンについて


ゲスト/白石内科クリニック 干野 英明 医師

肺炎球菌ワクチンを接種すると、どのような効果があるのですか。
 肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌という細菌によって引き起こされる病気を予防するためのワクチンです。肺炎球菌によって起こる主な病気には、肺炎、気管支炎などの呼吸器感染症や副鼻腔炎、中耳炎、髄膜炎(ずいまくえん)、敗血症などがあります。中でも肺炎球菌による肺炎は、成人の肺炎の25〜40%を占め、最も頻度が高いものです。肺炎は2013年の統計では日本人の死因の第3位であり、特に高齢者では重症化しやすく、生命を脅かす重篤な疾患です。
 肺炎球菌には約90種類の血清型がありますが、そのうちの23種類に対して予防効果を持つのが23価莢膜(きょうまく)多糖体型肺炎球菌ワクチン(PPV23)です。この23種類で肺炎球菌感染症の7〜8割をカバーできるといわれており、現在成人用ワクチンとして広く使用されています。

高齢者を対象とした肺炎球菌ワクチンの定期接種、ワクチンの副反応について教えてください。
 日本では1988年に65歳以上の高齢者を対象にPPV23が認可されましたが、国からの接種費用の補助がなく、患者負担が大きいことなどから、接種率は先進国中最低でした。そのような状況の中、2014年10月から65歳以上の高齢者を対象とする定期接種が開始され、当該年度に65歳から5歳間隔で100歳までと101歳以上の方は、接種料金の一部が公費で負担されるようになりました。また、60歳から65歳未満で心臓、腎臓、呼吸器疾患により、日常生活が極度に制限される方なども対象になりました。
 ワクチンの副反応として5%以上で注射部位の疼痛(とうつう)、腫れ、発赤などが発生しますが、通常は1〜3日で消失します。また、1%未満で倦怠感、発熱、筋肉痛、頭痛などが発生します。ワクチンの効果は5年ほどで下がるとされ、5年後以降に再接種が勧められます。実際に1回しか接種しなかった人に比べると、再接種した人ではその後に高い抗体価が維持されることが分かっています。日本では最近まで、このワクチンの再接種は禁忌とされてきました。それは再接種直後に疼痛などの局所反応が1回目より強く出るためでした。しかし、初回接種から5年以上経過していれば局所反応も1回目と同程度で済むことが分かり、2009年に厚労省はその条件での再接種を可能としました。現在では世界中どの国でも再接種が認められています。

2015年4月15日水曜日

最新の糖尿病治療


ゲスト/医療法人社団 青木内科クリニック 青木 伸 院長

最新の糖尿病治療薬について教えてください。 
糖尿病治療薬の最近の進歩は目覚ましいものがあります。飲み薬では、高血糖の時にだけすい臓からインスリンを分泌させ、正常血糖へ下げる「DPP-4阻害薬」があります。この薬は理論的には低血糖を起こさず治療できる新薬で、糖尿病の平均血糖の指標であるHbA1c値を1.0%前後下げます。この薬と同じ系統の注射薬も登場し、「GLP−1受容体作動薬」と呼ばれています。この注射薬はHbA1c値を1.6%前後下げます。1日1回の注射が必要ですが、現在は1週間に1回で済む注射薬も出ました。この系統の注射薬は、すい臓のインスリンを出す細胞を保護し、インスリンの分泌を弱らせない作用も持ち合わせているといわれています。従来まで体重を減少させる糖尿病薬がありませんでしたが、SGLT-2阻害薬が登場し、この薬剤は血糖を下げると同時に体重を減らします。
 一方、インスリン注射薬に目を向けると、「持効型インスリン(1回の注射で24時間効果を持続する長時間作用型インスリン)」があります。飲み薬の治療が効かなくなる症例でも、飲み薬をそのまま服用しながら、1日1回の持効型インスリンの注射を加えると血糖が改善する症例もあります。「混合型インスリン」は、持続型インスリンと超速攻型インスリンの合剤ですが、超速攻型インスリンの含有率が50〜70%の製剤が最近使用できるようになりました。食後血糖の高い症例を治療するのに便利なインスリンです。

