2014年7月9日水曜日
妊娠中の口腔ケア
ゲスト/医療法人社団アスクトース 石丸歯科診療所 近藤 誉一郎院長
妊娠すると、口の中ではどんな症状が多く出るのですか。
「一子を生むと、一歯を失う」ということわざがあります。これは「妊娠、出産がきっかけで歯が悪くなってしまう」ということを意味するものです。妊娠するとつわりで歯磨きができなくなったり、食生活の規則性が失われ、間食や偏食が多くなりがちです。ホルモンの変調などで唾液の分泌量が減って、口腔内の自浄作用が低下し、また、唾液のPH値も低下するため、虫歯になりやすい酸性の環境になります。治療が胎児に影響しないか不安を感じて、歯科受診をためらう女性も多いようです。こうした要因で、妊娠中は口の中が不衛生になりやすく注意が必要です。
妊娠中の口腔ケアで注意すべきポイントを教えてください。
まずは食生活に気を使い、睡眠を十分に取るなど規則正しい生活を心掛けることです。口腔清掃はゆっくりでいいので、今までより時間をかけて行うといいでしょう。口の中に異常があれば、歯科治療に不安を抱かずにかかりつけの歯科医に、現在妊娠何週目かなどの状態を告げてよく相談することが大切です。虫歯や歯周病があるのに、出産後まで治療を待つ患者さんも多いのですが、放置するとますます悪化します。
治療の時期としては妊娠中期が最も適切ですが、初期や後期でも治療することは可能です。歯科用の局所麻酔や、エックス線防護用エプロンを装着してのレントゲン撮影は、胎児への影響はほとんどないと考えられています。抗菌剤などの薬は安全性の高いものを必要最小限で使います。痛みを抑える消炎鎮痛剤の服用は、妊娠中はできる限り控えるのが賢明ですが、痛みを我慢することがかえってストレスとなり、母体や胎児に悪影響を及ぼしてしまうことがあるので、比較的危険性の低い消炎鎮痛剤を慎重に処方するケースもあります。消炎鎮痛剤を使わなくていいように、早めに受診して悪化させないことが重要です。
産後、授乳中の歯科治療も心配し過ぎる必要はありません。ただし、薬剤服用の乳児への影響など考慮すべき点もありますので、必ず歯科医に授乳中であることを告げてください。
両親の口腔環境は、驚くほどその子どもに反映されます。これは遺伝というより、両親の生活習慣が大きく関係していると考えられています。生まれてくる赤ちゃんのためにも、妊娠中から口腔ケアをしっかり行いましょう。
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