2014年9月24日水曜日

おなかの痛み


ゲスト/つちだ消化器循環器内科 土田 敏之 院長

いろいろなおなかの痛みについて教えてください。
 内科小児科一般のクリニックでは、おなかの痛みを訴えて来院される患者さんも多いです。おなかに起こる症状は、腹痛の他、便秘や下痢などの便通異常、おなかが張る、グルグル鳴るといった腹部不快感などがあります。
 子どもの腹痛で最も多いのが便秘症と急性腸炎です。風邪や発熱に伴う腹痛もよくみられます。思春期には受験や友人関係のストレスから、自律神経失調症を引き起こしている場合もあります。赤ちゃんに多いのが腸重積。名前の通り、腸の一部が重なり合ってしまう病気で、早期の治療が必要です。
 大人のおなかの痛みは、さまざまな原因が考えられます。頻度が高いのは急性胃炎、胃潰瘍、胆石症、風邪、感染性腸炎、ぼうこう炎、尿管結石、便秘、急性虫垂炎、腸閉塞(へいそく)、過敏性腸症候群、大腸憩室症などによるものです。まれに子宮外妊娠、子宮付属器炎、慢性前立腺炎、心筋梗塞の患者さんが混じります。

腹痛の部位と病気の種類について教えてください。
 腹痛を部位別に分けると、胃の近く、みぞおちや左上腹部の痛みは胃炎、胃潰瘍のほか、風邪、便秘、膵炎(すいえん)、まれに心筋梗塞が疑われます。刺身など生ものを食した後の激しい胃の痛みは、胃アニサキス症によるものも考えられます。アニサキスは白い糸のような線虫類で、生食して胃に入ると、胃壁に刺さって炎症を起こします。投薬注射の効果はいまひとつで、内視鏡で見つけ、取り出さない限り痛みは取れません。
 右上腹部の痛みは、胆石症や十二指腸炎・潰瘍などが疑われます。右下腹部の痛みは、急性虫垂炎が最も多く、その他便秘や大腸憩室症、感染性腸炎、血尿があれば尿管結石も考えられます。下腹部中央の痛みは、下痢を伴う感染性腸炎やぼうこう炎、子宮付属器炎などが考えられます。感染性腸炎のうちノロウイルス、ロタウイルスについては約15分で分かる迅速検査があり、早期の発見・隔離に役立っています。
 胃・大腸内視鏡でおなかの中をのぞいてみると、胃がん、大腸がん、潰瘍性大腸炎、大腸憩室症、虚血性大腸炎などの発見、鑑別ができます。誰もが経験するおなかの痛みですが、中には深刻な病気の症状として表れる危険な腹痛もありますので、年に一度は胃・大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。

2014年9月17日水曜日

便秘


ゲスト/札幌いしやまクリニック 樽見 研 院長

便秘の原因について教えてください。
 便秘とは、便の排せつが困難になって便が長い期間体内に滞っている状態をいいます。毎日便が出ないといけないと考えている方も多いようですが、排便間隔は個人の環境、体質、生活習慣などによりさまざまです。何日以上便が出ないと便秘なのかと定義づけることは難しいのですが、3日に1回未満もしくは週2回未満の排便回数が便秘の判定の一つの目安となります。便秘症と呼ぶ場合は、おなかの張りや腹痛、残便感、便が硬いなどの不快な症状が出現し、日常生活に支障を来たすため治療の対象になってくるという意味合いが含まれてきます。
 便秘はまず一過性便秘と徐々に進行して慢性化していく慢性便秘に分けられます。一過性便秘は生活環境の変化などで一時的に便秘になることで、自然に改善するので問題にはなりません。慢性便秘で特に注意が必要なのは器質性便秘と呼ばれているものです。これは腸に便の通過を妨げる病気が隠れているために発生する便秘であり、その代表例は大腸がんです。
 器質性便秘以外の慢性便秘は、腸の機能が低下したために起こることが多く、機能性便秘と呼ばれています。機能性便秘はさらに、便意を我慢していることがきっかけでなる直腸性便秘、結腸の緊張が緩んでいてぜん動運動が弱くなってしまうことが原因で起こる結腸性便秘、常用している薬が原因となっている薬剤性便秘などに分類できます。

便秘の治療について教えてください。
 器質性便秘を除いては、食事療法と薬物療法、生活習慣の改善などが治療の基本となります。規則正しい排便習慣を取り戻しながら、便の量を増やし、また軟らかくすることが大切です。食物繊維を多く摂取するように心掛け、下剤を使うのであれば刺激のないタイプを用います。市販の便秘薬の多くには刺激性下剤が含まれているので、連用すると習慣性もあり、自己判断による安易な使用は勧められません。
 結腸性便秘の改善方法は運動することです。特に腹筋運動や骨盤内の筋肉を鍛えるような運動が効果的です。また、1日30分くらいのウオーキングもお勧めです。
 長期間便秘が改善しない場合は、大腸がん以外にも深刻な病気が隠れているケースもあります。一度専門医を受診し、便秘の原因をきちんと見極め、適切な対処を行うようにしましょう。