糖尿病の治療について教えてください。
 糖尿病の治療が良好といえる目安はHbA1cが7.0%以下になっている場合です。糖尿病の患者さんの約半数が高血圧と脂質異常症(高脂血症)を合併しているといわれています。糖尿病を合併した高血圧の治療はとても重要で、血圧の治療目標値は125/75mmHg以下です。自宅測定の血圧を治療に役立てる方法もあります。この場合使用する測定器は、指先や手首に巻くタイプのものではなく、上腕に巻くタイプのものをお勧めします。脂質異常症の治療目標値は、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)が120mg/dl以下です。以上のようなさまざまな基準値を長期間保てば、眼底出血(失明)、腎臓の悪化(透析)、足の潰瘍・壊疽(えそ)による足の切断など糖尿病に由来する重症の合併症にならなくて済みます。それ以外にも脳梗塞、心筋梗塞などの予防にもつながります。

2015年4月8日水曜日

統合失調症


ゲスト/医療法人五風会 さっぽろ香雪病院 宇佐見 誠 診療部長

統合失調症とはどのような病気ですか。
 統合失調症は、ないものをあるように感じたり、現実とは異なることを現実だと思い込んだりする幻覚や妄想などの「陽性症状」と、働く意欲が湧かない、他人と話をするのが苦手でおっくうになり、不登校・出社拒否、引きこもりなど自分の世界に閉じこもってしまう「陰性症状」が特徴的な病気です。「何かがおかしい」と不安を感じながらも、幻覚や幻聴、妄想などが病気のせいで起きていると自覚できず、本人が病気の治療をなかなか受け入れにくいことも厄介な点です。
 2011年の厚労省の推計では、全国の患者数は約70万人で、100人に1人の割合で発病するといわれています。10代後半から30代前半での発症が多く、発症しても診断を受けていない人も多数いるとみられます。脳内の神経伝達物質の一つであるドーパミンの過剰な分泌がさまざまな症状を引き起こすとされていますが、根本的な原因はいまだはっきりしていません。
 統合失調症は一進一退を繰り返しながら、多くは快方に向かいますが、中には再発を繰り返したりするなどの難治例もあります。近年は新薬開発や病気の研究が進み、早期に適切な治療とリハビリを行えば、永続的な回復や自立した社会生活も期待できるようになってきました。

統合失調症の治療について教えてください。
 現在の統合失調症の治療は、抗精神病薬による薬物療法が中心で、個々の患者さんに合った種類や量を選択します。いったん回復し安定しても、また症状が悪化したり再発したりするのを防ぐために、服薬をきちんと継続することが重要です。
 症状が安定したら、回復の程度に応じた精神療法やリハビリが行われます。病気に伴う無気力・無関心、対人コミュニケーションの低下などを改善していくため、同じ症状を抱える患者さんをはじめ、医師や看護師らとコミュニケーションを取りながら、あいさつや通常会話ができるといった社会適応能力や生活上起こるさまざまな問題を解決する能力の回復を目指します。入院中は作業療法士などによる作業療法やレクリエーション療法などを行い、外来ではデイケアに通所して、各種の行事や創作的・文化的活動の中で、体力や集中力、他人とのコミュニケーション能力を徐々に回復させます。
 もう一つ大切なのが、家族の支援です。患者さんにとっての最大の支援者は家族であり、適切な支援は本人への大きな力となります。病気について正しい知識を持ち、生活態度や言動に気を配り再発のサインを見逃さないよう心掛けてください。治療は長期間にわたるため、決してせき立てたり期待を掛け過ぎたりせず、途中でくじけないよう本人を勇気づけながら、根気強く接することが大事です。また支える家族も大きなストレスを抱えています。ぜひ同じ立場を経験した人が集う家族会に参加してみてください。同じ悩みを語り合い、互いに支え合うことで家族の気持ちも楽になると思います。