2015年3月4日水曜日

アルコール依存症


ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院  太田 健介 院長

アルコール依存症について教えてください。
 飲酒のコントロールが効かなくなる病気です。健康を損ね、家庭生活や仕事に支障を来しても、お酒をやめることができません。国内にはアルコール依存症の疑いのある人が約440万人いると推計されています。
 アルコール依存症は薬物依存症の一種です。個人の人格や意志の弱さが原因ではありません。繰り返し飲酒することで、お酒に含まれるエチルアルコールという依存性の薬物に対して、脳の神経細胞に耐性が生じ、飲酒量をコントロールできなくなるのです。つまり、お酒を飲む人であれば誰でもかかる可能性のある病気です。
 依存症になると、飲酒を原因とする多種の合併症が生じます。例えば、高血圧、高脂血症、アルコール性肝障害、肝硬変、認知症などが挙げられます。アルコール依存症とうつ病の合併も頻度が高く、お酒に頼る生活が自殺のリスクを高めることも明らかになっています。
 依存症は中高年の男性に多い印象がありますが、若年層や女性の患者も増加しています。特に、未成年の飲酒は発達途上の脳への障害が大きく、ほんの数年で依存症になってしまう危険性があります。飲酒に対し規制が緩やかな日本社会では、中高生からの酒害教育を行っていく必要があるでしょう。

依存症の診断と治療、予防について教えてください。
 依存症の判断基準はいろいろありますが、代表的なものとして「価値観の逆転」があります。大切にしていた家族や仕事、自分の健康より飲酒を優先させる状態のことです。依存症になってしまったら、自分一人の力で抜け出すのは非常に困難で、適切な治療を受けない限り、徐々に悪化していくケースがほとんどです。
 治療には、断酒が必要です。節酒では駄目で、きっぱりやめるしかありません。薬物療法や認知行動療法、断酒会への参加により、断酒につなげていきます。ほかの病気と同じように、軽いうちに治療を始めれば、早期の回復が可能です。重要なのは、病気だと自覚し、正しい知識を得て、有効なやめ方を知ることです。
 依存症の一番の予防は、お酒と病気について正しく知ること。依存症は人生が破綻し、周囲を傷つける進行性の深刻な病気であると理解することが大切です。また、お酒の持つ負の側面を十分に認識し、お酒と安全に付き合っていくことが大切です。

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