2014年4月23日水曜日

甲状腺疾患


ゲスト/やまうち内科クリニック 山内 雅夫 院長

甲状腺の病気について教えてください。
 甲状腺は、首の前面、喉仏の下にあるチョウの羽を広げたような形の器官で、甲状腺ホルモンを分泌する役割を果たしています。甲状腺ホルモンは、人間の体の新陳代謝や成長をつかさどる大切なホルモンの一つ。甲状腺ホルモンが多くなったり、少なくなったりすることで、全身にさまざまな異常をもたらします。甲状腺疾患を患う患者さんは、女性に多く、日本全体では700万人ともいわれていますが、その内500万人は病気であることに気付いていないと推定されています。
 主な甲状腺の病気として、甲状腺ホルモンの過不足によるものと甲状腺腫瘍があります。
 甲状腺ホルモンの分泌異常は、大部分が甲状腺に対する自己抗体が関与しているもので、誰にでも起こり得る病気ですが、遺伝的な要因が大きいとされています。

甲状腺の病気の中で、代表的なものについて教えてください。
 最もよく知られている病気が「バセドー病」です。甲状腺ホルモンが過剰に産生されるため、動悸(どうき)、頻脈、多汗、手指のふるえ、易疲労感、体重減少、食欲亢進(こうしん)などの甲状腺機能亢進症状が現れ、甲状腺の腫脹(しゅちょう)、眼球突出なども見られます。
 しっかり食べているのに体重が減少する、健康診断でコレステロール値が低下し、アルカリフォスファターゼが上昇しているなどの異常所見が診断の糸口となることもあります。
 逆に甲状腺ホルモンが不足し、甲状腺機能低下症を呈するものの代表が「橋本病(慢性甲状腺炎)」です。寒がり、無気力、易疲労感、体重増加、甲状腺腫大、コレステロール値の増加などが現れ、進行すると記憶力低下、眼瞼浮腫なども起こります。中年以降の女性で物忘れなどが有る場合には注意する必要があります。
 甲状腺腫瘍は甲状腺超音波検査で比較的容易に発見することができるようになりました。1cm以上の腫瘍のうち、一割程度は悪性とされており、吸引細胞診などで確定診断をする必要があります。
 症状が多岐にわたり、更年期障害など、ほかの病気と間違われやすいのが甲状腺の病気です。頻度は比較的高いのですが、症状が軽いことも多いため、見逃されたり、放置されたりしているケースが多くみられます。血液検査、甲状腺超音波検査など診断の技術は進歩しており、各種の治療法も確立されていますので、症状が進んでしまう前に早めに治療を受けることが何よりも大切です。

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