2014年9月10日水曜日

高齢者のめまい


ゲスト/西さっぽろ脳神経外科クリニック 笹森 孝道 医師

めまいについて教えてください。
 脳神経外科の外来では、めまいを訴えて受診される患者さんが多くいらっしゃいます。初めて経験するめまいは、本人にとっては恐ろしいものです。「天井がぐるぐる回った」「後ろに倒れそうになった」「地震かと思った」「立ち上がったら目の前が暗くなった」などの症状を「めまい」として表現されることが多いようです。その訴えの中にはさまざまな原因が考えられます。
 症例として多いのは内耳障害によるめまいですが、脳の障害で起こる怖いめまいとの鑑別が重要です。症状の強さだけで判断することは禁物です。言葉のもつれや手足の脱力、しびれなどがめまいとともに出ているようなら、脳の障害が疑われます。中には非常に鑑別の難しいめまいもあります。脳の障害によるめまいは極力早く診断し、治療に入る必要がありますが、その際にはMRIによる診断が有用です。

高齢者のめまいはどのような特徴がありますか。
 高齢者は、加齢に伴い平衡感覚や血圧を調節する能力が衰えているので、めまいを起こしやすいです。高血圧や糖尿病などの持病を抱えていることも多く、それらの薬の副作用などでめまいを起こすこともあります。
 高齢者のめまいは、原因を簡単に明らかにできないケースも多いです。例えば、もともと耳鳴りや難聴がある場合のめまいは、必ずしも内耳に原因があるとはいえません。
 起立性低血圧とは、座った状態から立ち上がった時に血圧が低下する状態をいいます。若い人であれば顔が青ざめ、冷や汗が出て、失神してしまう場合もあります。高齢者はこのような激しい反応は起こりにくいとされていますが、反対に少し血圧が下がっただけでもめまいを起こしやすくなります。高齢者は血圧を一定に保つ自律神経の働きが衰えているからです。
 暑い時期は汗をかきやすく、脱水状態になりめまいを起こすこともあります。高齢者はのどの渇きを感じにくくなるため、脱水状態になりやすいです。夜間にトイレに行くのを減らそうと水分補給を控えることがありますが、脱水の予防を考えると好ましくありません。入浴や就寝前にはコップ一杯の水を飲むようにしましょう。
 漢方薬がめまいの症状に有効なことも多いです。長引くめまいに悩まされている人は、ぜひ一度専門医にご相談ください。

2014年9月3日水曜日

依存症


ゲスト/医療法人 耕仁会 札幌太田病院  太田 健介 院長

依存症とはどのような病気ですか。
 依存症は、ある対象物の使用をコントロールできなくなってしまい、社会生活に支障を来たす病気です。飲酒のコントロールが効かなくなるアルコール依存症、危険ドラッグ(脱法ドラッグの新呼称)など薬物依存症、スマートフォンやゲームを長時間使いすぎることで睡眠不足や成績低下など日常生活に支障が出たり、イライラしやすいなどの禁断症状があらわれたりするネット依存症など、さまざまな依存症が社会問題として注目されています。
 若年層や女性のアルコール依存症が増加しています。特に、未成年者の飲酒は発達途上の脳への障害が大きく、ほんの数年で依存症になってしまう危険性があります。また、高齢者のアルコール依存症も増加傾向にあり、特に認知症との合併は臨床的にも大きな問題となっています。
 危険ドラッグによる深刻な依存症も、若年層を中心に急増しています。物によっては覚せい剤より強い毒性、幻覚・興奮作用があり、入院治療が必要になることが多いです。
 厚労省は、ネット依存症の疑いのある成人は約2.6%(270万人)にのぼると推計し、女子中高生の9.9%、男子中高生の6.4%がネット依存の疑いありとしています。依存が進むと、昼夜が逆転する睡眠障害や不規則な食事による栄養失調を引き起こすほか、学校を休みがちになり、引きこもりにつながるケースも見受けられます。

依存症の診断と治療、予防について教えてください。
 依存症の判断基準はいろいろありますが、代表的なものとして「価値観の逆転」があります。大切にしていた家族や仕事、自分の健康より依存の対象となる事柄を優先させる状態のことです。依存症になってしまったら、自分一人の力で抜け出すのは困難です。自らを依存症と気付き、回復を求めなければ、さらに悪化していくことが避けられません。
 治療は薬物療法や認知行動療法、集団治療、自助グループへの参加などにより、依存に歯止めをかけ、依存の対象となる事柄に頼らない生活を目指します。他の病気と同じように、軽いうちに治療を始めれば、早期の回復が可能です。重要なのは、病気だと自覚し、正しい知識を得て、有効なやめ方を実践することです。
 依存症の一番の予防は、病気について正しく知ること。依存症は、自らの人生を破綻に導き、周囲をも傷つける進行性の深刻な病気であると理解することが大切です。